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アリーナから紙のMTGを始めた。皆優しかった。ある一点を除いて。(大会編)

ここまでのあらすじ
今までMTGアリーナしかしてなかったけど八十岡選手のシャッフルがかっこよくて紙のデッキ買ってみたので対戦したくなりましたという前フリに4000文字を費やした

https://note.com/stormroastpork/n/n99bdf1500cc8

前編とあらすじで文字数云々言ってるけどこのnote後半単品で9000文字あるぜ。
ついてきな。テキストのバベルデッキによ。

紙の対戦相手の見つけ方を僕達はまだ知らない

対戦経験が一切ないのにいきなり大会に出る判断をした理由は2つある。
やたら理由が2つあるな。ダブルマスターズに収録されてしまう。

1つ目は対戦相手の見つけ方を知らないから。
カードショップにはプレイスペースがあり、そこでプレイしてる人が沢山いる。初心者講習を受けた晴れる屋TCでも国籍を問わず凄まじい人数が対戦をしていた。

……あれってどういう手順を踏んで対戦が始まるんですか?格ゲーだったら一人プレイしている所に対面から乱入すれば対戦開始だし、MTGアリーナだったらマッチング開始を押せば自動で対戦相手が見つかる。
プレイスペースだと実際どうなのだろう。どの状態が対戦待ち?いきなり対面に座って「対戦宜しくお願いします」って声かけるの?そもそもプレイスペースって見ず知らずの人と対戦する文化あるの?友達と遊ぶ為のスペースだったりする?何もわからない。怖い。助けて。

紙でのプレイ経験のない人間が対戦相手を見つけようとするのは童貞が渋谷でナンパするようなものだ。
それに対して、大会ならばエントリーしたら対戦相手は勝手に決まり、お互いにゲームを完遂する義務が生じる。未経験にとってはこれくらいレールの上を走らされた方が安心だ。

プロテクション(怒気)

もうひとつの理由は晴れる屋に初心者大会があったから。
普通の大会や野試合でプレイが覚束なくて「なんでそんなのも出来ないんだよ」という空気を出されたら
「ハイ……スミマセン……俺のような愚かな生き物がショップなどに足を運んでしまい……」と縮こまる他ないが、初心者大会でプレイの不手際を責められても
「は????これ初心者大会ぞ????初心者大会で相手が初心者な事に文句言うヤツおる????」
という完璧なカウンターを打ち込む事が出来るので無敵だ。対応ありますか?はい俺の勝ち。GG。

皆さんは初心者という肩書を盾にして増長しないようにしようね。

7/31 はじめての大会、はじめての対戦

参加したのは晴れる屋秋葉原店で開催される「ビギワン!」のスタンダードフォーマット。
多少MTGAをしている以上「初心者」の定義からはみ出さないか不安だったが、参加資格に「自身が初心者だと思う方」という一文もあるし、ネットで検索したら「ビギワンの常連参加者」みたいな人も普通にいるらしいので多分大丈夫だろう。実際「紙で一度もプレイした事ない」は事実だし。

7月31日。初心者講習会で貰った大会参加無料券とシングルカード割引券を手にエントリー。開始前にカードをシングル買いしてサイドボードを整える付け焼き刃をこしらえて大会に臨む。

当日のデッキはこちら。
https://www.gachalog.com/list/77234563

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(画像ちゃんと選んでないので土地とかが古いヤツになってる)
アリーナで使っていたデッキとは少々内容が違った。
ハイドロイド混成体の枚数が少なかったり、ショックインランドがなかったり、サイドに入れてるウギンがいなかったりする。なんでかわかるね?高いからだよ。

緊張と安堵の第一マッチ

参加人数は9名だったと思う。大会形式はスイス式のマッチ戦。
MTGアリーナではBO1しかしてなかったのでマッチ戦は正真正銘の初体験だ。

対戦組み合わせ表にバリバリ本名が並ぶMTGの文化に気圧されつつも、指定された席につく。
向かいに着席し、手慣れた様子で準備を進める対戦相手に、意を決して用意していた言葉を放った。

「スミマセン、俺紙でMTGやるの初めてなんで変な事してたらドンドン突っ込んで下さい」
死ぬ程緊張してたので実際には呪文みたいに早口だったかもしれない。
講師の店員の言葉という後押しもあったが、難色を示されてしまう恐怖も当然あった。

相手の回答は
「あ、OKです。じゃあゆっくりプレイしていきましょう」
……みたいな事だったと思う(記憶が滅茶苦茶曖昧)

この一言には本当に救われた。何かに怯えながらプレイする必要がなくなったと思うと、脳のリソースが一気に開放された気がした。
相手の言葉に偽りはなく、ゲーム開始前の時点から
「サイドボードはこうやって相手にもわかるように枚数を確認します」
「マリガンは先行から交互に進めていきます」
と丹念に進行をレクチャーしてくれた。マリガンの回数をダイスで数えてくれていたりとこちらのサポートまで手を回してくれた。

緊張は解れていなかった。だが恐怖心はなくなっていた。
「よろしくお願いします」
お互いに挨拶を交わして、人生初めての紙対戦が始まった。

すぐ終わった。
な~~~~~んも出来なかった。

格ゲーみたいに実力差のせいで手も足もでなかった、とかではない。
まず土地が全然引けずダブルマリガンスタート。幸先が悪すぎる。
というかダブマリした後も土地2枚と相当厳しかったのだが、トリプルマリガンなどした日にはもうゲームにならない。現実には投了ボタンという名の自爆スイッチはないんだよなぁ。

相手のデッキは赤青ドラゴン(多分)。クリーチャー以外の呪文を唱える毎に+1/+1カウンターが乗る飛行クリーチャー「スプライトのドラゴン/Sprite Dragon」がキーカード。いい感じで着地したこいつが一瞬で対処不能なサイズに巨大化して5点とか7点でパンチされて死んだ。完全なるマグロ・ザ・ギャザリング(MTG)。

タコ殴りにされた後のサイドボーディング。
前にも書いたようにマッチ戦自体が初めてだが、やらなくちゃいけない事は理解していた。
具体的な内容は忘れてしまったが、序盤のテンポを削がれる「ギルド門通りの公有地/Gateway Plaza」や中盤まで唱えている暇がないと判断した「迂回路/Circuitous Route」「アーチ道の天使/Archway Angel」の枚数を減らし、代わりに「溶岩コイル/Lava Coil」と「山」を投入。軽量除去とアンタップイン土地を足して序盤の対応力を上げる。そこさえ凌げれば大量のマナとドローで勝ち目はある。

「負けた方が先攻・後攻決めるんですよ」と教えてくれたり、「サイドボード後も同じように枚数を伝えます」等、2ゲーム目開始前も手厚くサポートしてもらえた。

第2ゲーム開始。今度こそは動く。志が低すぎる。

結論から言うと勝った。勝ったんだけどなんで勝ったかよく覚えていない。多分投入した除去が上手く仕事して序盤を凌いで勝った。「集団強制/Mass Manipulation」でクリーチャーをパクった記憶もある。

一方で自分がしたミスはしっかり覚えてる。戦闘解決中に効果の誘発でダメージを貰ったのだが、その時点で戦闘フェイズが終わったと勘違いし、サイレントメイン2移行からの「島」セットをやらかした。
相手視点ではインスタントタイミングで突然土地を置いてマナを出そうとしたように見える。慌てた様子で「今置くのはちょっと……」と窘められた。100俺が悪い。

ともあれ勝ちはしたのでマッチの勝敗は第3戦にもつれ込む。負けた時のサイドボーディングの理屈はわかるが、勝った時はどうしたらいいのだろう。なんとなく1~2枚入れ替えたような気がする。

3戦目は長期戦にもつれ込んだ。こうなったターボゲートは強い。ほぼ確定全体除去の「燃え立つ門/Gates Ablaze」。わずか3マナで10/10を超える警戒トランプルと化す上に「燃え立つ門」から生き残る「門破りの雄羊/Gatebreaker Ram」、パワー2以下のチャンプブロックを防ぎ墓地からの復活も出来る0マナ8/8の「門の巨像/Gate Colossus」。「ハイドロイド混成体」や「発展+発破/Expansion+Explosion」にマナを注ぎ込めば即座に大量ドローし、「ギルド会談/Guild Summit」で「門」自体がドローソースと化す事でマナフラッドという概念すら消失する。エンジンが掛かったターボゲートは「ターボ」の名に恥じない出力がある。

一方で対戦相手も譲らない。占術とキャントリップ呪文を連打し手札の質を上げ、除去やバウンスで致命的な一撃を躱し続ける。こちらの攻勢が緩めば数々のフライヤーで圧殺に掛かる。いつしか相手の墓地には凄まじい枚数のソーサリー・インスタントが並んだ。こちらも負けじと追放で除去された「門の巨像」を墓地からデッキトップに戻そうとするプレミで相手を翻弄する。お前ふざけるなよ。

ここからがこの試合のターニングポイントだ。
相手は墓地に何が落ちているかわかりやすいようにカードを並べていた。
これはつまり「墓地の枚数を参照するカードを使う」という意味だろう。

実際墓地のソーサリーやインスタントの枚数を参照したダメージを与える火力を打たれた(気がする)し、青赤にはそれらの枚数でパワーが上がるフライヤーがいた気がする。今の墓地枚数ならワンパンで死ねる。
俺は「願いのフェイ/Fae of Wishes」でサイドボードから「夢を引き裂く者、アショク/Ashiok, Dream Render」を手札にイン。そして即座にプレイ。
マイナス能力で相手の墓地を全て追放。これが通れば……

「それ打ち消しで」
打ち消された。そう上手くはいかない。
しゃーない。ここは殴られる前に殴り倒すしか……

俺の土地は全色出せる公有地が2枚アンタップ状態。
そして手札には「発展/発破」が。

「これ打ち消し呪文をコピーしてそれを打ち消せばアショク通ってたじゃ~~~~~~~ん!!!!」
と気づいたのは一連の処理が終わった後だった。
緊張すると思考が狭まる……というか、紙のMTGは「これ唱えられるけどどうする?」と聞いてくれるアリーナとは違うと思い知った。
それ以外にも「これ相手ターンの終わりに唱えよー」とキープしてた「成長のらせん/Growth Spiral」と2マナの存在を忘れてアンタップフェイズに入ってから思い出す等、プレイの甘さがいつも以上に目立った。

紙のMTGが云々じゃなくて俺がおっちょこちょいなだけって気もする。

一歩止まって今出来る事は何かを考える。
全てのゲームに通ずる教訓が、この試合での大きな学びとなった。

試合は勝った。ターニングしてねぇじゃねえかよ
相手はドローしたり占術する度唸りながら考え込んでいた。
対応は出来るが攻勢に転じる程の余裕はなく、徐々に押し切られる形となった。3戦合わせて規定の50分を使い切る大激戦だった。

用紙への勝敗の記入や提出の仕方等、最後の最後までアシストして貰った。名前こそ覚えていないが(本名なので凝視するのも悪いし)あの人には感謝してもしきれない。

想定外と教示の第二マッチ

2マッチ目。多分システム的に1勝した人同士の対戦だろう。
お互いが席についた時、先程同様に例の言葉を告げた。
「スミマセン、俺紙でMTGするの今日が初めてで……」
「僕もMTG自体殆どやった事なくて……」

完全に想定外の事態だった。いや想定はしておくべきだったが。まさか俺より初心者に当たるとは。今思えば参加人数が奇数なので、1マッチ目が不戦勝の人との対戦だったのかもしれない。
今日俺は対戦相手にサポートされながら遊ぶ位の気持ちだったが、今この試合は俺が相手をサポートする側に回らなければならない。

「サイドボードはこうやって相手にわかるように枚数を確認するそうです」
「マリガンは先行から交互に進めて、マリガンした回数はサイコロで記録するといいみたいです」

ついさっき教わったばかりの事を相手にレクチャーしていく。
「いきなり先生になるとは気分は上級者様ですなぁ」
シニカルな態度を取る内なる人格は握り潰した。
俺がさっきやられて嬉しかった事を反復する。
相手はサイドボード無しとの事。俺もMTGAで「願いのフェイ」を知るまではサイドなんて一枚も入れてなかった事を思い出した。
ライフカウンターの類いも持ってないとの事で20面ダイスを貸してあげた。ダイスでライフを管理するのは晴れる屋の初心者講習会で教わった事だった。

相手の1ターン目。
「山」セットからの「焦がし吐き/Scorch Spitter」が着地。
赤単アグロだ。

きっち~~~~~~~~~。

なんか色々粘ろうとしたけど「義賊/Robber of the Rich」が出てきたり赤からのダメージに2を足すヤツが出てきてエンジンが掛かる前に顔面をボコボコ殴られて死んだ。
これMTGAで見た。

一瞬で終わった1戦目の後のサイドボーディング。
やる事は1マッチ目とほぼ同じ。序盤の攻撃をやり過ごす事だけを考える。

2戦目。確か先手をとってスタート。
「グルールのギルド門をセットします。『門』ってカテゴリの土地でタップインです」
「青と2マナ出してギルド会談を出します。これは『門』が出る度に1枚ドローできます。あと出た時に『門』を1枚タップする毎に1枚ドロー出来ます」
「調和の公有地を出します。これは場に出た時『門』が2枚以上あれば3点回復して、場の『門』が出せる色のマナを全て出せる土地です」

1戦目からそうしていたが、今自分が出したカードがどんな効果か事細かに説明する事にしていた。
ターボゲートはとっくの昔にメタからいなくなったデッキだ。恐らく対戦相手は殆ど見た事のないカードだらけだろう。
「なんか知らんカードが訳のわからない事をしている」と思わせない為に、少なくとも「何がどうやってアドを生んでいるのか」を明確にしておいた。

プレイしたカードを説明出来ているという事は序盤で殴り倒されたりはしなかったという事だ。
除去や「願いのフェイ」を直接場に出してブロッカーとする事で、相手の攻撃の手を遅延させる。
デッキの殆どが『門』を参照する事から、「義賊」でアドバンテージを得難い事も有利に働いた。「ギルド会談」がめくれた所で、相手にとっては「蒼ざめた月/Pale Moon」より何もしないカードだ。実際、幾度か効果が誘発したが、相手がプレイ出来たのは「アゾリウスのギルド門(青白タップイン土地)」だけだった。

3歩進みたがる相手を2歩で踏み留まらせ、隙あらば1歩後ずさる。
ライフは詰められるが、詰めた所で0にされなければ負けではない。
やがてマナフラッドを起こして息切れした所をブン殴って二戦目は勝利。

サイドチェンジ無しで迎えた3戦目。赤単アグロに先手を譲る事になる。

ここで「ハイドロイド混成体」と立て続けに引いた「調和の公有地/Plaza of Harmony」の強さが際立つ。
混成体はXに2マナしか支払えなくとも4マナで2/2のフライヤーを出しつつ1点ゲインは十分な遅延として役立ち、なおかつ1枚ドローで次の手を引き込める。今までは大量のマナを注ぎ込んで大量ドローを伴うファッティとして認識していたが、こうした小回りが効くのもこいつの強さだと思い知る。

そして調和の公有地。「門」でこそないがこのデッキの貴重なアンタップイン土地であり、中盤以降は実質全色土地となる屋台骨であるが、出した時の3点ゲインが非常に効いてくる。

デカブツで殴って勝つこちらにとって相手の3点回復は誤差の範疇でしかないが、赤単側からすればそうもいかない。
盤面のクロックでは序盤の1ターン分に相当するし、ショック一枚で覆せない。こんなのが何枚も出てきてはたまったものではない。
こちらはただ「土地を置く」という行為で、じわりじわりとキルターンを引き伸ばしていく。

そうしてズルズルと長期戦に持ち込み、「アーチ道の天使」が着地。16点程ライフゲインした所で「うわー……」と相手が項垂れた。
もうアグロデッキにどうこう出来る試合ではなくなり、3戦目も勝利。2マッチ目も2-1で制した。ついさっき教わった試合結果の記入もレクチャーして最終戦に備える。

情報アドと気付きの第三マッチ

最後の相手は用意しているグッズからしてかなりプレイ慣れしている事が伺えた。

「紙では初めてプレイするので(以下略」
と告げた所、

「え?それで今日2-0ですか?天才が相手か……
という完全に予想外の返答。
(念の為付け足しておくと、皮肉っぽいとか馬鹿にしているとかではなく、あくまで友達同士で言い合うような軽口のノリだった)

そういえばこの試合はお互い2-0で勝ち上がっている組み合わせであって、相手も当然こちらが2-0な事も把握している。
「紙ではやった事なくて~」って言ってるヤツが2マッチ取ってたらちぐはぐではある。

それに対して俺は「はは……」となんとも言えない愛想笑いみたいな返事をしてしまった記憶がある。お互いマスクをしているのでその乾きっぷりたるや不毛の大地。

本当に念の為言っておくと全く不愉快ではなかった。
ただTCGは殆どデジタルでしか遊んだ事がなく、DCGの対戦相手とのコミュニケーションと言えば「エモートで煽ってくるクソ野郎を粛々とミュートする」位だ。「カードゲームの対戦相手との雑談」という経験のないコミュ障にはそれを返す手札がなかっただけだ。

ここで勝てば全勝というプレッシャーでシャッフルすら覚束ない。デッキも俺に応えるようにテーブルにへばりついて取れなくなるわ、カットして積み上げたらスン……と滑り崩れかけるわの大暴れ。

「なんか……すごいスリーブ使ってますね」
俺のデッキをカットした後の言葉。声色だけで苦笑いとわかる。
使ってみます?この店で売ってたヤツですよ。

先手、土地をセットすると
「ああ~門デッキの人かぁ。サイドどうしようかなぁ……」
というつぶやき。やはり手慣れた空気感は気の所為ではなく、実際結構なプレイ歴のようだ。
……実際ターボゲート相手へのサイドボーディングって何するといいんですかね?

相手は1マッチ目と同じく赤青ドラゴン(もしかしたらイゼット果敢みたいなカテゴリかもしれない。未だに2色組み合わせのギルド名が覚えられない。門デッキ使ってるのに)

ただ、それほど展開が速くなかった為に、盤面が完成する前に3マナ域に到達。出てしまえば凄まじい圧力を誇る「門破りの雄羊」が着地。

「うわー。こいつ『燃え立つ門』で生き残るのおかしいくないですか?」
デッキタイプへの知識がある故に悶絶する対戦相手。
悩ましい場面では唸りながら考え込み、こちらがキツイカードに対しても一々リアクションが返ってくる。

(情報アドがすごい……)
(あと……こういうの楽しいかもしれない)

MTGAにはなかった「生きた人間との対戦」の実感。
小学生の頃、環境もシナジーもへったくれもない、紙束みたいなデッキでワーワー騒ぎながらカードゲームをしていたあの日の記憶が脳裏に掠める。
こうしてデッキを持ち寄って、カードに感情を乗せてぶつけ合う。漫画みたいなド派手なリアクションをする訳じゃないけど、相手の息遣いを読むようなコミュニケーションのラリーは、紙でしか味わえない楽しさかもしれない。

一戦目は「願いのフェイ」から「燃え立つ門」を持ち出して一掃、ガラ空きのボディをぶん殴って勝利。

サイドチェンジ。重ためのカードを減らし軽量除去と山を投入。

「なぁ門のオッサン。毎回おんなじサイドチェンジするなら、最初っからそうしてた方が強えんじゃねぇのか……?

脳内ビィ君が正論の稲妻をライフに撃ち込んで来る。うるせぇ。

二戦目はそこそこ長引いた。結構疲れてたので内容をあまり覚えていない。

はっきりと覚えているのはこちらのアタックに対し、相手がインスタントで対応した場面。
「(このクリーチャーをデッキの)トップ(一番上)かボトム(一番下)へ」
と指示された俺は、「トップ」と「タップ」を聞き間違え
「え……?じゃあ……タップで……」
とクリーチャーを捻った。そんな選択肢の除去があるか。

「まぁ……アレ持ってたら負けだな!」
と、相手はリソースの全てをつぎ込んで盤面を展開。
「アレ」が何かは俺にもわかっていた。
アップキープ、アンタップ、ドロー。
デッキトップは「アレ」。即座に唱える。
「赤と2マナで『燃え立つ門』を唱えます」

ここで相手の投了。
こうして初参加の大会は3-0となった。

賞品のプロモパックから「虚空の力線/Leyline of the Void」が出た。あまり詳しくはないが動画勢だった事もあり力線サイクルは知っている。
「いいカード引いたじゃないですか」
試合が終わった後も対戦相手は積極的にコミュニケーションを取ってくれた。
大会自体はまだ終わっていないので、ちょっとした雑談を交わす。

そのうち、次回のローテーションの話になった。
相手の赤青ドラゴンはあまり影響を受けない為、適時カードを差し替えて使い続けるらしい。


一方。
「このデッキ、9月でまるっと使えなくなっちゃうんですよね。どうしたらいいのかなって」

ギルド門はラヴニカのアーキタイプ。「門」を参照するカードも、「門」自体もごっそりとスタンダードから去る。
代用カードどころの話ではなく、「ターボゲート」というデッキ自体が使えなくなってしまう。

「んー……確かに代わりのデッキとかはないですけど……」
しばし考え込んだ後。
「次のローテまでは使えるって事じゃないですか。だったらそれまでターボゲートで遊べばいいじゃないですか。来週も来ましょうよ。そしたら多分俺も居ますから」

なるほど、建設的な考えだ、と思う。
確かにこのデッキは手に入れてから二月弱しか使えないかもしれない。
でも、スタン落ちするその日までは何度も大会が開かれて、その度対戦する事が出来る。だったら、このデッキをとことん使い潰してやろうじゃないか。

そうして散々楽しんだ後、ローテーションする日が来た時は。
……今度は赤青ドラゴンを組んでみようかな、と思う。

大会に出られなくなった

だが、結論から言って翌週は大会に出られなかった。
何故なら。

コメント 2020-08-25 221258

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あああああああああああ!!!!
成長のらせんが禁止されてる!!!!!!!

このデッキにとっての「成長のらせん」は、非常に動き出しの遅い序盤を支えるランドパンプであり、「門」は何枚あっても困らないので後半でも腐る事がなく、「ギルド会談」が出ていれば2マナで2~3枚はドロー出来る非常に重要な潤滑剤。勿論4枚投入。価格は安いがこのデッキにとっては値段以上の価値があるカードなのに。

このカードの代用などそうそう見つかる事もなく、MTGAで試行錯誤しているうちに何度もビギワンに出る機会を逃した。
許さねぇ……許さねぇぞウィザーズ……

そうして家にある「選択」とかを適当に突っ込み、8/21に久々に参加したビギワンではすっっっっっっこすこに負けた。0-3でした。

ただ、大会自体は楽しかった。一回目と疲労感も違う。ボコボコにされてるだけだから疲れる訳もないが。
対戦相手とも色んな話が出来た。十数年ぶりに復帰した人だったり、チャレンジャーデッキ殆どそのままで参加した人もいたり。
学生時代の憧れのカードの話や、家族でMTGを遊んでいる話。MTGを通してその人の生き様の片鱗を知る。

カードゲームは楽しい。ゲームとしての面白さだけではなく、テーブルを挟んで向かい合ったプレイヤーとの生きたコミュニケーションがそこにある。
だから、俺はデッキが弱くなろうがボコボコに負けようが、楽しく紙のMTGを楽しめている。

でも、やっぱり禁止カードはあんまり出さないでください。
紙の禁止改定ってワイルドカードの補填とかないじゃないですか。
そこだけは何卒よろしくお願い致します。

追記
先程Twitterで「土地加速をランパンというのは『不屈の自然/Rampant Growth』の俗称からですよ」と教えられた。
俺が成長のらせんの事を「ランドパンプ」と呼んでいたのは
(動画で言ってるランパンってなんだ……?土地の補強だし……ランドパンプか?ハッ?!「ランプデッキ」って「ラン」ドパン「プ」から来てたのか?!全てが……繋がった!!!!
と勘違いしていたから。
恥ずかし~~~~~~!!!!!
ランパンを間違えて覚えていた事だけではなく「『ランドパンプ……?ああ、こいつランパンを間違えて覚えてたんだな』と見透かされた」という二重の恥ずかしさで悶絶している。なんでわかったんですか?ギタ調?
ただ今恥をかかず一生間違え続けてた方が八兆倍恥ずかしいので助かりました。ありがとうございます。

サポートして頂いた分は俺が肥える為の糧とさせていただきます。 引退馬関連の記事にサポート頂いた分は引退馬支援に何らかの形で還元いたします。