見出し画像

ジャンルの垣根

私は肩書に「写真家・ストームチェイサー」と記しています。その意味をたまに聞かれますが、根底にあるのは写真家、写真が生活の大部分を占めていて、作品を販売したり依頼撮影をこなして収入を得る人のことです。ストームチェイサーとしての活動はあくまで季節限定で、暖候期に限られます。その中でも最盛期は7月から9月、1年の1/4でしかないんです。残りの3/4は何をしているかと言われたら、依頼された仕事を中心に、仕事がない時はアルバイトもします。そんな感じで生活は常にギリギリなのです。

ここ5年くらいはストームチェイサーのイメージが独り歩きしてしまい、荒天専門と紹介されることもあり、少々困惑しています。元々は自然や地方の景観などを撮影することが多く、その中でも民間伝承、風俗や習慣を撮影するのが大好きなのです。自ら荒天専門と名乗ったことはなく、荒天も自然写真の一部として捉えています。空も雲も自然の一部ですから、大きな枠の中では自然に属していると思います。そう考えたら荒天も、草花も、景観も、大枠の中では自然写真に属しているんですよね。

画像1

実際の収支で見たら、荒天の写真だけで食べていけるわけないのですが、そこで足かせになるのが「荒天専門」の4文字。SNSなどに荒天や空以外の写真を投稿すると「珍しいですね」と言われることもあります。荒天以外は撮らないと思われているんですね。荒天のシーズン中でも、依頼があれば記念写真も建築写真もブツ撮りだって引き受けます。元々は街の写真屋ですから、写真に関するよろず屋的な立ち位置だったんです。荒天のイメージがその部分を覆い隠してしまったことが、今の自分には複雑な思いなんです。

画像2

天気にシーズンオフはありませんが、私がストームチェイサーとしての活動に明確なオンオフを設定しているのは、写真で生計を立てていくためなんです。シーズン中に集中的に活動をして、シーズンオフには荒天から離れる、そうしないと仕事として成り立ちません。荒天の写真が成り立つには人々の関心が必要で、その時期は雷雨が頻発する盛夏なんです。秋になると雷雨は減り、人々の関心も薄れていきます。関心のない時期にいくら撮影しても仕事に結びつくことはありませんので、時期が来たら切り替えが必要になるのです。秋も深まる時期に夏物セールしても売れないでしょう。

画像3

写真家が自分の撮りたい写真だけで食っていけることはありません。これから目指す方々の夢を壊すようですが、それが現実です。得意なジャンルを深く追求するのは良いことですが、特定の被写体だけに執着すると応用が効かなくなり、何らかの撮影依頼を受けた時に困ることになります。趣味であれば好きなものだけでいいんですが、仕事ですから特定のジャンルだけでは成り立ちません。得意な被写体1本で勝負したいと思ったら、学術研究レベルまで昇華しないと無理でしょうね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?