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突風は竜巻だけじゃない

5月下旬から6月中旬にかけて、上空寒気の影響で関東地方の各地で荒れ模様でした。季節の変わり目には天気が荒れますが、今年は特に激しかったように感じます。5月27日には群馬県南部の太田市、邑楽郡邑楽町、邑楽郡千代田町、邑楽郡明和町、館林市で現象区別不明の突風が、同27日に茨城県筑西市でダウンバーストまたはガストフロントによる突風が発生しています。大粒の雹による被害が多発した6月2日には、埼玉県北部の深谷市、大里郡寄居町でダウンバーストまたはガストフロントによる突風が発生しています。いずれもJEF0で風速は30m/s~35m/s、突風の中では軽微なものですが、窓ガラスが割れたり、住宅が一部損壊するような風が吹きますので、侮ることはできません。

5月27日は地元の筑西市で20時過ぎから撮影をしていました。21時40分頃には稲光に浮かび上がるアーチ雲を確認しています。その後、21時50分頃に撮影を切り上げ、車で10分ほどの家に戻りました。駐車場に車を入れた途端に雨風が強まり、白い水煙が上がりました。程なくして雹が降り出し、風で車が揺れるのを感じました。典型的なダウンバーストです。車の中に10数分缶詰になり、風が弱まるのを待って家に入りアメダスを確認します。最寄りのアメダスで22時の最大瞬間風速が33.1m/sでした。翌朝家の周りを確認すると、大きな被害はないものの、畑に設置してあったネットなどが散乱していました。

5月27日、21時40分頃のアーチ雲

現象区別がダウンバーストまたはガストフロントと、特定されていないことについて、2つの現象は連動しており、ダウンバーストの冷気がガストフロントの元にもなっているため、現場で見ていても判断が難しいのが現実です。ダウンバーストは積乱雲直下で、ガストフロントは積乱雲の前面で発生します。ダウンバーストは多くの場合雨や雹・霰を伴いますが、ガストフロントは雨を伴わないことが多いです。ただし例外もあり、乾燥する時期には雨や雹・霰を伴わないドライダウンバーストもありますし、ガストフロント後方の風が強い場合には風に乗って雨粒が流れてくることもあります。

私の判断基準は、積乱雲前面、アーチ雲通過時に発生する突風をガストフロント、アーチ雲通過後、積乱雲直下で発生する突風をダウンバーストと判断しています。雷雨の発生が多い北関東で多発しており、春から初秋頃にかけて頻発するようになります。突風分布図、赤い点は竜巻、青い点はダウンバーストまたはガストフロントです(出典…気象庁HP)。

沿岸部では竜巻、内陸部ではダウンバースト/ガストフロントが多い

ダウンバースト(下降噴流)は積乱雲から吹き出す強い下降気流により発生します。勢いよく地面に衝突した下降気流は四方に広がり突風になります。国内で発生するダウンバーストは、風速が30m/s~40m/sのものが多く、まれに50m/sを超えるようなものも発生しています。竜巻よりも被害幅が広く、発生時に雹や霰を伴うことがあります。

ダウンバーストの発生

ガストフロント(突風前線)は積乱雲の吹き出す冷気と周囲の暖かい空気の境目に出来る前線です。アーチ雲と呼ばれる特徴的な雲が見られ、通過時には15m/s~30m/sの突風を伴います。多くの場合はJEF0かそれ以下であり、大きな被害を出すことはまれです。積乱雲接近に伴い黒い雲が垂れ込め、冷たい風が吹いてくるのがガストフロントです。

ガストフロントの発生

ダウンバーストの冷気がガストフロント発生の原因にもなっているため、アーチ雲が見えたら後方ではダウンバーストが発生している可能性が高いと言えます。2つの現象は連動しています。

天気予報などで注意喚起のために言われる「雷鳴が聞こえる」「黒い雲が迫ってくる」「冷たい風が吹いてくる」ですが、間違いではないものの、この時点でガストフロントが迫っていると考えたほうが良いと思います。つまり、この3つが揃った時点ですでに遅いということです。アウトドアで活動する時など、遠くに積乱雲が見えた時点で雨雲レーダーをチェックするといいでしょう。積乱雲本体が遠く離れていても、風に乗ってかなとこ雲の一部が頭上にまで達することがあります。そんな時にかなとこ雲の一部に乳房雲が見えたら要注意です。

かなとこ雲に出来た乳房雲

積乱雲が冷気を吹き出すのは発達のピークを超えて衰退期に入る合図でもあります。最後の力を振り絞り、イタチの最後っ屁的に冷気を吹き出します。私が撮影時に気をつけていることは、風向きの急変と気温の急低下です。積乱雲の発達時には雲に向かって風が吹き込むため背後から風が吹いてきます。これが発達のピークを超えると積乱雲が冷気を吹き出すため、前方から風が吹いてきます。このタイミングで気温が急に下がり、一気に10℃近く下がることもあります。衰退期に入り、一気に力を放出する時が最も危ないので、風向きが変わったら車の中から撮影するか、移動して距離を取るように心がけています。

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