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積乱雲のおなら

積乱雲の下では度々激しい現象が起こりますが、夏の北関東でよく起こるのが、落雷、ダウンバースト、ガストフロントです。その中でも被害が広範囲に及ぶダウンバーストは厄介です。

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私がダウンバーストという言葉を初めて聞いたのは、忘れもしない1996年7月15日に地元の茨城県下館市(現筑西市)から栃木県小山市にかけて発生した国内最大級のダウンバーストでした。当時のスケールでF2、60m/sを超えるような突風です。被害幅は1,500mから3,000m、被害域は2.5kmから4km、住宅被害は425件、死傷者19名、停電8,000件、農業被害は34億円以上と、未曾有の大災害になってしまいました。私は車で走行中に遭遇して、一瞬にして目の前が真っ白になったことを覚えています。多くの住宅でテレビアンテナを吹き飛ばされ、一時的に市内の電気店からアンテナが消えました。

発生したのは梅雨末期、梅雨前線と寒気の移流が原因ででした。下館市からつくば市にかけてはゴルフボール大の雹が降り、農作物に大きなダメージを与えました。発生時刻は15時前でしたが、夜のように真っ暗な空に恐怖を覚えた人も多かったと思います。

ダウンバーストは積乱雲から吹き出す強い下降気流です。積乱雲の発達がピークを超えると、上昇気流が弱まり下降気流が強まります。いわばイタチの最後っ屁、積乱雲の最後の悪足掻きです。例えれば巨大な水風船が弾けた常態です。雨や雹とともに勢いよく地面に衝突した下降気流は四方に広がり、水平方向に広がる突風となります。広がる範囲が4km未満をマイクロバースト、4km以上をマクロバーストと呼びます。積乱雲が近付いてくる時、雨柱がハッキリ見える時は要注意です。

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ダウンバーストの冷気が周囲の暖気とぶつかると、小規模な前線、ガストフロントが発生します。ガストフロントの寿命は短いのですが、通過時に突風を伴うこともあるため突風前線とも呼ばれ、前線が可視化するとアーチ雲と呼ばれる特徴的な雲が出現します。こちらはダウンバーストほど強いものではありませんが、時に30m/sを超える突風になることもあります。

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積乱雲の接近に先駆けて、雨が降る前に低く黒い雲が垂れ込めて、冷たい風がビュービュー吹いてくるのがガストフロント、積乱雲本体の下で、大粒の雨や雹とともに発生するのがダウンバーストです。これらは夏季に発生するとは限らず、季節を問わずに発生します。

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発生の前兆は、黒い雲が近付いてくる、雷鳴が聞こえる、冷たい風が吹いてくる、よく言われている3つのことが揃った時に発生のリスクが高くなります。他にも、大粒の雨や雹、風向きの急変、気温の急低下、乳房雲の出現なども判断材料になります。

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