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【夢日記】蜘蛛の糸

どこかの軒先にいる。「ベランダ」と云うには手すりのようなものはない。しばらく掃除をしていないと見えて、足元ではたくさんの枯れ葉がかさかさ鳴っており、空き缶やらよくわからないごみやらが溜まっていて、薄汚い。

ぼくは鋏を手になにかを切っている。

白くて分厚いガーゼを切っている。子どもたちがまだ赤ん坊だったころに使っていたガーゼにとてもよく似ている。ちょき、ちょき…。古めかしく、重々しい裁ち鋏。切れ味はあまりよくない。

切っているうちにガーゼの糸がはらはらとほどけてくる。どうしたのだろう。気持ち湿っぽい糸が手にべたべたとまとわりついてくるようになってきた。ああ、とぼくは急に了解した。ああ、そうだ、これは蜘蛛の糸だったんだ。無数の蜘蛛が張り巡らした糸を幾重にもかさねてできた一枚の布をぼくは切っていたのだった。

そう思うと、真っ白い布のあちこちに大小の蜘蛛がたくさん見えるような気がした。そして蜘蛛たちは一散に逃げて行った…と思ったら、ソファで目を覚ました。深夜まで作業をしていたが、どうやら疲れてきてここで仮眠したらしい。冷え切ったからだを起こし、珈琲を淹れて、またぼくは画面に向かっている。

夜な夜な文字の海に漕ぎ出すための船賃に活用させていただきます。そしてきっと船旅で得たものを、またここにご披露いたしましょう。