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【夢日記】車を失くす

ぼくは用事を終えて、駐車場に戻ってきた。

ポケットのなかに入れてある車の鍵を探しながら、車を停めておいた場所に近づいていく…が、すぐに異変に気づいた。

車が、無い。

まだローンの終わっていない、中古の、9万キロ近く走っている、オンボロの軽自動車が、見つからない。いくら探してもシルバーのあの軽が見つからないのである。ぼくの車は忽然と消えてしまっていた。

嗚呼、しまった、失くしちゃった、とぼくは思った。
いったい何処に行ってしまったのかしらん。
これはどうにもまずいことになった。
仕事に行けなくなってしまうし、このままだと具合が悪い。

仕方なく、辺りを探してみることにした。まずは手始めに、駐車場のごみ箱を覗いてみる。無い。燃えるごみの投入口を覗き見て、空きペットボトルを入れるごみ箱の丸い穴から覗いてみても駄目だった。駐車場の脇にある側溝にも落ちていない。自動販売機のお釣りの所にも入っていなかった。

ぎらぎらと照りつける日差しに、汗が流れて、目に入ってくる。「初夏の陽気」どころではない暑さに閉口しながらも、ぼくは黙々と捜索をつづけた。車を停めておいたところの両隣の区画にある車のなかを覗いてみたけれども、其処にも無い。駐車場に、ぼくが普段乗っているのと同じ車が通りかかったがナンバーがちがう。手の甲で額の汗を拭いながら、ぼくは嘆息して、羽織っていたロングコートを脱いだ。

こうなったら仕方がない。

さしあたり徒歩で帰って、家族の者に「車を失くしたから新しいのを買おう」と云いに行こうと思った。幸い、家までそんなに遠くはない。とぼとぼと歩くうちに右上の歯のあいだになにか引っかかっているのが気になりだした。こういうのはいったん気になりだすと、もうそればかりが気になって仕方がない。甚だ行儀の悪いことではあるのだけれども、チョットまわりにひとがいないのを確かめてから、指でそれを取ろうとした。そうしてしばらくいじくっているうちに、それは取れた。

ペッと吐き出してみると、果たしてそれはぼくの車だった。

どうしてこんなところに…とは思ったものの、早いところ仕事に行かなければならない。早速乗り込んでエンジンをかける。運転席の椅子の位置が大きく後ろにずれており、バックミラーの位置もいつもと異なるのが気にかかった。が、そんなことを気にしていられる時間でもない。

ギ、ギ、ギ、ギ、ギ…と面倒くさいような、痰の絡んだ老人のような音を立ててエンジンが……と思ったところで、目が覚めた。

どうにも最近は疲労が蓄積しているものらしく、車のなかに目を覚ますことが多くなってきた。ここいらで骨休めしたいところだが、世にいうゴールデンウィークとやらもイベントごとが重なってろくろく休めたものではない。困ったことである。

夜な夜な文字の海に漕ぎ出すための船賃に活用させていただきます。そしてきっと船旅で得たものを、またここにご披露いたしましょう。