そのむかし狂おしいほど大好きだった、或る女を夢に見た。ぼくが四十男に近づくのに併せて、彼女もまたその顔に年輪を刻んでいた。うつくしい彼女は、むかしより少し低い声で、あんたなんか大嫌いだったと云った。ぼくは微笑みながら、あんたが大好きだったと云った。抱擁したところで目が醒めた。

夜な夜な文字の海に漕ぎ出すための船賃に活用させていただきます。そしてきっと船旅で得たものを、またここにご披露いたしましょう。