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【雑記】Caramel Column

Caramel Column の新作ゲームアプリ『AZNANA』を一巡しました。現在、本業の方がわりと忙しく追い詰められつつあったのですが、『AZNANA』の世界を旅するのは一日に何度かほっと息をつける時間でした。

『AZNANA』は、生首の少女アズナナと一緒にお金を稼ぎ、町を脱出することを目指す、放置型アドベンチャーゲームです。異形頭の店員が暮らす不思議な町で商品の売り買いを繰り返し、お金を稼いでいきましょう。[公式サイトの紹介文より引用]

「ノイド」と称する「ニンゲン」を模したロボットの少年と、同じくノイドであって何らかの理由で首から下のパーツを失ってしまった生首の少女アズナナが自転車で廃品回収をしたり、「オブジェクトヘッド(異形頭)」の店員たちから購入した商品を転売したりしつつお金を稼いで、周囲を高い防壁に囲まれた「町」から出ていくことを目指します。二名分の「通行証」はゲーム開始当初には相当高額に思われる百万デルという設定ですが、転売の利益が大きいのと、廃品の缶を大量に落としていくドローン(?)によく遭遇することから、割とすぐに貯まります。

少年とアズナナは店員たちとの交流を通じて、段々と成長していきます。彼らが遂に町を出ることは作中で「卵」から孵化することにもたとえられています。いわく、世界を知るためには、一度いま自分のいる世界を破壊しなければならない、というのです。キャラクタの見た目はどれもかわいらしいのですが、かわいらしいばかりでなく、ほろにがいストーリーが Caramel Column 作品らしさを感じさせる秀作です。

ダウンロードして数日でエンディングを三通り見て、いったんはこれでお仕舞のようですが、追加コンテンツも準備中とのことですから、楽しみに待ちたいと思います。

同社にはほかにも『ムシカゴ』や『ALTER EGO』というアプリがあり、どちらも実際に遊びました。『ムシカゴ』の近未来的でダークな世界観もおもしろいのですが、読書好きとしては矢張り『ALTER EGO』を推したいところです。本ばかりの世界に閉じ込められている少女エスに導かれ、実在の書物のことばが漂う暗い回廊を進みながら自身を探求する「旅人」の物語です。しかし、旅人の自分探しの旅かと思いきや…というストーリーにもずいぶんと引き込まれた記憶があります。基本的には回廊に漂うことばをタップしていく作業が中心なのでゲームそのものはいささか単調ですが、話のつづきが気になると云う気分にさせてくれるゲームでした。

昨年(ちょうどいまごろです)、流行り病に斃れて入院を余儀なくされた直前くらいの時期に、遅まきながら存在を知ったこのアプリをダウンロードしました。このアプリは私に二つの大きな影響を残していきました。

一つは、私の読書遍歴に夢野久作とその周辺の書物が加わったことです。このアプリで、旅人が最後に読むのが夢野久作『ドグラ・マグラ』なのですが、ゲームを終えたあと、私は実際にあちらこちらで『ドグラ・マグラ』(角川文庫)を探しました。なかなか同書は見つからず、入院中は短編を集めた『死後の恋』(新潮文庫)を高熱にうなされながらも代わりに読んでいました。

退院後、『ドグラ・マグラ』を実際に入手して読み、導かれるようにして、その他の夢野久作による作品、次いで江戸川乱歩、さらには内田百閒泉鏡花などを読み続けています。このnoteでもときどき「買ってきた本」として紹介しているアンソロジスト東雅夫によるアンソロジーが導きの糸となっています。自分でも怪異を描いた短い物語を仕事の合間に書いてみる気になったのもこの頃からだったでしょう。

二つ目の影響は、私が『ALTER EGO』の音楽(Amikoさんという方による曲です)を独りでいるときにはほぼつねに聞くようになったことです。どれもすばらしいのですが、特にこの動画の冒頭にある曲『Alter Ego』は職場の行き帰りの車内でも、深夜に独り書斎で読書や作業をするときにもつねにかかっています。旅人が回廊を進むときの曲ですが、何周しても不思議とまったく飽きの来ない、深みのある素敵な音楽だと思います。

『ALTER EGO』のゲームもずいぶん前に全部終わってしまったのですが、深夜に『Alter Ego』を聞きながら、読んだり書いたりする時間はいまでも私の大切な時間です。

夜な夜な文字の海に漕ぎ出すための船賃に活用させていただきます。そしてきっと船旅で得たものを、またここにご披露いたしましょう。