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ぼくはくたびれたスーツからばさばさと汚れを払う。黴臭い。全体、いつから放置していたものか…
劇場に来ている。 何でも、入口へとつづく道は急な斜面になっていて、歩いている足元がどうに…
外は大雨が降っていて、ザアザアという音が聞こえてくる。 ぼくは部屋にいて無心に字引を繰っ…
或る晩、勤め先の教室でのことである。 「この文、最初に動詞があるんだから命令文だ。す…
大きな病院に来ている。 其処は数えきれないほどの病床と、幾つもの病室のある巨大な入院施設…
ぼくはしきりに単四電池を探している。 其処は大きな駅のなかに入っている食堂で、飯時ではな…
外国に旅行に来てゐる。 穏やかな波の音。 燦々と降り注ぐ陽の光。 空気は暖かく、まとわりつくやうな湿気を感ずる。 たぶん、東南亜細亜あたりだらう。 むかし、一度旅行で行つたことがある。 何処かからラヂオ語学講座の音声が聞こえてくる。 「それではみなさんも発音してみませう。 ‘mazerunda’ ー ハイ、もう一度。 ‘mazerunda’ ー この動詞は日本人の私たちには覚え易いですね。偶然にも『混ぜる』と云ふ意味の動詞なのですから。次はこの動詞の活用形を見ていくこ
ぼくは卒業制作として、短い動画を十本ほど創作し終えている。われながら、なかなか良い出来だ…
母方の曾祖母の葬儀に参列する。 ぼくは喪服を着て、リムジンに乗り斎場に向かっている。車内…
大学生くらいの若い女性二人と飲んでいる。 ここは二人のうちどちらかの女性の部屋である。ぼ…
気がつけば、ぼくの手にはロープが握られている。 そのまたロープには大振りな桶みたようなも…
部屋の床はざぶざぶと水に浸つてゐる。何処かで水でも漏れてゐるのかしらん。 僅かに滑る濁つ…
其処は豪奢なる、天井の高い建物である。一階奥の閲覧室にはシャンデリアなぞが吊つてあつて、…
風呂上がり。 ぼくは伸びてきたのにここ最近多忙で切る暇のない髪の毛を、出勤前にワックスで以て無理に固めようとしている。 それにしてもよく伸びたものだ。 後ろ髪はもはや肩にまでかかろうとしているではないか。 桃色をしたプラスチックの丸い容器から、火傷の軟膏みたようなワックスを指先にいくらか取って、それを掌に延ばす。べたべたする手でぼくは頭を何度か額から後頭部の方になでつける。 なにが良くないのか、ぼくの髪の毛はうまくまとまらない。ワックスの白く固まったのが、髪の毛の合間