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ハルさん、癌だって聞きました。〜Theピーズのこと

食道がんみたいです。
ちょっと前になりますが、Theピーズのハルさんが自身の癌を報告してました。

なんかこの記事の見出しの
無念す
が腹立たしいんですけど、いかにも、「もう末期で死んでくんだよぉ。無念だよぉ」というニュアンスを盛り込んでるだろ。盛り込んでんじゃねぇよ!と言いたい。強く言いたい。
早期発見みたいなので、10月には手術して、どんな感じか分かりませんが、死んでしまうような事はないでしょう。きっと。絶対。
まったく。どれ位の切迫感を持って、この「ハルの癌」を語れば良いのかわからないのが困った所です。単純に ガ・ン って云う響きにビビってしまっています。

ほとんど全ての曲を、歌詞を、そらんじる事の出来るバンドってそんなにいないですよね。僕にとってはTheピーズがその筆頭です。
もちろん、覚えようとして頭に入れた訳ではなく、覚えてしまう位いっつも聞いていた、という事なんですけれど。

中学時代に、その存在を知ってから、いつも側にいたバンドでした。
学生時代には、どう頑張ってものし上がれないスクールカーストの最下層で
さんざんムリしてバカになった」(1)
気分で“いつかやったるわい!”と呟きながら、
かっちょわりー オラ何でこーなんだ ウンザリ オラ何でこーなんだ よくみりゃ そら まわりはついている 何でこーなんだ」(2)
と、誰かを妬んで過ごしたものです。

Theピーズのハルさんの書く詞は、飾りなんか全然無く、“前向きさ”みたいなモノが僅かばかりも無く、淡々としていて、それでも生きてくしか無いんでしょ?と云う空気に満ちていて、
本当は誰にも会いたくないんだ お互い仲良くするこたないんだ」(3)
という気持ちも、
いい女でかければいい つきあいなどつかれるだけ いい女で出せればいい マスカキザル夢見るだけ 見るのはタダだぜ タダだぜ」(4)
という欲望も、受け入れてくれたように思います。

いっちょまえに色気付いて“恋”とかしてしまって、
君はカスだよ かなりカスだよ どうせカスだろ かなりカスだろ がんばったって無理だよ 変ろうったって無理だ いいコになんかなるなよ いいコになんかなるな」(5)
みたいな厄介なコを、好きになってしまって、
オラよ 変わったよ 好きなコができた 人生なんか これからだ 好きなコができた 今日からなんだかメシがうめーぞ でも あっちはそんなの全然知らない」(6)
なんて浮かれまくって、瞬間バラ色になった時も、
結局、そんな恋が実らなかった時にも、
あー もう君と しみじみする 奴なんか どこにもいないのさ」(7)
と、Theピーズのおかげで、強がったり出来たのです。

そして、いっちょまえに夢なんぞ見て、大海にドロ舟で漕ぎ出した時には、
どうなったっていいと言え いー加減気が済め 果てしねーぞ キリがねーぞ いずれジジイだぜ」(8)
と腹くくって進んでみたものの、やっぱり、そうそう上手く行かなくって、
朝んなってもう どうでもよかった 朝んなってもう 眠い」(9)
って沈んだり、
どこがいいのか考えてない どこでもいいならうまくいく」(10)
って振り切ったり、
見える物だけが 全てでいいんだ 見えねえ物まで 考えるもんか」(11)
って割り切ったり、しながらも、
ぜんぶ ぜんぶ あとまわし」(12)
にしちゃうもんだから、どんどん追い詰められていって、
また目がさめた まっくろい夢だったが まっくろい部屋なので すでに見えない」(13)
何べんも思いどおりにいかないばかりで とうとういい夢もみれなくなったのさ」「やりたい事が 多すぎて 何にもやりたくなくなっちまった」(14)
といった状態に陥ったりしながら。

それでも、いっちょまえに誰かを信じたり、好きになったりして、そんな時は酒の力を借りるようになって、
僕はいつも無茶してる 酒を飲んで逃げてる 君は僕をたまに見ている 君は僕を好きかい」(15)
と勘違いして、
あんたの方が素敵だよ その辺の奴より」(16)
って言ってもらいたくって、
どこの誰が 本当に しあわせなんだろーか 冷たいヤな奴も 体だけはあったかいだろーや」(17)
なんて傷付きがてら、言い訳も用意したりして、
サイナラも答えも知らない ボクらは未来へズれていく 帰れない方へ 帰れない方へ」(18)
やってくしかないのだし、
戻らない人生も 半分はとっくだな マチガイも温めよう 今更リセットもないさ」(19)
事も自覚しながら、
もう生きた たくさん生きた 耳の中で ただ生きた まだ まだ まだなのか」(20)
もう充分だ、とも思いながら、アレするのも面倒だと思いながら、
わざわざこんなチッポケな僕も死んでしまうのさ えらそーな気分で まるで一人前 オチだけはどいつも同じ たどりつくまでややっこしい」(21)
割と未練もあったりして、
それでも、こういう曲を聴き続ける事が、生きる事とイコールだという感覚がありました。

燃料タンク 地図 ナビゲーター ハナから無いよ しまいまで ハタから見りゃそらのんびり でもとっくにギリギリなんだ もう みんなグライダー 低いままいつまでも 降りる場所探したよ 探すうちに遠いよ」(22)
なんとかやっていける場所を探して、
ロックンロール 絵日記 ジンロ 粘る部屋 死にたくなる朝といる 乾け センタクもん で また明日 どこまでもぬるい景色」(23)
起きて、食べて、寝て、また起きて、
何かまたつくろう 場所は残ったぜ 君と最悪の人生を消したい」(24)
か細い可能性をみつけて、
急いで 探せよ探せどこかに ひとりくらいはいる もう 出かけたんだ この夜の何処かに ひとりくらいはいる」(25)
と、勘違いしながら、やってくのです。

そして、ハルさん自身は
くだらねーよ こんなウタ すり替えよー 時間のムダ」(26)
と唄うのです。
全くその通り、なんでこんなクズみたいな歌詞に、こんなにも惹かれるのか。なんでいつも側に置いていたのか。
ただただ、そこに、まやかしが無いからだと思います。
クズみたいで、素敵です。

いつまでも変わらないのを好きなのなら、Theピーズなんて好きになっていないので、また、癌治して、ちょっと無様になって戻ってきて欲しいです。


以下、文中
Theピーズ 歌詞引用曲目。
(1)バカになったのに
(2)まわりはついている
(3)ふぬけた
(4)マスカキザル
(5)いいコになんかなるなよ
(6)好きなコはできた
(7)どっかにいこー
(8)底なし
(9)クズんなってGO
(10)電車でおでかけ
(11)脳ミソ
(12)全部あとまわし
(13)赤羽ドリーミン(まだ目は醒めた)
(14)シニタイヤツハシネ~born to die
(15)君は僕を好きかい
(16)今度は俺らの番さ
(17)日が暮れても彼女と歩いてた
(18)サイナラ
(19)ノロマが走っていく
(20)耳鳴り
(21)線香花火大会
(22)グライダー
(23)生きのばし
(24)実験4号
(25)ひとりくらいは
(26)ヒッピー

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