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ユーザーコミュニティを立ち上げたときの話

現職で「ユーザーコミュニティやる?」的な話がちょろっと出たので、過去にユーザーコミュニティを立ち上げたときの話を書きながら整理していこうと思います。

1.ユーザーコミュニティ立ち上げのきっかけ

当時はCS組織を立ち上げることになったばかりで、具体的に何をしたらいいのかまだ分からない状態でした。伝手を頼り他社CSMの方に話を伺いに行った際、「ユーザー会はCSのキラーコンテンツ」との神の言葉を受け、じゃあやるしかないと思ったのが始めたきっかけです。本当にそれだけでした。

2.ユーザーコミュニティをやる理由

とりあえずやると決めた後は、入会フォームや会則など形として必要最低限のものを用意しながら、改めてユーザーコミュニティをやる理由を考えました。すると、目前にある課題をいくつか克服できそう!と思うようになりました。

1)供給できる情報の量と質を底上げ
当時はユーザーが爆発的に増加する一方で、我々からのユーザーに対する情報提供が圧倒的に不足していました。成功事例をもつユーザーからリアルな情報を発信してもらうことは、他社ユーザーにとって非常に役立つはずです。また、我々から提供する情報は技術的な内容に寄ってしまうことも多かったのですが、ユーザーの業務目線という質的に異なる情報も届けられるようになります。

2)ユーザーへの効率的なタッチ
CSリソースが圧倒的に不足しているため、効率的にユーザーと繋がる方法を求めていました。コミュニティ活動のもとにユーザーが一堂に会することができれば、一度に多くのユーザーとコミュニケーションすることができます。また、パートナー経由のユーザーには直接タッチできない・しづらい状況がありましたが、コミュニティという名目であればコミュニケーションもできる・しやすくなります。

3)ユーザー情報の取得
オンプレミスのソリューションを提供していたので、ユーザーがどれくらいプロダクトを活用してくれているのかを知ることが非常に困難でした。コミュニティ活動の中で直接聞いたり、アンケートを取ったりすることで欲しい情報が容易に収集できます。

3.パートナーの位置づけ

コミュニティの立ち上げを進めるうえで、一番頭を悩ませたのはパートナーの存在でした。

1)パートナーはユーザーコミュニティのメンバーか?
当初はコミュニティ内での営業活動NGとのポリシーから積極的にパートナーをコミュニティ活動に巻き込むことはしていませんでした。ただコミュニティに参加したいという要望が多かったため、パートナーにも情報開示していくことにしました。ただし、リスクヘッジとして、コミュニティ内での営業活動NG、守られない場合はコミュニティ事務局の権限にて退会いただくことを会則に明確に盛り込みました。

2)コミュニティ活動に積極的ではないパートナーの存在
会場提供や登壇ユーザーの紹介など積極的にサポートしてくれるパートナーもいれば、反対のパートナーも存在しました。他パートナーにユーザーを取られることを懸念するパートナーについては、営業活動NGルールによって一定程度は納得いただけました。それでも、ユーザーにコミュニティを積極的に紹介してくれないパートナーもいました。ただ、我々からはオープンにいこうということで、コミュニティの存在を知らないユーザの目に留まるようにブログ等で積極的に情報発信しました。

4.初めてのコミュニティ活動(ユーザー会)

そんなこんなを経て、初めてのユーザー会を東京で開催しました。ユーザー3社による社内活用事例についてのプレゼンとネットワーキングという一般的な内容でした。100人近いユーザーが集まりましたし、アンケート評価も高かったので、初回としてはまずまずのスタートだったと思います。とはいえ、反省すべき点はいくつかありました。

1)ユーザー会ではなく、セミナーだったのではないか?
アンケートにて、「ユーザー会ということでユーザー同士のコミュニケーションを期待していたが、そのようなものでなかった」というフィードバックをいただきました。会場のレイアウトが以下の画像のようになっており、話すユーザーと聞くユーザーが完全に二分化されてしまい、インタラクティブにコミュニケーションできる形になっていませんでした。また、初めて会うユーザー同士が交流しやすくなるような仕掛けも用意できていませんでした。

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2)多くの人が見ているなかで、挙手して質問するのは至難の業
各プレゼンのあとに質疑応答の時間を設けていたのですが、活発な質疑応答はなされませんでした。本当は聞きたいことはあったのだと思いますが、100人近い人の前で手を挙げて質問するのは容易ではなかったと反省しました。

5.2回目以降のユーザー会

初回の反省点を活かし、いくつか改善していきました。特にコンテンツはについてはユーザー間のコミュニケーションを意識して、以下のように変更しました。

初回)プレゼン → QA → ネットワーキング
2回目~)プレゼン → パネルディスカッション
      → グループディスカッション → ネットワーキング

1)パネルディスカッション
「プレゼン + 挙手によるQA」から、「プレゼン + 登壇ユーザーと私によるパネルディスカッション」に変更しました。プレゼンだけでは話す人と聞く人に分かれてしまい、上下の関係性ができてしまいます。プレゼンを聞いているだけではなく、コミュニティに参加している感覚をより感じていただくために、挙手制は辞めてSlidoで気軽により多くの質問を集められるようにしました。パネルディスカッション形式でそれらに回答していき、議論の流れの中で聞いているユーザーに質問を投げてみるなど、一方通行のコミュニケーションではなく、インタラクティブなコミュニケーションが発生するように工夫しました。

レイアウトも以下のように変えました。初対面のユーザー同士でも会話しやすいように自己紹介シートのテンプレートを作成しました。内容はサービス活用状況や直近の悩み、相談してみたいことなどで、これを記入し持参いただくことで、会話のネタとすることができました。ちなみにこれはあるユーザーが自発的に用意されていたのを見てマネさせていただいたものです。

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2)グループディスカッション
ユーザー間のコミュニケーションを活性化させる上で、グループディスカッションは非常に有効でした。社内に相談できる人がいない、情報がない中で他社ユーザーと同じテーマについて議論することで得られるものは多いようでした。ただ、グループディスカッションのテーマについては毎回頭を悩ませました。ユーザーに刺さるテーマを用意するのが難しく、アンケートをとったり、複数テーマを用意して参加したいものを選択いただくなど、試行錯誤の連続でした。

これら以外にも細かくユーザー会の企画から実行までのスケジュール設定やタスクリスト、チェックリスト、ケータリングの量など毎回改善を繰り返していきました。また、毎回集計したアンケート結果は必ずパワーポイントにまとめて、プレゼン資料とあわせてコミュニティ参加者全員に共有するようしました。結果として、非常に高い満足度を獲得することができ、1年を通して東京で2回、地方主要都市にて3回のユーザー会を開催するに至りました。また、ユーザー主導の分科会も立ち上がりました。

6.ユーザーコミュニティはどのように成長したか?

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一方通行
初回のユーザー会がこれです。一方通行のコミュニケーションが中心になってしまっており、これではユーザー会というより一般的なセミナーです。アンケートの指摘により気付くことができ、2回目からはインタラクティブになるように改善していくことができました。

インタラクティブ
2回目のユーザー会がこれです。コンテンツなどを工夫することで、双方向のコミュニケーションが生まれるようになりました。ただし、コミュニケーションや活動の主体はあくまで個々のユーザーになります。

グループ化
分科会やユーザー同士の意見交換会が始まり、コミュニケーションや活動の主体としてのグループができあがってきました。グループ化にあたっては、少なくとも最初は、その中で中心になる方(ファーストピン)が必要です。これまでの活動の中で目星をつけていたので、後方支援する形を取りました。

7.振り返って思うこと

1)コミュニティはユーザー主導であるべきか?
コミュニティはユーザー主導であるべきと言われたりもしましたが、どちらでもよいと思います。コミュニティは協創活動だと考えているので、あるタイミングではベンダー主導で、別のタイミングではユーザー主導になるのではないかと思います。立ち上げ期はベンダー主導で活動を軌道に乗せました。その後、分科会はユーザー主導で立ち上げることになりました。

2)コミュニティはカスタマーマーケティングになり得るか?
これはYesですが、具体的どう成果を測るのか?の回答を用意するには至りませんでした。リファラルも実際に発生しましたが、コミュニティ活動による成果かと言われれば、そうとも言い切れないですし。既存ユーザーの活用促進だけではなく、成功事例の発信やトライアルユーザーの参加などマーケや営業面での貢献も心掛けるようにはしていました。The Modelの絵を単純に捉えるとジャーニーの終着点はCSになりますが、そうではなく環流するイメージだけは持っていました。

3)コミュニティを始めるタイミングは?
遅すぎることはあっても、早すぎることはないのでは?と思います。早すぎた場合は初めはあまり盛り上がらないかもしれませんが、少しずつ育てていけばよいのではないでしょうか。一方で、遅すぎるケースは存在するのではないかと思います。1年目からこれだけの活動ができたのはユーザーニーズが長く満たすことができていなかったことの裏返しで、あと1年遅ければユーザーは完全に離れてしまっていたのではないかと考えています。

長くなりましたが、以上で終わりです。コミュニティの話と言いつつ、ほぼオフラインのユーザー会の内容になってしまいました(反省)。

コミュニティは難しいなと実感しましたが、多くのユーザーとコミュニケーションが取れるので楽しさも多くあります。迷うくらいならとにかくやり始めて、少しずつ育てていけばいいのではないでしょうか。

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