ブロックオファー取引(SMBC日興証券)

 たまたまSMBC日興証券の記者会見やってたんで、ブロックオファー取引について書こうと思います。あくまで個人的な経験と推測とうわさ話のまとめなんで、「へーそんな感じなんだ」と思って読んでいただければと思います。


 まずブロックオファーとは何ぞやという話をしていこうと思います。ブロックオファー取引は、大口株主が保有している株式を立会外取引(15:30~16:30ぐらい)で証券会社が他の投資家に売る一連の取引です。(証券会社によってはブロックトレードとかエクイティーオファーとかリテールオファーとか取引の名称は様々です。)ブロックオファーで株を売る人が大口株主で、その株を買う人が投資家で、売り手と買い手の間に入るのが証券会社です。大口株主は政策保有株式(いわゆる持ち合い株式)の解消ニーズやオーナーなどの自社株を資金化したり最近だと株価上がってるから売っときたいニーズの一つのソリューションとしてブロックオファーを用います。実際に大口株主のニーズに応えるブロックオファーもありますが、証券会社から無理やりブロックオファーで売ったほうがいいといわれて出てくる案件もあります。


 証券会社の営業は一般的に法人部と営業部の二つの部門に分かれています。法人部は上場企業やそれに準ずる大企業、財団法人、学校法人、金融機関、地方公共団体などの運用規模が大きく若干専門性が求められるようなお客様を担当する部署です。営業部はいわゆるリテールと呼ばれる部門です、一般的には会社経営者や医者、地主などの富裕層が中心ですが、法人や財団法人、学校法人、地方公共団体、宗教法人、上場企業のオーナーなどを担当することもあります。


 ブロックオファーの売り手は法人部のお客さんが大半です(買い手はリテールが大半)。証券会社に株を置いてるだけだけのお客さんはたくさんいます、法人同士の付き合いで保有していたり、同じ業界だから応援したいとか、純粋に値上がりを期待する場合もあります。しかし昔は取引があったけど今はないとか、会社の方針で政策保有を減らすとか、付き合いはあるけど値上がりしてきたから利確するとか売却ニーズに応える一つのソリューションがブロックオファーです。大口の株式をブロックオファーじゃないと売れないかというとそんなことないです。普通にマーケットで数回に分けて売るとか、VWAP、CVWAP、立会外分売(めんどくさい)でも売れるっちゃ売れます。証券会社的には手数料が欲しいわけだから、手続き的に楽だとか、売却価格の恣意性をなくすとか、取引のあった会社の株価を暴落させないとか、株価の暴落を防げるとか、ああだこうだと言ってブロックトレードでの売却を促す営業を仕掛けます。


 ある程度、ブロックオファーで売却するよと段取りが進むと買い手の投資家向けに需要申告を募ります。銘柄名、総株数、ディスカウント率(0.3%、0.5%、1%大体この辺の割引率)、条件決定日〇月〇日~〇日(三日ぐらいあるかな)。ブロックオファー買う人は基本的にいつも一緒です。ブッカーって呼ばれてるけど、IPOとPOとブロックしか買わない人のこと。この人たちはなんか投資クラブみたいなのに入ってて、個人と法人いろんな支店に口座作ったりしてるし、他人名義の口座で仮借名取引を行う人もいる。うざい奴はまじでうざい、そーゆー奴は配分ゼロです、永久に。


 買い手は何をするかというと、条件決定の初日に自分の配分株数を証券会社の担当者から聞いて、初日の大引けで空売りする、15:30になったら終値からディスカウントされたブロック買って、翌日以降に空売りとブロックで買った現物を決済するだけ。一昔前はブロック買うと同時に翌日の成り行きで売り注文を受ける時代だったけど、最近は翌日の寄り付きで売るのってなんか怪しいよねってなってきて、数日置くことが多いと思います。なんで初日に空売りなのかっていうとほとんど初日で決まるから。二日目に決まるケースも数年に一回ぐらいはあります。


 日興証券はなぜ買い支え(安定操作、自己勘定取引)をしたのか?買い手が空売りでヘッジすることで株価が下がると、売り手がブロックに難色示してブロックトレードが成立しなくなったら手数料入らないから、買い支えしてブロックを成立させるってことです。


 空売りしてる人には配分しませんよと注意喚起はしますが(買い手の人はもちろん空売りしてないって言うに決まってる)、他社で空売りされてたらわからないし、出庫されて品渡しされてもそこまで追跡できないです。まあ空売りしてたらブロック買えないなんて法律はないし、てゆーか実際に空売りしてる人にブロック売れなくなったら困るのは証券会社でしょ。ブロックオファー自体は悪いものではないが、ブロックオファーを成立させるために、終値関与の安定操作をした事は法令違反であるのだろう。だけど終値関与で買った株を売るときに日興証券は損をする可能性もあるのだから、なかなか大したものだと思うけど。


 ちなみに買うときは手数料かからない(証券会社的には抜いてる)けど売るときは手数料かかるわけだから0.5%とか1%ぐらいのディスカウントだと売るときに手数料負けするので、対面での売買手数料が減免されてるケースが多い。まあネット証券で空売りして、移管して品渡しすることもできなくないけどめんどい。別に売りの手数料が取れなくてもブロックオファー買ってもらった時の手数料は1.5%前後とれている(例えば大口株主からは終値から2%ディスカウントして買い取って、1.5%乗せて投資家には終値から0.5%のディスカウントで売るみたいな)ため減免したって別にオッケーっていう感じ、むしろブロックオファー渡すし手数料も減免するから投信かってね(すぐに売っていいから)とか信用銘柄のPO買ってねみたいな関係が多いかな。


 ツイッターやユーチューブでいろいろ見かけたんですが、ブロックオファーを誤解している方もちらほらいらっしゃるようです。全然間違った説明してる方(自称専門家・自称投資家)もたくさんいらっしゃいました。
「よくある誤解」
・日興証券が終値関与したことで個人投資家が高く買わされる→純粋にヘッジしてない投資家が買えば高くかわされることになる可能性もあるけど、ブロックオファー買う投資家はほとんどヘッジしてるわけだし少しでも抜ける幅がでるなら高くてもオッケーだと思ってる。
・相対取引だから小口は高くて大口や得意先は割引が大きい→みんな一緒の条件です。
・日興が終値関与で利益出してる→ブロックが成立すれば日興は稼げるけど、買い支えしたポジションで損する可能性もある。
・買い手の投資家は空売りして終値下げたほうが、終値からディスカウントしたブロックを安く買える→買い手の投資家は株価を下げて安く買うためじゃなくて、終値で売っといてディスカウントの鞘取りのために空売りする。


 社長の経歴を検索するとプロパーっぽい感じだし、法人畑の経験もありそうだからブロックオファーの問題点についてはしっかり認識がありそうだな。だけど、ブロックオファー手がけてる証券会社の社員なんて数限られてるからな~。お客さんも営業員も法人部の担当者も本社のスタッフも、ブロックオファーがどんな取引なのか理解して関わってる人はほんとに少ない。僕がいた証券会社はそうでした。


 最後に一言、うわさだけどブロックオファーはトランプ政権で財務長官を務めたムニューシンのお父さん(GS)が発明したらしいよ。
 これからも相場の事とか金融関係のことを書いていこうと思いますので、よかったら良いねとコメントよろしくお願いします。

                         以上

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