Fastly, Inc. (FSLY) 決算サマリーレポート: 成長への転換期

## 1. 会社概要

Fastly, Inc. (FSLY) は、米国、アジア太平洋地域、ヨーロッパ、および世界中で、顧客のアプリケーションの処理、配信、およびセキュリティを確保するエッジクラウドプラットフォームを提供するソフトウェア企業です。エッジクラウドは、開発者がインターネットのエッジでデジタルエクスペリエンスを構築、保護、配信できるようにするサービス型インフラストラクチャの一種です。Fastlyのプラットフォームは、ウェブおよびアプリケーション配信用に設計されたプログラマブルプラットフォームであり、Compute@Edge、開発者ハブ、デバイス検出とジオロケーション、エッジアクセス制御リスト、エッジ認証サービス、フルサイト配信サービス、ストリーミングソリューションなど、さまざまなサービスを提供しています。Fastlyは、デジタルパブリッシング、メディアとエンターテイメント、テクノロジー、オンラインリテール、旅行とホスピタリティ、金融サービスなどの業界の顧客にサービスを提供しています。同社は以前はSkyCache, Inc.として知られていましたが、2012年5月にFastly, Inc.に改名しました。Fastly, Inc.は2011年に設立され、カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置いています。

## 2. ビジネスモデル

Fastlyのビジネスモデルは、顧客にエッジクラウドプラットフォームへのアクセスを提供し、そのプラットフォームを通じてさまざまなサービスを課金することに基づいています。Fastlyは、パフォーマンス、セキュリティ、および信頼性の向上を目的として、さまざまなサービスを提供し、そのサービスを通じて顧客のデジタルエクスペリエンスを強化しています。

## 3. 財務状況と業績動向

Fastlyの売上高は、過去5年間で安定的に増加していますが、2024年第2四半期には一部の主要顧客からの収益減少により、成長が鈍化しました。この収益減少は、主に主要顧客のトラフィック予測の軟化と収益性への注力によるものです。Fastlyは、これらの課題に対処するために、新しい顧客を獲得し、既存顧客との顧客エンゲージメントを強化するための取り組みを行っています。


| 年 | 売上高 (百万ドル) | 営業利益 (百万ドル) | 経常利益 (百万ドル) | 純利益 (百万ドル) |
|---|---|---|---|---|
| 2019 | 200.46 | -46.55 | -51.06 | -51.55 |
| 2020 | 290.87 | -107.21 | -107.41 | -95.93 |
| 2021 | 354.33 | -219.02 | -222.63 | -222.70 |
| 2022 | 432.73 | -246.20 | -190.68 | -190.77 |
| 2023 | 505.99 | -190.92 | -133.31 | -133.09 |

## 4. 今決算の財務指標

2024年第2四半期のFastlyの売上高は、前年同期比8%増の1億3240万ドルでした。これは、Fastlyのガイダンスの中間値をわずかに上回っています。営業損失は1270万ドルで、ガイダンスの中間値よりも好調でした。これは、高い粗利益率と事業全体のコスト管理によるものです。

* **売上高**: 1億3240万ドル (前年同期比8%増)
* **営業損失**: 1270万ドル
* **粗利益率**: 58.5%
* **調整後EBITDA**: 80万ドル

## 5. 企業の成長性

Fastlyは、エッジクラウドプラットフォームのイノベーションと新たな顧客獲得を通じて、成長を維持し、その成長性と収益性を高めることを目指しています。

* **AIアクセラレータ**: Fastlyは、AIアクセラレータと呼ばれる、大規模言語モデルを活用するアプリケーション開発者にパフォーマンスとコストの削減を提供するAIプロキシを、2024年に一般公開予定です。このAIアクセラレータは、エッジコンピューティングの力を活用して、世界中のアプリケーションのパフォーマンスを向上させます。
* **セキュリティサービス**: Fastlyは、ボット防御の強化、APIとATO防御、アカウント乗っ取り防御、次世代WAFなどのサービスを含む、包括的なセキュリティポートフォリオを展開しています。
* **顧客獲得**: Fastlyは、新しい顧客を獲得し、既存顧客との顧客エンゲージメントを強化するための取り組みを続けています。同社のエンタープライズ顧客数は、2024年第2四半期に601社に増加し、前年同期比50%増となりました。

## 6. 市場の成長性

エッジクラウド市場は、近年急速に成長しており、今後も高い成長が期待されています。企業は、パフォーマンス、セキュリティ、および信頼性の向上を目的として、エッジクラウドソリューションを採用しています。Fastlyは、この成長市場におけるリーディングカンパニーとしての地位を確立することを目指しており、その成長性と収益性の向上を期待しています。

## 7. 今決算の良かった点

* **収益増加**: Fastlyの2024年第2四半期の売上高は、前年同期比8%増の1億3240万ドルで、ガイダンスの中間値を上回りました。
* **強力な粗利益率**: 同社の粗利益率は、コスト管理の取り組みにより、58.5%と安定しています。
* **顧客獲得の改善**: Fastlyは、2024年第2四半期に新しい顧客を獲得し、エンタープライズ顧客数を50%増加させました。
* **新しい製品のリリース**: Fastlyは、AIアクセラレータ、ボット防御の強化、APIとATO防御、アカウント乗っ取り防御、次世代WAFなどの新製品やサービスをリリースしました。

## 8. 今決算の懸念点

* **主要顧客からの収益減少**: Fastlyは、主要顧客からの収益減少に見舞われており、これは同社の成長に大きな影響を与えています。この収益減少は、主に主要顧客のトラフィック予測の軟化と収益性への注力によるものです。
* **競合との競争激化**: エッジクラウド市場は、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloudなどの他の主要クラウドプロバイダーを含む、いくつかの競合に囲まれています。
* **コスト管理**: Fastlyは、収益性の向上に向けてコスト管理を強化するために、会社の再編を行うことを発表しました。これは、従業員の削減と裁量支出の削減を意味します。

## 9. 今後の見通し

Fastlyは、成長を維持し、収益性の向上を達成するために、いくつかの課題に対処する必要があります。

* **主要顧客の収益減少**: Fastlyは、主要顧客の収益減少に対処するために、新たな顧客を獲得し、既存顧客との顧客エンゲージメントを強化するための取り組みを続けています。
* **コスト管理**: Fastlyは、会社再編を通じてコスト管理を強化し、収益性の向上を目指しています。
* **イノベーション**: Fastlyは、市場シェアを拡大し、競争力を維持するために、AIアクセラレータ、セキュリティサービス、およびエッジコンピューティングなどの分野におけるイノベーションを続けていく必要があります。

## 10. 次回の決算で確認すべき点

* **主要顧客からの収益**: Fastlyの主要顧客からの収益が、どのように推移するのか注目が必要です。
* **顧客獲得**: Fastlyが、新しい顧客を獲得し、エンタープライズ顧客数を増加させることができるかどうか注目が必要です。
* **コスト管理の取り組み**: Fastlyが、再編を通じてコスト管理を強化し、収益性の向上を実現できるかどうか注目が必要です。

## 11. まとめ: 投資判断の総括と今後の展望

Fastlyは、成長市場におけるリーディングカンパニーとしての地位を確立することを目指しており、その成長性と収益性の向上を期待しています。しかし、主要顧客からの収益減少などの課題に対処する必要があります。投資家は、Fastlyの収益成長、コスト管理の取り組み、およびイノベーションに対する取り組みを注意深く監視する必要があります。Fastlyは、新たな顧客獲得とイノベーションを通じて、その成長を加速させ、収益性の向上を実現することができるかどうかが注目されます。

## 免責事項:
このレポートは情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終的な決定は、投資家の責任で行ってください。

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