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合流点 <1968> 【監修済】

2ヴァージョン

(1973年1月のテキスト)

 アンサンブルのための『合流点』は1969年8月27日の午前11時と午後1時の間に2回録音されました。第一ヴァージョン(9分30秒)と第二ヴァージョン(15分15秒)はどちらも放送に使用されました。このCDではそれらを連続的に、お互いに補いながら聴くことができます。
 このテキストは事前に演奏やリハーサルをされたことが一度もありませんでした。演奏者はアロイス・コンタルスキー(ピアノ)、ロルフ・ゲールハール(マイク付きタム・タムと竹笛)、カルロス・アルシナ(ピアノ)、ミシェル・ポルタル(テナー・サキソフォンとクラリネット)、ヴィンコ・グロボカール(トロンボーン)、そしてカールハインツ・シュトックハウゼン(グリッサンド・フルート、短波ラジオ、タム・タム用フィルターと2ポテンショメーター)。

『合流点』

全員が同じ音を奏でる

おまえの考えが向かう方へ
その音を導け
その音を離れず、その音に留まれ
いつもくりかえし同じ処へ
戻れ

                            1968年5月8日

 6人の演奏者のうち4人は前日にテキスト『エス』を録音しており、そしてコンタルスキーとゲールハールはすでに『エス』を上演したことがありました。『エス』を演奏する際には自らを無思考の状態におかなければなりません(『エス』の解説参照)。『合流点』の演奏では、演奏者はことさらに思考を自由に赴くがままにして、思考の道筋を音楽的に明確にします。「全員が同じ音を奏でる//おまえの考えが向かう方へ/その音を導け/その音を離れず、その音に留まれ/いつもくりかえし同じ処へ/戻れ。」

 全員が同じ音(「音」とは多かれ少なかれ豊かな内的生命をもった複雑な集合音でもありえます)を奏でなければならない、各人が、自分の考えの向かうがままにその音を導かねばならない、そしてそれにも関わらず各人はその音に留まらねばならない、ということは最初は不可能に思えます。けれども、演奏者たちの思考がこの一つの集合音に集中されて、もし一人が思考のままに音を彼方へ導こうとするなら、他の演奏者が道を譲るという事態は、演奏者が攻撃的で利己的な意図を追求したりしなければ実際に生じることなのです。そしてそのような寄り道を終えると「いつもくりかえし同じ処へ戻る」わけですが、そこが『合流点』となるのです。もちろん、ありとあらゆる思いがけない出来事、「障害」、待機時間、ときには抗争すらあるでしょう。例えば、数名の演奏者が同時に、あるいはほとんど同時に「音を設定」しようとするとか、誰かがもとに戻る方法を見失い、考えに連れ去られるままになるとか、戻りたくなくなったり、合流する「処」や他の演奏家の方向に異義を申し立てたり、どこか余所へ逸脱したがる・・・等々。

[翻訳:山下修司、監修:清水穣]