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コントラ・プンクテ <1952-53>

十楽器のための

(1952/53年のテキスト)
 十楽器のための『コントラ・プンクテ』の作曲理念---個別化された音と時間関係の多様な音響世界の内部で対立関係が徐々に解消されていき、最後には統一された不変のものだけが聴取されます。この作品は単一楽章からなっています。六つの異なる(ペアの)音色が使用されています:フルート-バスーン;クラリネット-バス・クラリネット;トランペット-トロンボーン;ピアノ;ハープ;ヴァイオリン-チェロ(管楽器の三種類のペア、打撃され、つま弾かれ、弓奏される三種の弦楽器)。これら六つの音色は単一の音色、すなわちピアノ(打撃される弦)に統合されます。個別の楽器は以下の順に抜けていきます:トランペット、トロンボーン、バスーン、ヴァイオリン、バス・クラリネット、ハープ、クラリネット、チェロ、そしてフルート。六種類のダイナミック・レヴェル(pppからsfz)は連続してppになります。とても短くから長くといった音価の重要な差異は解消されます:中庸のみ、密に近接した音価は残されます(16分音符、3連16分音符、付点16分音符、5連16分音符など)。垂直的、水平的関係の対立はモノクロの2声部対位法に解決されます。
 本来的な意味でのコントラプンクテ(対位法)は、「パラメータ」とも呼ばれるサウンドの諸次元に適応されています。すなわち長さ(持続)、音高(周波数)、ボリューム(音の強度)、波形(音色)の四次元です。
 『コントラ・プンクテ』直前に書かれた四つのセリエルな作品(『クロイツシュピール』、『シュピール』、『打楽器トリオ』、『プンクテ』)で重要だったことが、徐々に説得力を獲得する。私が求め試みてきたことは絶えず同じです。変容の力---その時間としての、音楽としての効果。反復ではなく、変奏ではなく、展開でも対立でもない。これら全ては「かたち(ゲシュタルト)」---主題、動機、サウンドオブジェ---を前提とします。かたちが反復され、変奏され、展開され、対立させられるのです。分解、加工、拡大、縮小、転調、移調、鏡像、逆行などで処理されるのです。これら全てが、最初の純粋な点の音楽以降放棄されました。われらの世界---われらの言語---われらの文法。
 ネオ…はいらない!では何か?コントラ・プンクテです。もっとも密やかでもっとも興味深い一連の変容と更新---終わりはないのです。同じものが聴かれることは決してないのです。ですが、紛うことなき統一的な構造からはずれはしないことがはっきりと感じられるのです。類縁関係にある様々な比率を統括する秘められた力-構造。同じかたちに異なる光が当てられるのではないのです。むしろ、遍在する同じ光のなかの異なるかたちなのです。
(1962年5月21日、西ドイツ放送局のコンサート「時代の音楽」のプログラム・ノートより)

 十楽器のための『コントラ・プンクテ』の最初のヴァージョンは1952年の日付けが入っています。第二ヴァージョンの半分は1953年5月26日にケルン・ラジオの「ワールド・ミュージック・フェスティヴァル」にて初演されました。ヘルマン・シェルチェンの指揮により、同年パリでの「ドメーヌ・ミュージカル」コンサートで初めて完全演奏されました。この作品は私の妻ドリスに献呈されています。

 六つのサウンド・カテゴリーに分割された十楽器による点構造のアンサンブル・スタイルは不規則に---しかし一貫して---グループによって明瞭に表現される独奏的なスタイルへと変型され、それは徐々にピアノ・パートに収束されます。

 1973年3月9日から16日にわたって、私はロンドン・シンフォニエッタを指揮してイギリス、イタリアそしてドイツを演奏旅行しました。6公演のプログラムは以下のとおりです:

『クロイツシュピール』-『ツァイトマッセ』-『ストップ』
『コントラ・プンクテ』-『アデュウ』-『イレム』

 『コントラ・プンクテ』はドイツ・グラモフォンのために1973年7月8日の午後2時から午後6時にウェンブレィ(ロンドン)のCTSスタジオにて録音されました。
録音監督:ルドルフ・ヴェルナー;録音技師:ジョン・リチャード、ハインツ・ヴィルドハーゲン。

 演奏家:セバスチェン・ベル(フルート);アントニー・ペイ(クラリネット);ロジャー・ファロウス(バス・クラリネット);ウィリアム・ウォーターハウス(バスーン);ジョン・ミラー(トランペット);デヴィッド・パーサー(トロンボーン);ジョン・コンスタブル(ピアノ);エリザベス・フレッチャー(ハープ);マルシア・クレイフォード(ヴァイオリン);クリストファー・フォン・カンペン(チェロ)。
 指揮者:カールハインツ・シュトックハウゼン

シュトックハウゼン出版社は1991年にこの録音を権利収得いたしました。

『コントラ・プンクテ』セットアップ
<図>略

[翻訳:山下修司]