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夜の音楽 <1968>  【監修済】

(1973年1月のテキスト)

 アンサンブルのための『夜の音楽』は1969年8月31日の午後4時30分くらいから5時にかけて---事前に一度も演奏やリハーサルをすることなく ---一回録音されました(26分30秒)。演奏者はハラルド・ボイエ(エレクトロニウム)、アロイス・コンタルスキー(ピアノ)、ヨハネス・G・フリッチュ(コンタクト・マイク付きヴィオラとフィルター)、アルフレート・アーリングスとロルフ・ゲールハール(マイク付きタム・タム、フレクサトーン、ギロ、ジューズ・ハープとその他の楽器)、ジャン=フランソワ・ジェニー=クラーク(ダブル・ベース)、ジャン=ピエール・ドルーエ(ドラムとその他の打楽器)、カールハインツ・シュトックハウゼン(短波ラジオ、カッコウ笛、ヴィオラとタム・タム用2フィルターと4ポテンショメーター)。

『夜の音楽』

一つの振動を奏でよ、宇宙のリズムで
一つの振動を奏でよ、夢のリズムで

夢のリズムで一つの振動を奏で、
そしてそれをゆっくりと変化させよ
宇宙のリズムへと

これをできるかぎり何度も繰り返すこと

                            1968年5月8日

 各演奏者が「宇宙のリズムで振動を奏で」、それから「夢のリズムで振動を奏で」、そしてその後にふたたび「夢のリズムで振動を奏でてゆっくりとそれを宇宙のリズムへと変化させ」そして「これをできるかぎり何度も繰り返す」という『夜の音楽』の演奏指示は、演奏者が夢のリズムと宇宙のリズムを意識しており、あるいはそれらの振動-リズムに直観的に入り込んでその状態で楽器を演奏できる、ということを前提しています。私はこの録音に参加した演奏者たちには、自分の夢のリズムをより精密に調査するために、私が「七日」間にわたって行った最初の試みを説明しておきました。さらに演奏者全員が1969年6月7日にパリでの『結合』の録音で、そして何人かは1969年8月29日にダルムシュタットでの『上方へ』の録音で「宇宙のリズムの振動」を演奏することになっていました(『上方へ』についての解説を参照)。
 この録音のなかで夢のリズムと星座のリズムは、まるで魔法のように夜の動物やお伽話の生き物たちの不思議な音と織りまぜられています。しかもそれが、ここでの音楽家達のような「モダンな」都市住民の演奏によるのですから、かなり驚くべきことです。もっとも、その少し前に私たちは、『無際限』を夜中に二回サン・ポール・ド・ヴァンスの森で演奏していたのでした...

[翻訳:山下修司、監修:清水穣]