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上方へ <1968> 【監修済】

(1971年11月のテキスト)

 アンサンブルのための『上方へ』の録音(演奏時間:29分25秒)は1969年8月29日の午後5時10分くらいから5時40分にかけて行われました。このテキストは、事前のリハーサルなしで、たった一度だけ演奏されました。演奏者はアロイス・コンタルスキー(ピアノ)、ヨハネス・G・フリッチュ(コンタクト・マイク付きヴィオラとフィルター)、アルフレート・アーリングスとロルフ・ゲールハール(マイク付きタム・タムとクラヴェス)、ヴィンコ・グロボカール(トロンボーン)、そしてカールハインツ・シュトックハウゼン(ヴィオラとタム・タム用フィルターとポテンショメーター、短波ラジオと2リン[日本の寺院用具-金属の鉢])。
 『上方へ』の構成的特徴---一連のリズムパターンに基づき、時々は劇的な対立にあふれ、最後には叙情的で、音数も減り、そして多くのエコーとともに響き続ける傾向 ---は演奏指示から帰結するものです。

『上方へ』

一つの振動を奏でよ、あなたの最も小さな粒子のリズムで*注1

一つの振動を奏でよ、宇宙のリズムで*注2

あなたの最も小さな粒子のリズムと
宇宙のリズムのあいだで
今日聴き分けることのできる
あらゆるリズムを奏でよ

あるリズムから次のリズムへと
そしてそれぞれを出来るだけ長く
大気がそのリズムを奏ではじめるまで*注3

                            1968年5月8日

注1:例えば目を閉じた時に光の小さな斑点の動き
注2:例えば星座の配置、リズムとインターヴァルに置き換える(ピアノ奏者)
注3:演奏者はすでに、手足、細胞、分子、原子のリズム、あるいは身体、心臓、呼吸、思考、直観のリズムが登場する他のテキストを、解釈した経験を持っていなければならない。

[翻訳:山下修司、監修:清水穣]