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聖体拝領 <1968> 【監修済】

最初は3名、のちに4、5、6、7名の演奏者、歌手のための

(1972年5月のテキスト)

 アンサンブルのための『聖体拝領』は1969年8月27日の午後6時から8時の間に2回録音され、そして私は2番目の短い方のヴァージョン(15分29秒)を放送とレコード用に選びました。このテキストは事前に演奏やリハーサルをされたことが一度もありませんでした。忘れてはならないことは、いずれにせよ、8名の演奏者のうち6名は、とても長いレコード収録期間の三ヶ月前に、同様のテキスト『結合』を集中的にこなしていたということです。演奏者はアルフレート・アーリングスとロルフ・ゲールハール(マイク付きタム・タムと打楽器とフィルター)、ヨハネス・G・フリッチュ(コンタクト・マイク付きヴィオラとフィルター)、カルロス・R・アルシナ(ハモンド・オルガンとピアノ)、ヴィンコ・グロボカール(トロンボーン)、ジャン=フランソワ・ジェニー=クラーク(ダブル・ベース)、ミシェル・ポルタル(サキソフォン、フルート、クラリネット)、カールハインツ・シュトックハウゼン(声、短波ラジオ、石を入れたグラス、タム・タムとヴィオラ用2フィルターと4ポテンショメーター)。

『聖体拝領』

一つの振動を奏でるか歌え
あなたの共演者の一人の手足のリズムで

一つの振動を奏でるか歌え
あなたの共演者のもう一人の手足のリズムで

一つの振動を奏でるか歌え
あなたの共演者の一人の細胞のリズムで
...もう一人の...

一つの振動を奏でるか歌え
あなたの共演者の一人の分子のリズムで
...もう一人の...

一つの振動を奏でるか歌え
あなたの共演者の一人の原子のリズムで
...もう一人の...

一つの振動を奏でるか歌え
あなたが到達することのできる
あなたの共演者の一人の最も小さな粒子のリズムで
...もう一人の...

これをくりかえし試みること
あきらめるな

                            1968年5月9日

 それぞれの演奏者が「共演者の一人の手足のリズムで」---毎回「共演者のもう一人の」も---それから「細胞、分子、原子、最も小さな粒子のリズムで」「一つの振動を奏で」なければならないとされた『聖体拝領』の演奏指示から生まれたものは、曲の終わりのほうで、これまで私が経験した中で最も恍惚とするような、そして時に殺し合いのような激しさを帯びたパッセージでした。そのとき以来(そして録音をとても頻繁に聴くことを通じて)「聖体拝領」に対する私の認識は根本的に変化しました。極めて繊細な、穏和で愛すべきこれらの演奏者によって実現されたこの音楽には、不気味な真理が含まれています。すなわち、身体という無意識的な層で生じるようにはっきりと指示された「聖体拝領」は、動物的野蛮、悪魔的狂乱、過酷な闘争、狂気へといたる熾烈な攻撃性を解き放ちうるのであり、そしてその戦争、闘争と殺戮こそが「聖体拝領」の昇華された形式なのだ、という真理が。あたかも、相互破壊と殺戮のなかで、統一する精神が自由になるかのごとく。
 このメタ音楽的ドキュメントはこれからも長いこと私たちの頭から離れないでしょう...

[翻訳:山下修司、監修:清水穣]