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モメンテ(瞬間) <1962-64/69>

ソプラノ独唱、4群合唱と13楽器のための

ヨーロッパ・バージョン1972
ドナウエシンゲン・バージョン1965の抜粋

演奏者

モメンテ ヨーロッパ・バージョン 1972

ソプラノ独唱:グロリア・デイヴィー

ケルンWDR合唱団
(リハーサル:カールハインツ・シュトックハウゼンと合唱監督ヘルベルト・シェルヌス
アシスタント:ペーター・エトヴェシュとゴットフリート・リッター)

合唱独唱者:
リタ・フィッシャー、ソプラノ;アンドレ・ペイサン、テナー;
ヴェルナー・エンゲルハート、バリトン;アルノ・ラインハート、バス

電子オルガン:
ロジャー・スモーリー(ハモンド・オルガン)とハラルド・ボイエ(ロワリー・オルガン)

アンサンブル、ミュージック・ヴィヴァンテの器楽奏者
(リハーサル:カールハインツ・シュトックハウゼン、アシスタント:ディエゴ・マッソン)

指揮:カールハインツ・シュトックハウゼン

録音:DGG-WDRの共同制作(1972年12月10-12日ボンと1973年1月9-11日レヴァーキュセン);録音監督:ルドルフ・ヴェルナー(DGG)とヘルベルト・シェルヌス(WDR);録音技師:ハインツ・ヴィルトハーゲンとクラウス・ヒーマン(DGG);ミックス・ダウン:カールハインツ・シュトックハウゼン(1973年6月12-15日と1974年1月7-10日ハノーバーのポリグラムにて)。

ケルンWDR合唱団

ソプラノ:
 メタ・アッカーマン
 マルゴ・ベリングスハウゼン
 ヒルデガルド・ビルケ
 バーバラ・ドマー
 リタ・フィッシャー(合唱独唱者)
 マリア・ハンマーマン
 マリス・ヤコブス
 マーガレット・ヤコビー
 マリタ・ヤンセン
 ブリジット・カルトヴァッサー
 マリア・メツラー
 ヒルデ・トーンホフ
 マルガ・ヴァイセンフェルト

アルト:
 フリーデル・ボスバッハ
 マグダ・コモチオ
 インゲ・フラッケンポール
 トラウデ・ゲオルギ
 ルイゼ-シャルロット・カンプス
 エヴァ・ケッセラー
 エディス・クナウプ
 ルーシー・シュルツ
 ケイト・シュヴェドウスキー
 ヴェラ・クレメンセック=ヴォレンハウプト
 ヴァルトラウト・シーベルト
 レナテ・ツィンマーマン

テナー:
 ユリウス・ガモン
 フリッツ・ハレン
 ギュンター・ヘス
 ヴィリ・ランペンシェルフ
 トニ・マクセン
 ヨセフ・ニコライ
 アンドレ・ペイサン(合唱独唱者)
 ヴィリー・プレミング
 マンフレット・W・ローテ(エキストラ)
 ヒューベルト・シュミット
 フェルディナンド・シュネル
 ヴィリ・ヴィルムス

バス:
 ヴェルナー・ベッカー
 ヴェルナー・エンゲルハート(合唱独唱者)
 カイ・フラウンンドーファー
 フリードリヒ・ヒンメルマン
 ルドルフ=ディーター・クレル
 ディーター・ミューラー
 ヴィンフリート・リヴェ(エキストラ)
 アルノ・ラインハート(合唱独唱者)
 デートリヒ・サツキー
 ヘルマン・スタイガー
 ハンス・ステイン(エキストラ)
 ペーター・ヴェーバー

アンサンブル、ミュージック・ヴィヴァンテの器楽奏者
トランペット:ジャン=ジャック・ガウドン、クロード・ヴァッセ、ルネ・カロン、ルイ・ロキン;
トロンボーン:ジャック・ボロネージ、ベルナルド・カミュ、ピエール・ゴーシュン、モーリス・セヴレロ;
打楽器:ガストン・シルベスタ、パトリック・ギーゼ、ウィリー・コンクィラ。

モメンテ ヨーロッパ・バージョン 1972
座席配置と演奏台

<座席配置図>略

すべての寸法はメートル表示、演奏台の高さは括弧()内。

演奏者

モメンテ ドナウエシンゲン・バージョン 1965 の抜粋

ソプラノ独唱:マルチナ・アロヨ

ケルンWDR合唱団
(リハーサル:カールハインツ・シュトックハウゼンと合唱監督ヘルベルト・シェルヌス)

電子オルガン:
アロイス・コンタルスキー(ハモンド・オルガン)、アルフォンス・コンタルスキー(ロワリー・オルガン)

器楽奏者:ケルン放送局オーケストラの楽団員

指揮:カールハインツ・シュトックハウゼン

録音:WDRケルン(1965年10月13-14日)

シュトックハウゼン出版社はこの録音を1991年に権利取得して、1991年10月にポリグラム(ハノーバー)にてシュトックハウゼンがCDのためのデジタル・マスターを作成しました。
;録音監督:ルドルフ・ヴェルナー(DGG)とヘルベルト・シェルヌス(WDR);録音技師:ハインツ・ヴィルトハーゲンとクラウス・ヒーマン(DGG);ミックス・ダウン:カールハインツ・シュトックハウゼン(1973年6月12-15日と1974年1月7-10日ハノーバーのポリグラムにて)。

解説

1962年の最初のモメンテ=グループの世界初演以来、シュトックハウゼンは『モメンテ』について、及び「モメンテ形式」、「多義形式」などについて数多くの文章を『テクステ(音楽論集)』第1-6巻(ドゥモン出版社、ケルン)として出版してきました。
 この作品の構造について最も重要な出版物は楽譜のための一番目の14枚と二番目の13枚の多色刷りのスケッチによる『モメンテへの鍵』です。これらのスケッチは1971年にカッセルのエディション・ボクツコフスキーによって署名と番号付きのポートフォリオで250部出版されました。残部のコピーはシュトックハウゼン出版社に注文できます。

序文

ソプラノ独唱、4合唱グループと13楽器のための『モメンテ』は1962年1月に完全に計画を立てられていました。三つの大きなモメンテ=グループがあり、それらはI-モメンテ(比較的不確定、アンフォルメル)によって枠付けられて分離されています。K-モメンテ(KLANG=音色:垂直性、ホモフォニー、規則性、ノイズ、打楽器、男声)は常に中央にあり、M-モメンテ(MELODIE=旋律:水平性、モノフォニー、ヘテロフォニー、無作為、等しくミックスされた音高とノイズ、トランペットとトロンボーン、ソプラノ独唱)とD-モメンテ(DAUERN=持続:対角性[垂直+水平]、ポリフォニー、不規則性[「シンコペートされた」]、音高、電子オルガン、女声)が---交互に---先行と後続をします。
定められた規則に従って、そしてフォルムスキーマに基づいて、指揮者がバージョンを構成するためにモメンテを組合わせます。一度この順序が決められると、相当する上演素材が作成され、特定のモメンテからの引用がEinschu"be(挿入部)として隣接するモメンテで、前に起きた素材を思い出したり後続するであろうものを予言するために、使用されます。
 以下のモメンテは1962年4月までに完成されました:全K-モメンテ、M(m)-とMK(d)-モメンテ、I(d)(穏やかなオルガン・モメンテ)、I(m)(拍手モメンテ)とI-モメンテ(常に最後)。

これら(I-モメンテを除く)は1962年5月21日にWDRケルンにて作曲家の監督のもと世界初演されました。その演奏時間は約25分間でした。
 他のすべてのM-モメンテが作曲されてから、約61分間のバージョン---同様にWDRのアンサンブルで作曲家の監督のもとで---は1965年10月にドナウエシンゲン音楽祭にて初演されました(ドナウエシンゲン・バージョン1965のフォルムスキーマを参照)。そのとき、いくつかのD-モメンテはすでに書かれていましたが、残りのD-モメンテと長大なI(k)-モメンテは1969年になって完成されました。
 1972年12月8日のボンでの全モメンテの初演のために、そしてその後のヨーロッパ演奏旅行とレコード録音のために、作曲家はまったく新しいバージョンを作成しました。ヨーロッパ・バージョン1972とドナウエシンゲン・バージョン1965のフォルムスキーマの比較はこれを明確にしています。
 個別のモメンテはいわゆるEinschu"be(=挿入部:先行または後続のモメンテからの短い引用、モメンテの性質によって挿入された記憶や告知へと強く変更されている)によって互いに多かれ少なかれ強く関係づけられています。Einschu"beを少しも受け入れないとても強いモメンテとそれ自身の”個性”がもはやほとんど聴き取れない程に多く受け入れるものとの間の相互関係には数多くの度合があります(1965年と1972年のバージョンでのモメンテの順序を参照)。
 各上演には四ヶ国語が見出されます:上演するアンサンブルの言語でのテキストの大多数、といくつかのパッセージ---楽譜で示された---は第一、第二、第三外国語でも書かれています。

『モメンテ』はマリー・バウアーマイスターに献呈されていて、彼女はいくつかのモメンテで音楽的に”描写”されています(例えばM(m)-モメンテでの独唱にて)。

使用されたテキスト

1.ソロモンの歌
  (旧約聖書、マルチン・ルターの翻訳)
2.マリー・バウアーマイスターの書いた手紙の一節
3.英領ニューギニアのトゥロブリアンド島の歓声
4.ウイリアム・ブレイクからの引用"Hewhokissesthejoyasitflies,lives inEternity'ssunrise..."
5.おとぎ話からの名前、創作の名前、叫び、呼び声
6.聴衆の反応(叫び、フレーズ)
7.創作の擬音語と純粋な音声の意味をなさない音節

台本

同時に歌われるテキストが互いに隣り合った縦の欄に印刷された『モメンテ』の台本があります。それは、しかしながら、CD小冊子の型にサイズを縮小することは不可能です。
 『モメンテ』の台本(27×27センチ)はシュットックハウゼン出版社に注文できます。

楽譜

1962年に、『モメンテ』の出版権はウイーンのユニバーサル・エディション社に取得されています。現在(1992年)まで楽譜はまだ出版されていません。手稿譜の写真複写はシュットックハウゼン出版社に注文できます。

『モメンテ』フォルムスキーマ

<図>略

「純粋な」モメンテM、K、Dに追加のモメンテは由来し、他のグループ(インデックスの小文字)に影響されています。2つ(あるいは3つ)の大文字はほぼ完璧なバランスで結合されたグループの性質のモメンテを特色付けます。M(m)は「フィードバックされた」モメンテです;D(d→m)も同じながら、自己反映から(m)についての反映への推移を伴います;DK(d)とDK(k)においてフィードバックはそれぞれの場合において結合の一方の構成要素に影響します。
 共有の中心に基づいてグループ化された全モメンテは交換できます。K-モメンテは中心にとどまり、M-モメンテとD-モメンテは互いに交換できます。
 M-モメンテに基づいて、グループM(m)-MK(d)-M(k)-MKとグループMD(k)-M(d)-MDはその位置を交換できます。M(k)に基づいてモメンテM(m)プラスMK(d)はMKと交換できる-など。
 モメンテI(m)とI(k)は交換可能で、モメンテI(d)はK-モメンテに常に先行し、I-モメンテは常に最後です。
 モメンテの順序は垂直に読まれます;従って、隣のページ(16、48ページ)の例での順序はI(m)-M(m)-MK(d)-M(k)-MK-M-MD(k)-M(d)-I(d)-KD(m)など。

 ドナウエシンゲン・バージョン1965は16・48ページの『モメンテ』フォルムスキーマに一致しています。I(k)-モメンテとD-モメンテはまだ含まれておらず、そしてI-モメンテで終了します。
 全集CD7Bに収められた、このバージョンからの抜粋はI(m)-モメンテの後で始まってI(d)-モメンテで終わります。

ヨーロッパ・バージョン1972のフォルムスキーマ

<図>略
このバージョンでは、I(m)-モメンテ(拍手モメンテ)はインターバルの前に後向きに、同様にインターバルに続いて前向きに演奏されました。

ドナウエシンゲン・バージョン1965のモメンテの順序

<図>略
全集CD7Bに収められた抜粋はM(m)で始まりI(d)の後で終わります。

ヨーロッパ・バージョン1972のモメンテの順序

<図>略
90度回転している文字は他のモメンテからのEinschu"be(挿入部)を示します。

M-モメンテの順序は1965年と1972年の二つのバージョンにおいて逆転しています。

1965[I(m)]M(m)-MK(d)-M(k)ma"ryjah/ra"myhaj-MKm/k-M1ページ/mrya"/ryma"/3ページ-MD(k)a"mryka/yrkama"-M(d)m2-1a"ka/m1-2a"ka-MDmirak/rikam[I(d)]

1972[I(m)]MDkarim/makir-M(d)kam1-2a"/kam1-2a"-MD(k)akryma"/a"mkary-M1ページ/ma"ry/ryma"/3ページ-MKk/m-M(k)hiyra"m/jahyma"r-MK(d)-M(m)[I]

Einschu"be(挿入部)の全く異なる配置は、1965年と1972年の二つのモメンテの順序の横に書かれた文字の比較に見ることができるように、この結果によるものです(モメンテの四角の中の垂直線は他のモメンテからのEinschu"beが挿入できる「隙間」を示します)。

合唱

四つの合唱グループそれぞれには少なくともソプラノ3名、アルト3名、テナー3名とバス3名が必要です。
 あらゆる既知の種類の発声法に加えて、合唱グループは足、手と口による短いもしくは連続的なノイズを発します:彼らは足踏みと手拍子でドラムとシンバルのビート(フェルトと木のバチを使用)を補って変化を与えます;彼らは持続させた足のタップと膝を手で叩く音でprrr----(無声音)のような音響と、トムトムのリムとヘッド上でのドラムスティックのロールと、ボール紙の筒の指で叩く音と、そして低音域でのトランペットとトロンボーンの急速な音高の反復と組合わせます。足の引き摺りと手の擦り合わせはドラムヘッド上でドラムスティックとブラシを擦る音に、そして長く響かせた子音に似た響きです。同じく、指と舌によるいわゆる「クリック」(一つずつそして急速な連続で)は音色推移と話声と器楽音響の間の音色の類似で使用できる音色の変化を与えます。
 無声音の子音(例えばはっきりと聴き取れる音高を持たないノイズ)とはっきりと限定できる音高を有する母音との間の音響のスケールもあります。スケールは無声音の吐息に始まり、そして呼吸、ささやき、くすくす笑い、つぶやき、話し、叫び、絶叫、笑い、歌唱を通じて続きます。

合唱の歌手は扱いやすい楽器も演奏します。(26-29ページの写真を参照)

合唱の楽器

第一の合唱は蓋の接着された調律されたボール紙の筒を八つとタンバリン(ゴムのスティックかときどきは手で演奏される)を四つ持ちます。
<写真>略

第二の合唱はさまざまな音高のクラベス(互いに打ち合うかトレモロされる円筒形の堅い木片)を12ペア持ちます。
<写真>略

第三の合唱はショット・ボックス(プラスチックの箱、石鹸箱、など、少量の鉛製弾丸が入っている;これらは激しく揺らされたり絶え間なく振られたりマラカスのように振り廻されたりする)
を12個持ちます。
<写真>略

第四の合唱はさまざまな音高の金属管(打たれたり連続的にトレモロされる自動車のスパナ)を12ペア持ちます。
<写真>略

楽器

使用される楽器は:とても緩やかな音色調整が可能な音域ストップを備えた電子鍵盤楽器2台(ケルンラジオ放送局にハモンド・オルガンとロワリー・オルガンがありました);さらに、4トランペット、2テナー・トロンボーン、そして2バス・トロンボーン。
 3人の打楽器奏者は大きなタム・タム(直径:160センチ)1つ、小さめのタム・タム(直径:85センチ)1つ、ヴィブラフォン1台、トムトム3つ、さまざまなサイズ(直径が40から82センチの間)の大きなシンバル5枚、音域の範囲内でほぼ同じインターバルの異なる音高の小さなシンバル5枚<譜例:略>と1.5オクターブの音域の範囲内であらゆる音高を演奏できる腎臓型ヘッドの特殊なドラム、とジングル付きタンバリン3つ。

打楽器奏者I

仔牛皮ヘッド(プラスチックヘッドではなく)の『モメンテ』のためのデリ社製腎臓型ドラム。
<写真>略

打楽器奏者III
『モメンテ』のための大きなタム・タム(パイステ社製)。
<写真>略

[翻訳:山下修司]