「よふかしのうた」に感化されて夜行性少年になったけど別に吸血鬼はいなかった話。

はじめに

高校をやめてもうすぐ一年になる。正確には通信転入でそのまま進級したのでやめたって言い方は違うかもだけれど、高2の冬に自称進やめて別に何者にもなれないまま17〜18歳を空費していると考えると普通に現実が怖い。
よふかしのうたと出会ったのは3年前、15の夏だった。確か1〜4巻を纏めて購入して、そっからあとはほぼ全部発売日に単行本買って読んでる。

あのときの俺は夜守コウだった。

今思えば馬鹿馬鹿しい話だが、中3の自分にとって、たしかに自分は夜守コウだったんだと思う。小6のときに人生で初めて告白され、スキが分からずに振ったあのときの自分とコウはたしかに重なるものがあった。
コウは夜に逃げて七草ナズナと出会い、俺は中学受験で逃げて結局そこでも失敗した。
だから俺も夜に逃げるようになった。
深夜徘徊は間違いなく楽しかった。吸血鬼がいようがいまいが、近所の団地が静まり返ることで生じる高揚感は変わらないし、夜の空気の匂いも変わりやしないから。
でも吸血鬼のいない深夜徘徊は、結局身を滅ぼすだけだったんだと思う。一年と半年ほど深夜徘徊を続け、ときに補導されときに一人で花火をして。あまりにも楽しすぎたんだ。コウがいろいろありながら夜をみんなで闊歩するなか、俺は吸血鬼のいない一人の夜を楽しんでいた。楽しかったけどだんだん独りが染み付いて、寂しさの感度も忘れていく。そんな夜ばっかだった。

だんだん高校に行けなくなっていた。

夜更かししたからじゃなくて、何故か行けなかった。学校に行ってしまえば楽しいのに、布団を出ることが怖くて怖くてたまらない。結局出席日数が足り全日制をやめ、通信制高校に転校することになった。本当は高校一留する予定だったが、奇跡的に単位が足りて高校三年生になった。けどもう学校に行くことはない。
夜守コウは学校にいった。俺を夜に誘った張本人は、俺を差し置いて学校に行ってしまった。キツかった。なんでだよ。もう僕は夜守コウじゃないんだ。コウは布団から出るのが怖くなんてないんだ。気づいたら4つも年がはなれたコウは、俺より何杯も大人で、ちゃんと子供をやっているように見えた。親しい友人の消滅も、彼は受け止めていた。僕だった夜守コウは、もう遠い存在になってしまった。あと二巻。夜守コウの物語を、僕は傍観者として見るしかない。



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