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Tamamann先生のからあげホラー

からあげホラーは事前に「二週間目の暗黒固茹で卵 」を読まれておくと一層楽しむことができます。読まなくてももちろん楽しめます。

No.1
お品書き 油の唐揚げ 300円
「油の唐揚げって何」「今日はサラダ油だよ、頼む?」酔った勢いで面白半分に注文すると、店の親父は、さっきまで天ぷらを揚げていた鍋の油を丼に入れて目の前に置いた。
「熱いうちに飲みな」
目だけは笑っていない笑顔の親父がじっと僕を見つめている。

No.2
何者かに監禁されて「この先一ヶ月間、うんこの味の唐揚げか、唐揚げの味のうんこか、どっちを食べるか選べ」と言われたぼくは、死んだほうがましなんじゃないかという気持ちになりかけている。

No.3
学校から帰ってくると飼っていた鶏のピー子がいなくなっていた。お母さんはなぜか僕を避けている。そしてその日の夕食は唐揚げだった。僕は泣きながらネット通販で買ったゾンビパウダーでピー子を蘇らせることに成功したが、生きた唐揚げとして蘇ったピー子はゆで卵しか産まない。

No.4
学校から帰ると生きた唐揚げのピー子がいなくなっていた。なぜかお母さんは僕を避けている。その日の夕飯はお父さんの給料日前だというのに寿司だった。僕はテレビのスイッチを入れる「さて、次はなんとゆで卵を産む…ザッ…7時のニュースの時間です」お母さんが番組を切り替えた。

No.5
「ほらよ」といって差し出された熱々の唐揚げをぼくは慣れない左手で食べ始めた。
食べ終わると男は「あしたからは右足だ」と言ってぼくの右足を切り落とし始める。

No.6
テーブルに出されたゆで卵の殻を剥くと唐揚げの匂いが鼻腔をくすぐる。孵化寸前の卵の殻を割らずに中の雛だけを唐揚げにする中国料理、在殻炸雞だ。あまりにも罸あたりな料理なため、食べると一年寿命が縮むとされているが、常に予約で一杯だ。かく言う私も5年寿命を縮めている。

No.7
明日彼女は出荷される。昨日面会したときの彼女の最後の言葉が耳からはなれない。食糧難となったこの時代、死刑となった人間は食料として提供される。君を助けたかったが僕はしがない弁護士の卵だ。「私が出荷されたらあなたが私を食べて。あなたの好きな唐揚げにして……」

No.8
山で罠にかかっていた鶏を助けたらオレが猟師に監禁されてしまった。水しか飲ませてくれない。気がつくと足元に卵があった。それから一週間、一日一個の卵のおかげで生き延びることが出来たがさすがに飽きてきた「唐揚げが食いてえ」次の日。唐揚げがあったがそれが最後だった。

No.9
謎の老婆に騙されて性転換する唐揚げを食べた俺は女になってしまった。面倒なのでこのままでもいいかと思ったが、戻らなければ余命3ヶ月だという「ひひひ、戻るためにはこのゆで卵を……」そこで老婆は事切れてしまった。はたして食べるのか、入れるのか。

No.10
弁当の唐揚げを湖に落としてしまった木こりが畔で佇んでいると湖の中から女神が現れた。女神は「落としたのはこの金のゆで卵ですか、銀のゆで……」「オメェ頭おかしいんじゃねえのか」手にした斧を女神の頭に振り落とすと、血しぶきとともにこの世界から物語が一つ消えた。

No.11
一生に一度出会えるかどうかという食べると本当に七年寿命が延びる黒たまごと、本当に七年寿命が縮まる唐揚げが現れた。両方食べればプラスマイナスゼロだ。これは食べるしかない。ということでまずは熱々の唐揚げから……薄れゆく意識のなかで、わしは自分の愚かさを呪った。

No.12
緊張したときは手のひらに唐揚げって書いて飲み込むといいよと教えてくれた彼を痴情のもつれで刺し殺してしまった私は落ち着くために手の甲に茹で卵と書いて風呂場で彼の体を解体し始める。

No.13
天ぷらを揚げているとアシダカグモが鍋に飛び込んで唐揚げになった。クモは卵を抱えたままだった。足を滑らせたのだろうか……それとも絶望する未来を察知……そんなことを考えていると、ごごご。いままで聞いたこともない大きな地響きが鳴り響いた。

No.14
隣村で疫病が流行り、多数の死者が出たおかげで二十年ぶりに唐揚げ祭りを開くことができた。しっかりと中まで火が通っているだろうか、手に油握る奇祭だ。大量の唐揚げを食べて、のどの渇きが絶好調に達したところで茹で卵がふるまわれる。

No.15
前回の即身仏ツアーはあやうく自分が即身仏にされかけたが、同じツアー会社でもこれだったら大丈夫だろうと、唐揚げツアーに参加した。そしていま、卵パックがおすすめですよと言われて卵溶液を全身に塗られている。

No.16
卵から生まれた雉太郎はおばあさんの手作りの唐揚げを持って鬼退治に行きました。犬、猿を仲間にし、雉に唐揚げをあげようとしたところで「お母さん?」と雉太郎。雉太郎の手にした唐揚げを見て「あなた!」雉の目から涙がひとしずく落ちました。

No.17
「むむっ」買ったばかりの唐揚げを口に入れて驚いた。続いておでんのゆで卵を口に入れる。「こ、こ……これは母さんの味だ」三十年ぶりに帰国して入ったコンビニで母親の味に出会うとは思いもよらなかった。母が死んで三十数年、私は思わず涙した。いつでも味わえる母親の味に。

No.18
せっかく作ってくれた彼女に悪いので「蛙の肉って初めて食べたけど、唐揚げにすると美味しいね」と笑顔で答える。実はパサパサしていてあまり美味しくない。でもこのタピオカドリンクは初めて飲んだけど美味しいな。ニュルッとしていて噛むとなんか口の中で動く。

No.19
卵から生まれた雉太郎は鬼退治に出発して、犬、猿、雉(母親)を仲間にしましたが、鬼退治の前に父親を唐揚げにしてしまった鬼婆に鉄槌を下すために一旦自分の家に引き返すことにしました。

No.20
「このフライビーンズすげえうまい」と彼が美味しそうに食べているので、それが今朝台所で大量に発見したゴキブリの卵をどうやって処分しようかと考えた末に唐揚げ粉をまぶして油で揚げたものだということは心に秘めておこうと思った。

No.21
前回の唐揚げツアーではあやうく自分が唐揚げにされそうになったのでおとなしく箱根ツアーに参加することにした。箱根唐揚げを食べて満足し、大涌谷で黒たまごを食べていたら噴火が始まった。硫黄の匂いがあたりに満ちていく。意識がうすれていく。

No.22
「これが唐揚げの木です」彼はそう言った。「春になると唐揚げが咲き、香ばしい匂いがするんですが、そんなに美味しくないんです。おまけにそのあとに卵がなるんですけど早めに収穫しないと腐り始めて硫黄の匂いに。天然記念物指定されちゃったので枯らすわけにもいかなくて」

No.23
「この唐揚げの樹の下でお父さんと初めてであったの。頭の上に落ちてきた卵をキャッチしてくれたのよね、あの人」と嬉しそうに話している母は最近認知症が酷くなっている。もっとも、嫌な思い出だけがすっぽりと消えているのが救いだ。そしてそんな母は私が誰なのか忘れている。

No.24
この樹の下で意中の人の頭上に落ちてきた卵をキャッチできると結ばれる。そんな唐揚げの樹に彼女とやってきた。彼女もなんとなく気もそぞろ。口には出さないけれども落ちてくるのを待っている。「おっと危ない」振り向くと、おっさんが僕の頭上で手を伸ばして卵を掴んでいた。

No.25
卵から生まれた雉太郎率いる鬼退治の御一行。雉太郎の父親を食べてしまったことで罪悪感に悩む犬と、もう一度あの唐揚げを食べたいなと思っている猿は犬猿の仲。雉太郎が家来の不仲に悩んでいると「お前の弟か妹が生まれたよ」と雉。父親は誰なんだと雉太郎の悩みが増えました。

No.26
「指詰めて貰おうか」若頭はそう言った。ミスしたのは俺だからしかたない。詰めた指を唐揚げにして飼い犬に食わせるのが若頭の趣味だ。「これでも食って栄養つけておけ」詰めたあとで若頭は卵をくれた。翌日、今まで吠えて懐くことのなかった若頭の飼い犬が俺の手をペロペロと舐める。

No.27
頬に唐揚げのような瘤を持った隣家の爺さんが、鬼に瘤を取ってもらったと喜んでいた。ならワシも自分の頬にある瘤を取ってもらおうと鬼のところへ。しかし逆鱗に触れてそのとき鬼が食べていたゆで卵をつけられてしまった。しばらくしてその卵は腐り始めたが取ることは出来なかった。

No.28
前回は箱根ツアーに参加してあやうく死にそうになった。やはり一人旅は危険だ。新しい出会いを求めて唐揚げの樹ツアーに参加した。落ちてくる卵で出会いがあるらしい。唐揚げのいい匂い。しかも卵はうまいな、ちょっと太りそう。あ、もう帰りの時間だ。バスに乗らなければ。

No.29
熱々の唐揚げを口に入れると「熱っ」と言う叫び声が口の中から聞こえた。鏡で口の中を見ると、小さいおじさんが熱々のおでんのゆで卵を食べているところだった。「よかった私のせいじゃなかった」私は安心して唐揚げを食べる。

No.30
「なんだ、お前」「なによ」隣家で夫婦喧嘩が始まった。窓を開けると唐揚げが飛んできた。おっと次は卵だ。隣家の喧嘩は食事時に始まる。テーブルの上の料理を手当り次第投げ飛ばすのだ。お、サラダが飛んできた。いいぞもっとやれ。もうすぐ食事代が一食分浮く。

No.31
魔女の呪いで唐揚げにされてしまった王子。あわや魔物に食べられそうになるのだが、そこに転がり現れたのはこれまた魔女の呪いでゆで卵にされてしまった国一番の剣士。しかし卵なので手も足もでなかった。憐れ王子は魔物の胃の中へ。

No.32
道端に張り紙が貼ってあった。「ここに生ゴミを捨てたあなたへ。生ゴミに入っていた唐揚げと卵は腐っていました。それを食べたうちの飼い猫は死にました。あなたが殺したのです」

No.33
鬼にゆで卵をつけられてしまったワシは腹いせに隣のじじいの飼っている犬をぶち殺してやった。隣のじじいは涙ながらにその犬を火葬して、灰を庭先の木の下に埋めた。たしか瘤ができたころに飼い始めた犬だ、ざまあみろ。翌日、隣から唐揚げのいい匂いがしてくる。隣の木をみると……

No.34
すっかりやさぐれてしまった卵から産まれた雉太郎。向こうからおじいさんをみて、ジジイでも成敗するかと、腰につけた唐揚げをおじいさんにぶん投げました。すると雉太郎の投げた唐揚げはおじいさんの頬にぴったりとくっついてしまいました。犬は仲間から離れる決意をしたとさ。

No.35
「落ちてきた卵をキャッチしてくれたのがお父さんとの出会いよ」母と歩いていると、唐揚げの樹の下で知らない母娘が会話が聞こえた。親のイチャイチャ話なんて聞きたくねえよ。その点うちの親は楽だ、自分のことは話さない「そういえばあんたを見つけたのはほらあそこの橋の下よ」

No.36
貧民にサファイアなんて宝の持ち腐れじゃないか。幸せの王子も所詮はおぼっちゃまさ。まずは食いもんだよ。栄養のある卵が一番だよ。さてこの貧乏人に卵を恵んでやるか。うーん、もうじき産まれる、うがっ。「ママ、鳥を捕まえたよ。今晩は唐揚げだ」

No.37
「唐揚げ定食と卵丼」あの人はいつも一人で昼時にやってきて、そんな注文をする。私は意を決して聞いてみた。「鶏肉と卵を一緒に食べたいんだけど、親子丼って残酷なネーミングじゃないですか。別々だと平気なんですよね、ははは」軽薄そうに答えた。

No.38
「唐さん、揚男さん」「玉子さん、僕の熱い思いをどうか」「はい、ああ、熱い、私の中で何かが変わっていく」数年後「玉子さん、どうして僕たちのは子供ができないんだろう」「そりゃあんたにゆで卵にされたからだよ、けっ」

No.39
くしゃみしたら鼻から卵が飛び出したんだ。割ってみるとちゃんと黄身があってな。こんなことなら孵化させるべきだったよ。後悔している」子供の頃の父の言葉を思い出したのは、いま私の目の前に卵があるからだ。早速唐揚げの作り方を調べる。私は父と違って先の先を考えて行動する。

No.40
カラオケ行こうを、唐揚げ行こうと聞き間違いして旨いとこ知ってると言ったら、上手いこと知ってると聞き間違いされてなんだか上手くいった彼女に浮気がばれて卵を入れられようとしている。

No.41
虫歯が痛みだしたので歯医者に行ったらレントゲン取りますから口を大きく開けてくださいと言われ、口を開けていると卵を突っ込まれそのままレントゲン撮影。できた写真を見て先生は、うーん唐揚げだねえと見せてくれたが確かに唐揚げだ。あまりの衝撃に痛みも忘れた。

No.42
「つまらないものですがこれをどうぞ」取引先の鶏卵生産会社の社長が箱を差し出してきた。「賄賂ですか。そういうものは受け取れませんよ」「単なる唐揚げですよ。突然の契約破棄で会社も立ち行かなくなりました。可愛い子どもたちを是非とも食べてもらいたいものですな。あなたに!」

No.43
「遅刻しちゃう!」唐揚げを咥えて急いで学校に走る私。角を曲がったところで誰かとぶつかって尻もち。はっ、恋の予感。ずれたメガネをなおしてぶつかった相手を見ると、地面に落ちて割れた卵を見つめる怖いおじさんが立っていた。「なにさらしとんじゃい、弁償せんかい!」

No.44
「ここの唐揚げってフォーチュン唐揚げって言って、当たりだと小さな鶉の卵が入ってるのよ」そう言いながら彼女は大きな口を上げてガブッとひと噛みするとガリっと音がして彼女の前歯が折れた。陶器の卵だとは思わなかったらしい。幸運と不運でプラマイゼロだねと言うと殴られた。

No.45
金の卵を産むというガチョウをうっかり殺して唐揚げにしてしまった。ネット通販で買ったゾンビパウダーで蘇らそうとしたけれども無理だった。泣く泣く唐揚げを食べたのだが、翌日裂けるような痛みとともに金のうんこが出て、その勢いで便器が割れた。

No.46
ブリティッシュロックバンドKARAAGEのメインボーカルがライバルバンドYUDETAMAGOのリードタンバリンとして電撃移籍するという発表があった夜、私のHow to Make Karaageのyoutubeがバズったあげく炎上してBANされてしまい、収入を失ってしまった。旅に出よう。

No.47
「最近ごみ集積場のふきんがなんだか卵の腐ったような匂いがするのよ」マンションの住人から苦情を受けた管理人が確認しに行くと茶色っぽい塊がごみ集積場から飛び出してどこかに行ってしまった「ピー子……」管理人の脳裏に子供時代の記憶がよみがえった。

No.48
この星にはかつて、ヒトと呼ばれる生き物がいたらしい。なぜ滅んだのかはわからないが、唐揚げが先か卵が先かという問題に最後まで答えを出せなかったようだ。しかし我々は答えを見つけた。ほらそこで唐揚げが卵を産んでいるだろう。唐揚げが先なのだ。

No.49
「サンクスギビングでケチって冷凍唐揚げを油の中に投げ込んだら水蒸気爆発とともに散弾のように唐揚げが飛び散って、その時に出来たのがこの穴さ」額の卵ぐらいのくぼんだ穴を見せてくれた祖父だが、浮気がばれて怒りの祖母の貫手でできた穴であることを僕は知っている。

No.50
人食い婆から逃げるために和尚から渡された三枚のお札を使った。一枚目は焦って破いてしまった。二枚目はお腹が減っていたので唐揚げを出してしまった。もうダメだ背中に気配を感じる。「二週間目のゆで卵」叫んで札を投げる。腐った卵を食って苦しむ婆を尻目に逃げ切ることができた。

No.51
若頭が飼い犬に唐揚げをあげていた。「おはようございます」「おう、なんだ、顔色が悪いな。ほら、卵でも食って栄養つけておけよ」と卵をくれた。「犬に唐揚げはよくないと思いますよ」「お前は何を言っているんだ、よし、明日の唐揚げはお前にする。指詰めろ」

No.52
今まで数々の出会いを生んだ唐揚げの樹も寿命を迎え、切り倒されることになった。ようやく唐揚げ臭さと腐った卵の匂いから開放される。地域の住民の顔には安堵の笑みしか浮かんでいない。チェーンソーの爆音とともにミリミリと樹は倒れていく。そんな話を書いたらボツにされた。

No.53
「もう無理です。これ以上からあげホラーは書けません」「お前は何を言っているんだ。栄養不足か。ほら卵でも食って栄養つければまだまだ書ける」「うぐぐ……」「どうした。もっと食え……あ、くたばっちまったか。まあいいさ。つぎのからあげにつづく誰かを攫ってこよう」

(了)

おまけ

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いくつかの話は他の話とこんな感じで微妙につながっています。

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