いまなぜかこの本

吉本隆明 『アジア的ということ』
         に関するノート総論

☆アパシー君「いやあ、おじさん、ひさしぶり、生きてた?(笑)今回、澤村さんという人が、とても精緻に天皇制を支えてきた宗教である神道や天皇制の中身に具体的に踏み込んで、話してくれたのを読んで、ちょっと表題のことについておじさんと話をしてみたかったんだ。」

★雑誌『曳航』のおじさん「澤村さんの投稿、ぼくも読んだよ。ただ神道や天皇制に対するイメージは、かなり違うけどね、この人の言わんとすることは、よく理解できる。でもおじさんなら世界史という概念の中に、神道や天皇制を置いてみたいね。日本の神道とその祭主である天皇は、おそらく弥生以前の農業社会の精神的な主柱で、1960年代に入るまでは農業が、日本社会の主要産業だったから、あらゆる意味で文化の中心に鎮座していたんだよね、ただそれ以降は、ある意味段々、産業としても、日本人の意識の中でも主役の座を他に明け渡していくんだ。」

☆アパシー君「ほら、出たよ、それを聞きたかったんだ、おじさんのいう世界史って概念、ヘーゲル、マルクス系統の極めて良くできた認識装置。(笑)
日本の天皇制は、ヘーゲルの世界史の概念でいえば、『アフリカ的』に続く『アジア的』という空間的、時間的な場所に入っちゃうていう話でしょ?いまの日本は、空間的にはアジアだけど時間的にはアジア的な段階やギリシャやローマ時代の『古代的』な世界もゲルマン的な世界も完全に離脱して他の先進国と同様に現在の最先端部分に突入したってことなんだよね?具体的にはサービス業中心の高度な資本主義社会の末期的な段階に入った、その時の観点としてのMerkmalは、産業構成なんでしょ。2020年の総務省の資料を使用した統計では、農業は産業構成比でみると、第一次産業が全体の3.2%(そのうち農業、林業は、3%)だから、それ以下ってことになるよね。ちなみに第二次産業は、全体の26.3%、第三次産業は、68.2%になってるよね。」 
★おじさん「そこまでわかっているなら、おじさんに聞くことはないんじゃないの?アパシー君も成長したね、それから澤村さんは、神道という宗教の祖型というか原型についてもかたっているよね。そこについてはなにか意見がある?」

☆アパシー君「日本の各地に残る巨岩や大樹に対する信仰が、神道という宗教の原型みたいな話でしょ、感覚的にはよくわかるけど、ぼくは天皇制の生まれた時代よりもっと時間的に遡らないと行きつけないプリミティブな宗教感情の在り方なんじゃないかと思うな。つまりそれらは、おじさんが推奨する認識装置=世界史という概念の段階なら『アフリカ的』という場所に入るんじゃないの」

★おじさん「いや、恐れ入谷の鬼子母神だ、こうやって若者は成長していくんだね、感心したよ。でもおじさんは、もういい加減この世界史という認識装置、その概念というか理念を組み換えていかなければならないと、最近いつにない焦慮に駆られてるんだ。若い君ならぼくの言ってることがわかるでしょ?」

☆アパシー君「もう若くもないけどさ、おじさんも
もう還暦を過ぎちゃったんだってね。
 要するに終わりが始まり、始まりが終わり、ってことなんだよね。全体は細部にあまねく在り、細部にははじめから全体がちゃんと構造として備わっている。ぼくらが往くことが、還えることと等価であるように、前に進んでいかなくてはならない、とか、そういう認識方法を見つけることが思想的な課題として現出してきた、ナンテね。(笑)」

★おじさん「なんか君はとても食えない奴になっちゃったね、方法論の課題はそうだけどさ、そういう抽象的な韜晦はやめて、もっとストレートに具体的に言わないとわかんないよ。(笑)」

☆アパシー君「9.11、3.11、香港、ミャンマー、パレスチナ、Covid19。その心は?これでいいんでしょ。」

★おじさん「これら庶民にふりかかった、不可解で残酷で陰惨な出来事は、すべて人類前史の末期的な現象だよね、いまぼくらの前史が終わろうとしているんだ、そしてそろそろ人類の後史が始まろうとしてる。その姿をもっと明瞭にして先に行きたいんだけど。つまり具体的に言うと、ようやく世界の現在は、奴隷制社会が終わろうとしている時期にさしかかった、というわけさ、また、3.11にからむ原発事故を含む様々な出来事が、同時に地球の有限性についての課題をぼくらに意識させたんだよね。」

☆アパシー君「おじさんは、これはすべて起こるべくして起こったことだ、とか言いたいんでしょ。でも長くなるからさ、ひとまずここは、アメリカの先鋭的な詩人の意味深な言葉を上げて、いったん終わりにしない?
『これがこの世の終わり方、核爆弾じゃなくて湫訴でチョン』(笑)」

★おじさん「キザな奴だね(笑)じゃあ、次は『アジア的ということ』に関するノートの各論でまた付き合ってもらうかな。」

☆アパシー君「ヘイヘイ」

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