見出し画像

価値観が合えば良いとも限らない

友だち関係にまつわる話が続いていますがご容赦願います。それだけ今僕のなかで人間関係というテーマがホットだということです。日記をつけていると、自分を俯瞰して見れるのがよいですね。

さて、昨晩僕は初めましての人に会ってきた。会わせていただいた。車趣味を通じてTwitterで繋がり早数ヶ月の彼、いつかオフで会ってみたいと常々思っていた。スケジュールの合間を縫って日程調整をしていただいたものの、僕の身内にコロナ陽性が発覚し、約束は一度お流れに。改めて予定を合わせ、昨日ついに邂逅を果たしたというわけです。そもそもこの片田舎で友だちをつくるという、SASUKEのそりたつ壁よりも攻略難易度の高い壁を乗り越えたのだから、僕たちはロス五輪に出場する資格があるのかもしれない。あいにくパスポートを持っていないので、そこは山田勝己に譲るとして、僕はついに友だちをつくることに成功した。少なくとも僕が一方的にそう思っても許されるくらいの関係ではあるはず。もちろん、いくらTwitterやSNSで相互フォローの状態にあっても、実際にリアルで会ってみたら思いのほか話がはずまないことだってある。だからこそ会うまではとても不安だし、会ったことによってこれまでのTwitter上での関係が崩れてしまうのも怖い。なまじネット上で関係を築いてしまったが故のリスクが生じる。大規模掲示板などにある突発オフ板で、”レスして5秒で即オフ”みたいなノリであれば逆に謎の安心感もある。

やはり何であれ積み立てたものが崩壊するのは恐ろしい。だから僕は彼に会って話をするその瞬間までドキドキであった。しかし、そんな不安が杞憂であると悟るのに時間はかからなかった。大型スーパーの駐車場というカントリーライクな待ち合わせ場所に到着し車内でソワソワしていると、なんと気の利くことに彼は僕の車に横付け駐車してくれた。広い駐車場で他にも車が何台も停まっているので、互いに到着したもののなかなか落ちあえないというトラブルは発生せずに終わった。そして車を降り軽く挨拶をすませ、ものの10分〜15分ほどで緊張がほぐれた。どうも僕の駄文まみれの日記をいくつか読んでくれていたそうで、下手に飾られた言葉で自己紹介をする必要がなかった。互いの価値観や性格を、会うまでに事前に知っておけるというのがTwitterやSNSの良いところだ。普段の投稿を見ていれば、人とナリが文字からおおよそ見当がつく。少なくとも奇人か常人かくらいは判別がつく。だから、オフで会うのが初めてでもお互いのことをわりと把握しているという奇妙な現象が起こるわけだ。実際に話してみると、彼とは思っていた以上に感覚がマッチしていた。互いにそれを暗黙の了解で感じ取ったようで、初オフとは思えないほど話ははずんだ。次回はコーヒー屋にでも行こう、車を見に行こう。なんてざっくりと今後の予定を立て、彼とおわかれをした。

帰りしな、僕はこのたびのありがたい出会に満足すると同時に、一抹の不安をおぼえた。きっと、趣味にしても価値観にしても、思った以上に感覚が合い過ぎたからだろう。たかだか1〜2時間喋っただけで、一体彼の何を知ったつもりでいるんだという話ではある。僕がみたのは彼のほんの一部分にすぎないでしょう。けれど、一部分でも自分と適合し過ぎるというのは、ある種恐怖でもある。幸せだと不安に感じ、不幸だと安心する、そんな天邪鬼な感覚と似ているような気がします。幸せであってはならない、他者と分かり合ってはならない、不幸せで、孤独であるべきだ。そんな歪んだ思想が、僕の純粋な喜びを邪魔する。自分のクローンがつくられると、いずれそのクローンが自分のことを殺しにやってくる。これはとても有名なお話です。自由意志を持つ生命体はやがて自我を有し、同一個体の存在を許さない。自分と同じ人間がいたとすれば、自身のアイデンティティを守るために殺意を覚えるのは必然なのかもしれません。クローンは極端な例ですが、自分と似たような人間に出会った時、一見すると喜びや共感といったプラスの感情を抱きそうですが、意外とそんなに単純でもないのかもしれません。自分との類似点を見つければ見つけるほど、仲間を発見した嬉しさを感じる裏で、自身の尊厳を傷つけられているような喪失感をおぼえるのです。

彼は言いました。「毎週会ってくれなきゃイヤイヤな恋人はきつい(意訳)」と。それを聞いて僕はほっと一安心したのです。僕は究極自分の時間なんてなくていいから、大好きな人と片時も離れず一緒にいたいと思っています。同類だと思っていた彼との相違点が見つかり、安堵したのです。恋愛観が異なろうと、友だち同士の付き合いにはまったく支障はないでしょう。なので、関係のないところはどんどん違う思想を持っていてほしい。そんなふうに勝手な願望をいだく僕を、彼は許してくれるのでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?