デジタルデトックスなんて無い
デジタルデトックスという言葉をここ1〜2年でやたらと目にするようになりました。こういう言葉が広く使われるようになるということは、それだけ今のネット社会に辟易している人が多いということでしょう。実は40年ほど前から「テクノストレス」という言葉は存在していて、コンピュータなどの使用で引き起こされるストレス全般を指し、SEなどの職業病だったそうですね。SNS社会によるストレスや悩みもその延長線上にあると思うんです。僕も物心ついたころからネットを使っているので、かれこれ20年近くの付き合いになりますね。年々ネットは便利さ快適さは増していると思いますが、同時に窮屈にもなっているなと感じます。矛盾しているようで、これらは共存し得るのです。ということで、昔に比べてストレスが溜まることも増えました。いよいよ「デジタルデトックス」の出番か?といったところですが、僕はデジタルデトックスに意味があるのか甚だ疑問なのです。スマホ中毒だから、家にスマホを置いて散歩に出掛けてみる、とか、スマホを持たずに海や山に出掛けて自然を感じる、とかですかね。要はスマホを見ない一定時間ないしは1日を設けて、ネットから吸収した毒素を排出しましょうということ。一見意味ありげですが、僕は逆効果な気さえします。
たとえば、ヘビースモーカーの人が1日だけ禁煙したとして、それって意味あるでしょうか。まったくない、とは言い切れませんが、かえってストレスが溜まるように思います。禁煙の最終目的は「タバコを吸わなくなること」なので、徐々に本数を減らすなどして、タバコを吸わない生活を目指していくものです。であれば、スマホ・ネット依存についても、最終目的は「ネットをほぼ見ない」だと思うんです。もちろん、今やネットは生活に欠かせないインフラの1つですから、完全に断ち切ることはできません。なので、「必要な時以外は見ない」と自分でブレーキをかけられるような状態が望ましいですね。デジタルデトックスで丸1日ネットを見なかったとしても、その次の日からまたネット漬けになっていては何をしているのやら分かりません。
少し話は変わるのですが、僕はかつて音ゲーに青春を捧げておりました。そして、音ゲー界隈には愉快な文化がたくさんあります。そのなかの1つ「引退詐欺」をご紹介しましょう。宮崎駿なんかもそうですが、「引退する」と言っておきながらすぐに撤回することです。「音ゲーマーが引退とはなんぞや」と思われるかもしれないので、軽く説明を。実力が伸び悩んだり、思うようなスコアが出せなくてイラついた時に「はいクソゲー、もうこのゲーム2度とやりません」とか「ゴミゲーなので今日で引退します」とか罵詈雑言を吐き散らし、高らかに「引退宣言」をするのです。なかには「20XX年、◯月◯日をもちまして、このゲームを引退します」などとご丁寧に一筆入れる者もいる。しかし後日、早ければ翌日には、何事もなかったかのように音ゲーに勤しむ彼らの姿が。そんなことが日常茶飯事なのです。音ゲーに限らず、あらゆるゲームの界隈で存在する文化でしょう。本当にそのゲームを辞めてしまう人というのは、わざわざ辞めることを宣言しないのです。徐々にフェードアウトしていき、気づいたらプレイしなくなっている。
話を戻しますと、わざわざ「明日はデジタルデトックスします!」と宣言しているようでは、当分ネット依存は解消されないでしょう。そうしてガス抜きをしつつも、結局はネットの海に溺れてしまう。本当にデジタルデトックスをしたいのであれば、スマホもPCも持たずに離島にでも行くしかない。しかし、そんなことは簡単にはできませんから、僕たちはネットという”網”に捉えられた状態からは逃げられない運命なのです。
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