マジックの本を称賛するだけの文章(Repertoire)

注意:この文章ではただ私が私の感じるままに、マジックの良書を褒めるだけの文章です。

タイトル: 『Repertoire』
著者: Asi Wind, John Lovick 
出版年: 2018年
ジャンル: カード他

『repertoire』はAsi Wind氏とJohn Lovick氏が2018年に発表した書籍で、Asi Wind氏の作品が掲載された作品集となっています。

Asi Wind氏はイスラエル出身のマジシャンであり、米国で活動しています。米国のテレビ番組「Fool Us」にも出演し、Penn and Tellerから賞賛を受けた才能ある方です。日本でもDVD『Three Card Routines』が大きな話題を呼びました。

本書はカードを中心に22作品が掲載されています。ひと作品ごとに丁寧に解説されており、文章には作品に対する愛が感じられます。作品全体の特徴としては、多彩な手段を活用していることが挙げられます。これは彼のショーやTV出演でも確認することができます。多彩な手段を用いて実現する強烈な現象が彼の魅力であり、新しさでもあります。
本書も魅力的な作品が多いため特定の作品を取り上げるというのは心苦しいのですが、この文章では特に「A.W.A.C.A.A.N」「The Trick That Never Ends」についてコメントしたいと思います。

「A.W.A.C.A.A.N」は彼の代名詞的な作品です。これは有名なACAANというプロットに対する彼のアプローチです。この作品を取り上げた理由は、まず本書において読むべき作品、読み逃してはいけない作品であると同時に、彼の情熱を感じる作品だからです。彼はACAANに対して大きな情熱を持っており、本書の中でも3作品掲載されています。また、類似のアプローチを活用した作品がもう一点、掲載されています。つまり、彼が情熱を注ぐプロットであると同時に、アプローチとしても彼の代表的なものであるということです。さらに、ACAANは派生作品が多いものですが、米国では厳密な、言い換えれば正統派のACAANを好む傾向にあります。本作品を最も有名にした一人でありBarglas氏をはじめ、Barrie RichardsonさんやKen Krenzel氏など多くのかたがこのプロットに挑戦しています。その中でも生まれた本作は、その新規性とクリーンさから多くの愛好家に好まれる作品となっています。そういった観点からも本作品についてまだ触れたことのない人は今すぐにでも触れてほしい一品となっています。

また、「The Trick That Never Ends」は強力なマジックが持つエッセンスを抽出したような作品です。この作品の中で紹介されている発想の原点である、Chan Canasta氏も素晴らしい奇術師でしたが、彼は本作品の中でその影響を自分の中に落とし込み、素晴らしいマジックに仕上げています。「The Trick That Never Ends」は説明ページとしても本書の中では短めなもので、現象も派手なものではないため、他の作品に目が移ってしまう可能性がありますが本作品には多くの重要な要素が詰まっており、驚くほど整理されていますので、ぜひ、一度読んだ後に先に進まずもう一度戻ってほしいと感じています。

本書では挿絵がすべてAsi Wind氏による水彩画であるという点も大きな特徴です。水彩画でありながら読む上で必要な情報は落ちておらず、本書の魅力を大いに盛り上げたものだと感じています。また、黒い革張りの見た目もあり、本として芸術性の高いものに仕上がっています。

まとめると、『Repertoire』はAsi Wind氏の作品をまとめた書籍で多くの良作が掲載されています。メンタル系のカードマジックは強力であるが故に、その中で重要なエッセンスを失わずに自分を表現するということが難しいものだと感じています。これらを高い次元で実現できている本書は強烈なマジックを求める読者にとって必読の一冊だと考えています。

以上が『Repertoire』について勝手に本を称賛した文章でした。この文章は決して書評ではありません。ただ褒めるだけの文章です。力不足ながらも、この本が持つ魅力の一片を伝えられれば幸いです。

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