カリギュラ・オーバードーズ 最後の帰宅困難者と真のエンディング

カリギュラ・オーバードーズをクリアしたのは八ヶ月前。フリープレイで前々から名前を聞いて気になっていたソフトだったためプレイしていました。

カリギュラは精神疾患を唄うRPGとして、認定心理士の資格を持つ山中Dの元作られました。非常に良く練られ、可愛く、愛おしく魅力的なキャラクター達。今の世の中に絶対必要なメビウスというシステムとその綻び。そして人の心に触れ、癒やすためにあらゆる言葉を使い分ける個人的に二次元一いい男の主人公。内心に触れる楽曲の数々。確かにゲームとしての出来は甘い所も多く減点法でいけば30点程のゲームですが、そのキャラクター及び触れていくアプローチの独自性でいけば百万点のゲームだと個人的に思っています。

さて、カリギュラを八ヶ月前にプレイしました。当時は自分も精神に疾患や障害を持ち、メビウスに来るにふさわしい人間だったと思います。だからロールプレイが非常に楽しめました。自分ならこの人にこうするだろう、こうすれば魅力が出るだろう、楽になるだろうという祈りを篭めながら選択肢を選んだものです。そしてどんどん魅力的になっていく帰宅部及び楽士の皆と出会えた事は二次元世界とはいえ自分にとってとても幸せなものでした。

ですが、ゲーム内ではメビウスに来る事になった自分は救われる事はありませんでした。自分はNPCの大人の吸っている煙草を見て自分の記憶を取り戻したところで笙悟と出会い、現実に戻って煙草を吸うためだけに帰宅部の活動に打ち込んでいくことになります。自分は癒やされる事はない、ただやれることだけやろうというある種の逃避だけでカリギュラの世界を生きていたと思います。

そしてメビウスでのトラブル、帰宅部と楽士の心の問題を緩やかにし、現実へと帰ってきました。小説版も読み、自分も彼女にそうしたであろう選択肢を選んだのだと思います。

ですが、自分だけは現実に帰っても未だに現実に帰った気がしないのです。そう、ゲーム内や小説で語られる事のなかった最後一人のキャラストーリー、自分のエピソード。

自分は笙悟と同じく年齢を重ねたニートです。必死にアルバイトや法律の学業、就職活動をこなそうと抱え込み、全て台無しになりました。自分は確かに特別に能力のある存在でした。ですが同時に特別な欠陥も抱えた存在でした。そして社会に否定され続け、社会に対して絶望し、病院に通っている途中でおそらくメビウスへと落ちたのでしょう。特別でなくては価値がなく、しかし欠陥があっては価値がない。自分の存在はそのはみ出しもの達の光とはなれど、自分の存在は社会において肯定されることはない。

途中自分はソーンに誘われ、Lucidという楽士になりました。特別ではなく全く何者でもない透明な存在となりたかったのでしょう。そして楽士達にも救われて欲しいという思いから、自分ではなく相手に向き合い透明に持てる全ての光という手段を使い彼らと向き合っていきます。自分が病院でされて嬉しかったことのように。

ともあれ、様々な問題をクリアし、現実に戻ったつもりがまったく現実に戻った気がしないのです。煙草は確かに旨い、が、それ以外が全く空虚なまま。何度も帰宅部の皆ならこういうであろう言葉を想像し、会うロールプレイを何度も行いました。

いつもどおり皆に軽く振る舞い、皆の出てきつつある魅力を味わう自分。ですがその自分には何もありません。

おそらく笙悟は自分の鬱屈とした空虚さに気づくでしょう。健やかに再び成長しようとし、人を救おうとする鼓太郎も自分を恩人と思い、手を貸そうとはしてくれます。琴乃やミレイは同じ社会的経済的に苦しい事に共感を覚えてくれます。他の皆も自分に対して力を貸そうとしてくれます。

ですが、会える人は自分を救う事はできませんでした。なぜなら僕は彼らや彼女らの中で特別になっているのだと思っているからです。皆が救おうとしているのはその特別な存在である自分だからでは?という疑念は解決しません。特別だから救われるのであれば、特別に欠点のある自分は救われる事もない。事実、彼らに対して成果は出してしまいました。だからこそ、自分が救われる事はありえなくなってしまったのです。

話はやや逸れますが、楽士の一人にStorkという人がいます。彼は親に煩悩を否定され続け、表向きは人に尽くす警察官となりましたがその否定され続けた煩悩が暴走し、ついに覗き魔となってしまいました。ですが、彼は自分との付き合いの中でその覗きという暴走を受け入れ、厳しく育てられたとはいえ生まれ持った善性も受け入れ、警察官でも覗き魔でもない自分自身になりました。そして罪を償うため拘置所に今はいます。自分の一番好きなキャラクターでもあります。

自分は定期的にStorkと面会しました。ある日、自分はStorkの社会的に、経済的に認められる公務員という立場への憧れをこぼします。その時Storkは気づきます。「部長を救うの個人ではなく行政であり、元警察官である自分の力は当たり前のように全ての者を守るためのものだった」と。

そこで、Storkは自分に対してこう提案します。「行政が君を補助してくれる制度をありったけ調べてみないかい。君は行政という社会によって救われるべきなんだ。君の光はとても優しいものだけど、その光の源に社会への憎悪や絶望、恐怖も感じる。元々の僕の力は警察官だけど、君を含めた皆を当たり前のように救うためのものだった。だから僕は君を当然のように救いたい。ただ君は社会に対して絶望しているし君は動くべきじゃないともおもうんだ。だから帰宅部や楽士の皆に協力してもらって、君はその制度を利用して社会によって救われて欲しい。本当は書類作りに慣れてたり、他の行政機関にコネを取りやすい僕が動ければ良かったんだけど、今は拘置所にいるからできないからね。君の助けになれなくて初めて自分のしたことを後悔しているよ」

自分はそれを聞き、帰宅部や楽士の皆に具体的な協力を頼みます。皆役所や法律家や政党を尋ね、使える制度を全てリストアップします。特に自身にも繋がるかもしれない琴乃は子育てで忙しいにも関わらず、協力してくれたようにも思います。スイートPは社会人としての経験も多く積んでおり、様々な面で力となってくれました。そしてそれに向けて皆で書類作りをし、自分はそれを提出し、そこそこしてから支給が始まりました。

それからおそらく半年から一年ほどして、ゆるやかに養生している中で自分は気づきます。自分は帰りたかった現実へと帰れたのだと。

自分が最もほしかった救い、それは人権でした。自分を全ての人と同じように当然のように何らかの大きい存在によって救われるということ。それまで社会は帰宅部や楽士、そして自分の魅力を奪ったものとして、憎むべき存在でした。そして、自分が透明な光、Lucidとして振る舞わねばその救われなかった人々は救われないと思っていました。その代わりに病院があったとして、まだそういった部分は社会として受け入れられているとは言い難い。そして、自分がたまたまいなければ彼らは救われなかった、つまり、自分が出会ってない誰かは必ず生まれ、であうかどうかという運だけで救われないものが決まってしまう。それは人は当然のように救われるべきであるという、普遍的な法を学ぼうとした自分にとっては受け入れがたいものです。

そして自分が人権や法、行政によって救われるのであれば、もう透明なものとならなければいけなくも、光とならなければいけなくもない。おそらく自分はこれからも善性で出会った人を助けるでしょう。Lucidとしてのならなければならなかった自分ではなく、そういう面も持った自分がいてボーナスとしてそれを行うだけで良い。使える行政や病院を教え、専門家に投げる。出来る範囲で社会や友人に力を貸す。

それをもって自分の社会への敵意というLucidの生まれた理由、カリギュラの隠しボスであり、最後のキャラクターエピソードであり、最大の敵を昇華することができました。その自覚を持ったことを帰宅部、及び楽士へ伝えたことによって、最後の帰宅困難者、部長という自分もまた、現実へと帰る事になりました。リアルでは八ヶ月、ゲームの時間軸ではおそらく二年ほどかかったような気はしますね。

読んでいただきありがとうございます。RPGにとって物語とは追体験であってもいいし、様々に形をかえロールプレイする下地としても良いものですね。

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ゲームをするか水タバコを吸うくらいしかできない元メンヘラです。年金ぐらし(2級)。 色んな事を想像し考えたりしています。
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