見出し画像

カナダのお産について聞いてみよう

「お産に向き合うことは、生き方をかんがえること」今日、お話を伺ったカナダのケベック州で助産師をされているアキさんの言葉です。

月に一度、大阪府寝屋川市にある大谷助産院で、あるがままの自然な育児について考える母子の会、「ぶどうの会」が開催されています。今日は特別にzoomを使い、カナダにお住いの大谷タカコ先生の娘さん、アキさんをつないでお話会となりました。

ぶどうの会は普段は未就学児のお子さんを連れたお母さんたちが、大谷先生やその場に参加したママさんとおしゃべりをしながら、育児のこと、母乳のこと、母業のこと、子どものことで困っていることなどをざっくばらんに話し合っています。大谷助産院で子どもを出産した人もいれば、そうでない方も参加できるゆるーい会です。

今回はなかなか聞く機会のない「カナダのお産」や「カナダの医療制度」についてレポートします。

無痛分娩が8割

日本でも急速に増えてきた無痛分娩、カナダでの無痛分娩は日本の5倍の8割にもなり、モルヒネまで使うそうです。無痛分娩が一般化する一方、医療的な介入も増え、帝王切開率が約25%。しかしこの傾向は世界的な変化で、WHOが2018年2月に分娩の基準を見直ししました。

この世界的な変化を受け、カナダでは自然なお産が再認識され、助産師の需要が高まっているとのことでした。

帝王切開の基準が見直されたからか、カナダでは逆子でも普通分娩を選択でき、1.5年期間があけば、一度帝王切開で出産していても普通分娩で産むことができるそうです。

日本では「逆子=帝王切開」、「一度帝王切開したら次も帝王切開」が通説でそれ以外の選択をすることは難しいくらいですが、お国変わればなんとやら、全く違う基準でお産が行われいていることに驚きます。

社会全体で子どもを育てる学校税(固定資産税)

日本では健康保険や雇用保険はそれぞれの保険で独立していて、出産育児一時金と産前産後に会社を休んだ分もらえる出産手当金は健康保険から、育児休暇中の人がもらえる育児休業給付金は雇用保険から支給されます。

出産育児一時金はお産をすればもらえますが、出産手当金と育児休業給付金は基本的に仕事をしている人しかもらえません。(諸条件によるので厳密にいうと違う場合もありますがここでは割愛します。)

カナダではそういった考え方はなく、税として一括徴収され、その中に医療費や水道費も含まれていて、支払いはわかれていないそうです。面白いなと思ったのが「学校税」。固定資産税と一緒に徴収される税で、徴収したお金は地域の教育関連の予算として使われるそうです。子どもがいるいない関係なく徴収され、「子どもは地域の資産だから家庭環境関係なく徴収する」という考え方が素敵だなと思いました。(ケベック州の場合。州によって違う。)

この考え方で健康保険も雇用保険的なものも一元管理されているので、例えば働いている人が、出産時に産後2週間休んでまだ休む権利を残したまま仕事復帰したとしても、残りの休みをクリスマス休暇にくっつけてとるなど、自由にとれるそうで、とても合理的だなと思いました。

国を維持する仕組みが全然違うことに驚くことばかりです。

画像1

母乳育児について

日本でも母乳育児が大切だといわれるようになって、却ってプレッシャーになってママさんたちのストレスになっているそうですが、そうなる理由の一つに、「医療機関の対応に差があることではないかな」と私は思っています。巷では母乳育児が大事だというコラムやニュースがあふれている割には、「じゃぁ、うまくいくようなサポートが整っているのか?」といわれれば答えはNOだと思います。

日本で医療機関で出産する場合、助産師さんも立ち会うことが一般的ですけど、助産師さんのサポートは入院中の長くて1週間。その間、赤ちゃんに飲ませ方を徹底的に教えてもらえるところもあれば、あまり教えてもらえないところもあり、出産する医療機関によって考え方にばらつきがあるように思います。

「母乳育児について母親に対しどうサポートするか」については、各医療機関の考え方にゆだねられ、統一されていないのが日本のお産の現状だと思うのですが、カナダではどこで産んでも「母乳育児は大切だ」という共通認識があり、定期的にお産に関わる医師や看護婦・助産婦が母乳育児に関する研修を受けられるようになっているそうです。(もちろん無料、しかも有給)

世間の認識と、サポートする機関との差が少なければ、無駄に悩むことも少なくなりそうですよね。

カナダでは助産師サポートが産後6週間でなくなり、6週間以降は地域の母乳サポートをしてくれるコニュニティを頼ることが一般的だそうです。母乳育児をするうえで一度は(?)通るかもしれない乳腺炎。原因は様々あるそうですが、飲ませ方だったり、食べ物だったり、案外なるときはなってしまうトラブル。

そういったトラブルに対応するのはカナダでは医療機関でも助産師でもなければ、地域のサポートコミュニティみたいなところに頼るそうです。

先輩ママだったり、母乳ケアをしているアドバイザー的な方をまず頼り、その方達でほとんどのトラブルは解決しているそうです。医療機関にかかることの方が少なくて、地域のサポート体制がしっかりしているんだなと感じました。

おっぱいマッサージ自体がないことも驚きでした。乳腺炎や断乳のときにおっぱいにたまった母乳をだすためにマッサージをしますが、大抵助産院だったり母乳ケアをしてくれるクリニックなどでしてもらうのが日本では一般的ですが、カナダではまず人の胸に触ることがないそうで、当然マッサージもしないそうです。そもそもおっぱいの質というかつくりが違うそうで、触った感じとかも全くアジア人と違うと聞いてこれまたびっくりしました。

お産に向き合うことは、生き方をかんがえること

お産を経験するということ自体が奇跡だと思うことがあります。体の中で自分ではない生き物と共同生活する時間を通して、「わたし」個人の話だったのが、「わたしたち」を実感する瞬間。子どものこと、家族のこと、自分のこれからのことが、社会全体の未来につながっているんだ、自分はその一員なんだなと感じるのに「お産」というのは大きなトリガーなのだと思います。



よろしければサポートお願い致します!頂いたサポートはマンガ文庫のマンガ購入費に充てさせて頂きます!