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【短編小説】① 気になる二人

ーーまぁたあの二人一緒だぁーー
私が中三の時、いつも気になっていた人物が二人いた。
他の人はあまり気にしていなかったのに、私だけどうしてもあの二人の仲が気になってしょうがなかった。
と、いうのは、ある夢を見てしまったから…。

それは、私が初めて放送のアナウンスをした日の夜だ。
ーーあれぇ? ここ、学校だぁーー
夢の中で何故か私は、学校の教室にいたのだった。そして、何故か、あの二人だけいなかった。
ーーあの二人、なしたんだろ?ーー
妙に思った私は、あの二人を探し始めた。

廊下、屋上、階段、グラウンド、体育館…
どこにもあの二人はいなかった。

ちょうどその時、走ってきたS君と私は正面衝突してしまった。

ドン…!

夢の中なのに痛みを感じた。そして、起き上がろうとした時、スッと手を出して、
「お前、大丈夫か?」
S君が夢の中で優しくしてくれた。
思わず顔がほころんでしまいそうになったが、ハッと目的を思い出し、私はS君に二人の居場所を聞いた。
「あっ? あいつらならたぶん視聴覚室だろ」
S君と私は、視聴覚室の前まで来た。が、扉には、
『絶対に入るんじゃねーぞ!』
そう書いてある紙がはってあった。
あきらめてそのまま教室に戻ろうとした時、
「あいつらよ、中で何してんだろうな。入ったら駄目でも、のぞいたら駄目だとは書いてないしなぁ。」
ーー言われてみればそうだーー
と、勝手にS君に納得させられ、二人で少し扉を開けた。
と、その時、
「やっ、やめっ、うっ…!」
一瞬、二人で顔を見合わせてしまった。
ーーまさか、女の子連れ込んでんじゃーー
「おい、どうする?」
「一回ギャフンと言わせてやろうっ!」
珍しく意見が一致し、力を入れ、
「せーのーでっ!!」

バーンッ…!

「あんたら何やって…!」
扉を押し倒して開けた時、そこには、愛し合う二人の姿があった…。
「うにゃ~っ!」
大声で叫んで目を覚ましたのは、午前二時頃であった。

朝、学校では寝不足の目で、あの二人を見て思わず、
ーーあの二人、いつもあんな事してるんだろうか?ーー
そう思うと、ますますあの二人が気になってしまった…。

今、あの二人は別々の高校で、毎日は会えないだろう。
が、連休の時になると、かならずあの二人は一緒にいる。それに、ふだんから連絡し合っているようだ…。

本当にあの二人は、どういう仲なんだろうか? 今でも私は、あの二人が気になってしょうがないのである…。


※1987年10月20日、北海タイムス『うら表紙』に掲載済み(ペンネーム『Felar-Ruw』にて)

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