R・I・S・K⑨

目を覚ますと、竜次は見覚えのない場所で、体を縄で縛られて横たわっていた。そこは、古い倉庫の中らしく、辺りが真っ暗だった。
「よぉ、竜次…。やっと目を覚ましたようだな…」
竜次は、暗闇の中、目をこらして声のする方を見た。すると、椅子に腰掛けた司の姿があった。
「洋次が今朝、この俺に、お前を仲間から外してほしいって、そう言いやがったんだっ。ふざけてると思わんか?」
ーーえっ…?ーー
竜次は、洋次が司や仲間達から抜けさせる為に、自分に嘘をついた事を知り、愕然とした。
「だが、俺がそんな事、許すとでも思うか? 洋次には今朝、俺が軽くヤキを入れて、後日たっぷりと落とし前つけてもらう事にした。だから、お前の事は仕方ないから、大目に見てやろうと思ってたんだけどよ…?」
司は、顔を上げて竜次を睨みつけた。
「お前、後から駆けつけて来てたんだってな? しかも、よりによって、やつらの仲間を助けて、一緒に逃げたんだって…?」
司は、立ち上がって竜次のところに歩いてくると、竜次の腹を蹴飛ばし、うずくまった竜次の頬をギュッと踏みつけた。
「ぐっ…」
「…なぁ、竜次、お前がまだ小学生の頃、覚えてるか? お前が、大瀬を金属バットで殴打したの見た時よぉ、俺はな、お前の事なかなか見込みのあるヤツだと思ったんだけどなぁ…? 残念だよっ…!」
司はそう吐き捨てると、竜次の顔を思い切り蹴った。
「いいか、お前らっ! 裏切り者がどうなるか、よぉく見ておけっ…!」
司は、周囲にいた仲間達に向かってそう言うと、『見せしめ』に、竜次の体を持っていた金属バットで何度も叩き続けた。竜次は口から血を吐いた。
数十分後、竜次は気を失ってしまった。
「風間さん、コイツ、どうします?」
「そのまま、ここに閉じ込めておけっ…! それより、コイツがやつらを助けたって事は、どうやら顔見知りらしいな…? 恐らく洋次も知ってて黙っているかもしれんから、明日、洋次を呼び出して訊き出せっ…!」
司は、竜次が逃げ出せないよう、縄と鎖で柱に縛りつけた。


翌日、竜次が学校を休んでいたのを知り、忍はすぐに好美に連絡した。
竜次の自宅に電話をかけると、夕べから帰っていないと家族から聞かされた。

放課後、3人は公園に集まった。
「どうやら、フーちゃんを助けた事がバレて、捕まったみたいね…」
好美がそう言って何気に振り向いた時、ちょうど公園わきを、慌てて走って行く洋次の姿を見かけた。3人は後をつけると、洋次が空き地に向かっている事を知り、見つからないよう物陰から様子を伺う事にした。
「風間さん、話って何ですか…?」
洋次は、昨晩、竜次が司達に捕まって、ヤキを入れられた後、監禁されてしまった事を、まだ知らなかった。
「洋次、お前、3人組の正体、知ってるんじゃないのか…?」
司に訊かれ、洋次は一瞬固まったが、すぐに首を横に振って否定した。
「本当に、知らないんだろうな…?」
「…しっ、知るワケないじゃないですかっ。第一、知ってたらすぐ報告しますよっ…」
「そうか? じゃあ、昨日、何で竜次がやつらの仲間を助けたんだ?」
「えっ…?」
「竜次のヤツ、昨晩、風間さんからヤキ入って、監禁されてるんだ…」
近くにいた1年生の少年が、洋次の耳元でこっそり教えた。
ーー何だって…?ーー
洋次は、ようやく事態を把握してきた。
「…どうやら、竜次だけでなく、お前も裏切り者のようだな…?」
司が手振りで皆に指示すると、洋次は皆に取り囲まれ、両脇から腕を掴まれてしまい、身動き取れなくなった。
と、その時…、
「待ちなっ!」
洋次の後をつけていた好美達が駆けつけてきた。


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