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Re・Birth⑤

数日後、好美は手術を受ける前日に外出許可をもらい、忍と一緒に街に出て、映画を観ていた。年末という事もあり、街中も映画館も混雑していた。
映画を観終わると、雪の降る街を、しばらく二人で歩いていた。
「ねぇ、忍…」
「何?」
「…もしも、アタシが手術で男になっちゃったら…、それでも、友達でいてくれる?」
「何言ってるの、当たり前でしょっ…」
忍はそう答えて、好美の顔を見た。その時、好美はぼんやりと雪を見つめていた。悲痛な表情で…。
ーーたとえ、好美ちゃんが男になったとしても、オレの気持ちは変わらないよ…ーー
忍は何度も、心の中でそう呟いていた…。

その日の夕方、好美が病院に戻ってくると、洋次が病室にいた。
「あれっ? なんだ、洋次、来てたんだ…」
「…あぁ…。こないだアネゴが入院したって忍から聞いて…。でも、病院に来てみたら、病室にいないし、看護師さんに訊いたら忍と一緒に外出したっていうしっ…」
洋次は、プーッと膨れっ面をしながら、漫画雑誌を読んで待っていたのである。
「ごめんごめん。明日手術だから、ちょっと気分転換に忍と映画観に行ってたんだ…」
好美は、なるべく明るく振る舞おうとしていたが、微かに声が震えていた。
「…アネゴ?」
洋次が、その微妙な変化に気付いて振り向くと、好美の背中が小刻みに震えていた。
「…ごめん、ちょっとだけ、一人にしてくれないかな…」
好美はそう言うと、白いカーテンをグッと強く握りしめた。その様子を見て、洋次は、後ろから好美の肩をグッと掴み、好美の顔を見た。すると、好美は涙を流していた…。
ーーえっ…?ーー
洋次は、今まで好美が人前で泣いた表情を見せた事がなかったので、一瞬驚いたが、次の瞬間、好美の肩を自分の胸元に抱き寄せた。
「…洋次…?」
「…黙ってようと思ってたんだけど、俺、アネゴのおばさんから、明日の手術がどういう内容なのか、聞いたんだ…。今日、忍の前で泣くの、我慢してたんだろ…?」
洋次はそう言うと、好美を強く抱きしめた。
「洋次っ…」
好美は、張りつめていたものが切れたように、洋次の胸元に顔を埋め、しばらくの間、声を上げて泣いた…。


翌日の午後、モロッコから来日していた専門医が中心となって、手術を行なう事になっていた。
好美は、手術を受ける1時間前に、全身麻酔をかけられた。
しばらくして、麻酔が全身に効いてきて、意識が朦朧としたまま、手術室に運ばれた。手術室の前では、美麗と祖父母が長椅子に腰掛けていた…。
長時間に及ぶ手術を受けている間、好美はまた、あの『不思議な夢』を見ていた…。

いつものように、他校の不良グループを次々と倒していった後、またあの男が、好美の前に現れた…。
「アンタ、一体誰なのっ…?」
好美が何度も拳を振りかざしても、蹴りを入れようとしても、男は軽々とかわしてしまう…。
やがて、好美が疲れ果てると、男は好美の両腕をグッと掴んだ。
ーー今日こそ、顔を見てやるっ…ーー
好美は、男の顔を見上げ、次の瞬間、我が目を疑った…。

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