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5月1週 鉄鋼産業CN(脱炭素)ニュース


国内は連休でニュースは少なかった。
(広報部門は決算発表直前で時間が取れないのか?)
最後に紹介する Agora Industries の「世界の鉄鋼業界の脱炭素化の取り組み」は非常に参考になると思う。

■<国内・製品>千代田鋼鉄が東京製鐵の電炉ガルバリウム鋼板を用いて塗装鋼板を生産開始;「サーキュラーカラー鋼板」とネーミング

*(2024/5/7 日刊産業新聞)千代田鋼鉄、「サーキュラー」前面に 電炉原板カラーGL生産 GIと用途別に提案

異形棒鋼・カラー鋼板メーカーの千代田鋼鉄工業(本社=東京都足立区、坂田基歩社長)は、原板となるガルバリウム鋼板の供給メーカーの協力を得て、電炉ホットコイルを基材としたカラーガルバリウム鋼板(カラーGL)の商業生産を5月から開始した。電炉原板の溶融亜鉛めっきコイルを使用したカラー亜鉛めっき鋼板(カラーGI)と共に、鉄スクラップにより資源循環(サーキュラー)に貢献することから「サーキュラーカラー鋼板」(商標登録出願中)と命名。需要家も環境付加価値を得やすい名称にして販売する。当面は需要家と相談しながら用途別に原板をGI、GLに分けながら生産販売し、次のステップとして店売りマーケットでも強化していく方針だ。

日刊産業新聞

*(2024/5/1 鉄鋼新聞)東京製鉄と千代田鋼鉄工業/「CO2低減カラー鋼板」共同開発/東鉄岡山のGIを塗装、脱炭素ニーズに対応

東京製鉄(社長・奈良暢明氏)は4月30日、小棒電炉でカラー鋼板メーカーの千代田鋼鉄工業(本社・東京都足立区、社長・坂田基歩氏)と共同で「CO2低減カラー鋼板」を開発したと発表した。倉庫や工場に使用される断熱サンドイッチパネル向けのカラー鋼板で千代田の客先の断熱パネルメーカーとも協働。すでに販売を行っており、脱炭素・循環型社会の実現に一層貢献...

鉄鋼新聞

*(2024/4/30 東京製鐵)当社めっきコイルをカラー鋼板に。  〜千代⽥鋼鉄⼯業と協働〜  

https://www.tokyosteel.co.jp/assets/docs/top/top_20240430-01.pdf

当社は、千代⽥鋼鉄⼯業株式会社様(東京都足立区の電気炉メーカー)と同社客先である断熱パネルメーカーと協働し、倉庫や⼯場に使われる断熱サンドイッチパネル向けの「カラー鋼板」を共同開発し、供給致しております。
両社は、当社製造の「溶融亜鉛めっきコイル」を母材として、千代⽥鋼鉄⼯業様のラインにて塗装した「CO2低減カラー鋼板」を開発して、需要家へ供給させて頂いているものです。

東京製鐵

■<国内・調達>中部鋼鈑 中部電力より太陽光発電電力導入

*(2024/5/1 中部鋼鈑)「オフサイトPPAサービス」導入のお知らせ

当社は中部電力ミライズ株式会社(以下「中部電力ミライズ」)が提供するオフサイトPPAサービス(以下「本サービス」)を導入することとし、このたび、中部電力ミライズと合意いたしました。
本サービスは、中部電力ミライズが中部地方の複数の太陽光発電所(パネル合計出力:約4,700kW)から調達する電気を、2024年6月以降、当社の本社・製造所(愛知県名古屋市)で使用するものです。
本サービスの調達先となる太陽光発電所の一部は、発電設備の下で農作物を栽培する「営農型太陽光発電所」であり、営農事業者は、農作物の販売に加え、売電による収入を得られることから、農業の支援にも貢献いたします。当社は本サービスの導入により、年間約515万kWhの太陽光発電の電気を、契約期間である20年間にわたり安定的に調達することが可能となります。また、本サービスを通じた太陽光発電の活用により、年間約2,400トンのCO₂を削減する見込みです。

中部鋼鈑

■<海外・解説>グリーンな水素の調達は難しいが、他に解決策がないため鉄鋼業は水素を利用するしかない。

*(2024/5/2 MIT Technology Review)Hydrogen could be used for nearly everything. It probably shouldn’t be.
水素は万能か? 脱炭素のための現実的な利用法

水素は地球温暖化ガスの排出量を削減するためのツールとして、多用途での利用が期待されてきた。だが、ここに来て、クリーンな水素をどの用途に使うかが重要だと考えられるようになってきた。
水素のほとんどは石油精製、化学製造、重工業で使用されており、しかも、大部分が化石燃料を使って製造されている。2022年では、水素の製造と使用は合計で約9億トンの二酸化炭素排出につながった。
水素製造をクリーン化するテクノロジーは存在している。しかし、世界の水素需要は2022年に9500万トンに達し、そのうちクリーンな水素でまかなえたのはわずか0.7%程度であった。
世界的な水素経済への転換は速くも安価にもならないだろうが、実現しつつはある。国際エネルギー機関(IEA)によると、クリーンな水素の年間生産量は2030年までに3800万トンに達する見込みだ。新プロジェクトのパイプラインは急速に拡大しているが、水素需要も同様に拡大しており、10年後までには1億5000万トンに達する可能性がある。

MIT Technology Review

「水素ラダー(はしご)」

MIT Technology REview

このラダーの一番上には、水素に代わるものがない既存の用途や産業がある。これについては、リープライヒは私が水素について話を聞いたほとんどの専門家と同意見だ。
海運、航空、製鉄など、二酸化炭素排出をクリーン化するための有力な技術的解決策がまだ存在しない部門は、二番目以降のいくつかの層に位置している。これらの部門は「解決が難しい」部門として有名だ。

MIT Technology Review

■<海外・製品>DillingerとSaarstahlは、低炭素鋼の新しいLESSラベリング基準を歓迎

*(2024/5/3 Saarstahl)Guideline for the transformation: Dillinger and Saarstahl welcome new LESS labeling standard for low-carbon steel

DillingerとSaarstahlは、低排出鋼規格(LESS)の導入を歓迎します。ドイツ鉄鋼連盟(Wirtschaftsvereinigung Stahl)とその会員企業によって開始された低炭素鋼のラベリングシステムは、ドイツ連邦経済気候保護省が組織した利害関係者プロセスの結果に基づいています。
LESSは、気候変動に配慮した鉄鋼を生産するための変革の現状と取り組みを可視化することで、気候中立への転換を加速させ、市場性を高めることを目的としています。
SHSグループの取り組み
PURE STEEL+: 2045年までにDillingerとSaarstahlが完全に気候中立な鋼を生産することを目指しています。
グリーンレール: Saarstahlは、アスコバルの大幅にCO2を削減した鋼を使用して、ヨーロッパで唯一の「グリーン」レールを製造しています。
今後は水素ベースの生産プロセスとスクラップベースの電気炉による生産が行われるが、LESSにより正しい比較が可能となる。

Saar Stahl

■<国際・認証>電炉主体のGSCCも第三者監査を開始~高炉中心のResponsible Steelに対抗

*(2024/5/5 sustainablejapan)GSCC、鉄鋼気候基準の第三者監査制度始動。世界鉄鋼協会にも加盟

国際的な鉄鋼電炉業界気候変動イニシアチブ「世界鉄鋼気候評議会(GSCC)」は5月1日、鉄鋼気候基準の第三者監査を実施する機関からの登録申請の受付を開始した。これにより、鉄鋼気候基準の認証取得が実質的に可能となった。

Sustainable Japan

*(2024/5/1 GSCC)Global Steel Climate Council による認証機関の承認申請を受け付け中
Applications Now Accepted for Approval of Certification Bodies by the Global Steel Climate Council

Global Steel Climate Council (GSCC) は現在、第三者による検証および検証サービスを提供する組織からの、Steel Climate Standard の承認された認証機関になる申請を受け付けています。
The Global Steel Climate Council (GSCC) is now accepting applications from organizations that provide third-party verification and validation services to become approved certification bodies for the Steel Climate Standard.

GSCC

*(2024/4/9 GSCC)GSCC 世界鉄鋼協会に加盟
GSCC Joins Worldsteel Association

The Worldsteel Association today announced the Global Steel Climate Council (GSCC) was elected as an Associate Member of the organization.

GSCC

⇒GSCCとは、高炉中心のResponsible Steelに対抗する電炉主体の鉄鋼の脱炭素化推進団体。 
創設メンバーは、NUCORやSteel Dynamics など。現在は40社・団体 
日本関連では 東京製鐵、大和工業およびOVACO、サイアムヤマトスチールなどが加盟している。

■<海外・解説>世界の鉄鋼業界の脱炭素化の取り組み

*(2024/4/30 Responsible Steel)”Read and watch” Low-carbon technologies for the global steel transformation

Agora recently published an analysis of low-carbon technologies for the steel industry, assessing eight and outlining key parameters such as market readiness, cost, and emission reduction potential. Their study indicates that some technologies, such as those based on direct reduced iron, can be deployed this decade, offering flexible pathways for economies at different stages of industrial transformation.
世界の鉄鋼業界への変革に向けた低炭素技術~製鉄における排出量を削減する最も効果的な方法のガイド

ResponsibleSteel

引用元は
*(2024/4/11 Agora Industry)Low-carbon technologies for the global steel transformation

主な調査結果
1.世界の鉄鋼業界を変革するための重要な技術は、この10年間で商業的に利用可能になるでしょう。
2030年までに、既存の高炉(BF)の70%以上が再投資(巻替え)を必要とし、このCO2集約型プロセスをスクラップおよび水素ベースの製鋼に置き換える機会を提供します。スクラップの品質を向上させ、再生可能電力を使用することで、CO2排出量がほぼゼロの高品質の鉄鋼生産が可能になります。
2.直接還元鉄ベース(DRI)製鋼と将来の電化技術によって提供される柔軟性は、ボトルネックに対処できます。
DRI技術は、現在導入可能であり、水素の割合を徐々に増加させて運用することができます。さらに、製鉄段階と製鋼段階を分離することができます。DRIプロセスを既存の塩基性酸素炉(BOF)製鋼と組み合わせることで、将来の鉄鉱石電解技術と同様に、低品質の鉄鉱石の使用が可能になります。
3.炭素回収・貯留(CCS)が石炭ベースのBF-BOFルートを救う可能性は低い。
高炉ー転炉(BF-BOF)プラントをCCSで改造することは、高い残留排出量を残し、大量のCO2輸送および貯蔵インフラを必要とし、炭鉱からの上流のメタン排出量の高さを考慮する必要があり、水素コストが低下し、CO2価格が上昇するにつれて商業的魅力がますます低下するため、リスクの高い戦略です。
4.低CO2製鉄のコストが高いため、低CO2製鉄の大規模展開を加速するために、的を絞った規制支援と国際協力が必要です。
対策は、技術的選択肢の支援やグリーン製品のグローバル市場の発展など、製鉄のバリューチェーン全体に対応する必要があります。国際協力は、グローバルバリューチェーンを再考することで、再生可能水素の「スイートスポット」でのグリーン鉄の生産を可能にします。

Agola Industry

⇒元資料は 71ページのPDF資料

https://www.agora-industry.org/fileadmin/Projekte/2021/2021-06_IND_INT_GlobalSteel/A-IND_324_Low-Carbon-Technologies_WEB.pdf

文書の概要
この文書は、低炭素技術を用いた鉄鋼業の変革に焦点を当てています。まず、水素やCCSなどの低炭素技術の概要が示され、それらの技術の商業的準備度やエネルギー要件、CO2削減潜在能力などが比較されます。さらに、DRI-EAFとDRI-SMELT-BOFルートの技術比較やBF-BOFルートにおける燃焼後CCSの役割が掘り下げられます。最後に、各低炭素技術に関するファクトシートが提供され、鉄鋼業の持続可能な変革に向けた重要な情報が提供されています。

目次
1. **低炭素技術の概要**:
   - 水素を利用した製鉄
   - 製鉄の直接電化
   - 製鉄工程におけるCCS利用
   - 製鋼工程
2. **低炭素技術の比較**:
   - 期待される商業的準備度
   - エネルギー要件
   - CO2 削減潜在能力と残留排出量
   - 生産およびCO2 削減コスト
3. **深堀1: DRI-EAF と DRI-SMELT-BOF ルートの技術比較**:
   - DRI-EAF ルートの技術的利点と欠点
   - DRI-SMELT-BOF ルートの技術的利点と欠点
   - 生産コストの比較
4. **深堀2: BF-BOF ルートにおける燃焼後CCSの役割**:
   - 現状
   - BF-BOF-CCS ルートの残留排出量とインフラニーズ
   - CO2 価格と技術開発の文脈での生産コスト
   - グリーンリード市場のリスク
5. **世界における製鉄プロセス変革のための低炭素技術**:8種のプロセス   解説と世界における開発事例
   - 水素を利用した直接還元-電気アーク炉ルート
    水素を利用した直接還元-SMELT-BOFルート
    天然ガスを利用した直接還元とCCS
    溶融酸化物電解 MOE
    アルカリ電解 と電気アーク炉
    CCSを備えた高炉-BOFルート
    Hisarna® プロセス と BOF CCSも活用
    スクラップ(CO2ほぼゼロ)を使用する電気アーク炉ルート


Agola Industry

残念ながら日本の開発事例は掲載されていない、高炉への水素吹き込みについても何ら触れられていないようである。
Agola Industryはドイツの気候変動対策のシンクタンク Agola Think Tanksの一部門。

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