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コロナ禍が生んだ新宿歌舞伎町の空白地帯


今日は緊急事態宣言の解除後に、新宿歌舞伎町の裏側でなにが起こっているかについて書きたいと思います。

当初の予定では、前回の自己紹介の後は、私が刑事時代に対峙した事件・事案の中から、ビジネスや日常生活におけるリスクコントロールや危機管理に応用できそうなを話をいくつか綴っていこうと思っていましたが、実はここ数日、新宿歌舞伎町でいくつかの騒ぎが発生しているので、急遽それについて触れることにしました。

コロナ禍を巡っては、NHKの報道などにある通り「夜の繁華街での接待を伴う飲食業」におけるクラスター化が懸念されていますが、緊急事態宣言が解除されたことで、「接待を伴う飲食業」、つまりはキャバクラ、クラブ、ラウンジ、ホストクラブといった水商売の店が密集する新宿歌舞伎町では、従来の日常へ向けた急速な逆回転が始まっています。

NHKニュース 2020年6月1日
夜の街 飲食業関連のコロナ感染者増加 全体の3割に 東京
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200601/k10012454381000.html

前回の記事では、緊急事態宣言下の新宿歌舞伎町が、他のどの地域にもあるような静かな夜を迎える様子について記しましたが、緊急事態宣言が解除されてから僅か数日で状況は大きく変わりました。少し前まで休業や時短で営業していた居酒屋やレストランが少しづつ通常営業に向けて動き出したり、息を潜めるようだった水商売の店も活気を取り戻しつつあるようです。夜の街におけるクラスター化を危惧する声が多いことは、この街の住人たちも十分理解していると見え、それぞれ頭を悩ませながら対策を取っている姿が窺えます。

もちろん、店と客の距離が近い水商売に対して厳しい目を向ける人が多いことも、そういった気持も十分に理解していますが、自分や家族のためにこの街で生き抜こうとしている人たちが数多くいることは現実であり、それを一概に否定することはできないとを私は身を持って知っています。なので、これから書くことは、新宿歌舞伎町やこの街を形成する水商売について否定するものではなく、あくまで限定的な事象に対する見解として読み取ってもらえたらと思います。

5日から6日にかけて、私やSTEAMのメンバーには新宿歌舞伎町で発生した、あるスカウトグループを巡るトラブルの話が複数舞い込んできました。その後、SNSなどにおいても真偽不明なもの含めて様々な噂が急速に広まったので、もしかしたら耳にした人もいるかもしれません。その「話(噂)」とは、歌舞伎町にある複数のヤクザ組織が、ある特定のスカウトグループに対して苛烈な追い込みを掛けているというものです。

スカウトとは、繁華街に立って道行く男女に声をかけ、キャバクラやホスト、風俗などの仕事を斡旋することを生業とする者のことです。グループという言い方をするのは、法人形態として存在することもあれば、税金や摘発を逃れるため、曖昧な形での集団として存在していることもあるからです(これは客引きも同様です)。こういったスカウト行為や客引き行為は条例で禁止されており、警察の摘発対象でもありますから、もし街中で声をかけられたとしても、絶対に付いていったりしないで欲しいことは強く記しておきます。声を掛けてくる際の彼や彼女たちは非常に親切そうに振る舞っているかもしれませんが、そういったグループの多くにはケツモチと呼ばれるヤクザや半グレが付いているからです。

元マル暴デカとして誤解を恐れずに言えば、違法な世界には違法な世界のルールや秩序があります。暴力が支配する裏社会の頂点にあるのは、今も昔も変わることなくヤクザと言われる暴力団です。そのヤクザが死守しているのが「縄張り」と言われるものです。新宿歌舞伎町というところは、他の繁華街には見られないほど、昔からその縄張りが事細かに定められており、5メートルおきに区切られている場所もあるほどです。そして、その縄張りを他者が犯すことをヤクザたちは何より嫌います(その縄張りという観念を許すまじとうのが警察のスタンスでもあります)。

そして先日から新宿歌舞伎町で起こっている騒動というのが、あるスカウトグループとケツモチのヤクザによる暴力事件です。私とSTEAMのもとには、それなりに人通りも戻り始めた街中に数十人のヤクザや半グレと見られる集団が突如現れ、スカウトと見られる人間たちを追い回したという複数の情報が寄せられました。その様子を映したと見られる動画もいくつかありますが、これが当日の様子なのかについての真偽は警察の方でも検証しているでしょう。

事件の背景については、あるスカウトグループが引き抜きや街角での喧嘩を巡って、対立するグループやケツモチのヤクザとトラブルになっていったとの見方が現時点では有力ですが、これだけの騒動になった理由としては、コロナ禍が生み出した街の空白地帯も関係していると思います。

実は、緊急事態宣言の発令から1ヶ月位たった頃から新宿歌舞伎町に「よそもの」が流れてくるという動きがありました。前回の記事の通り、新宿歌舞伎町の人通りは往時とは程遠い閑散としたものでしたが、それでも他の繁華街に比べると、水面下での活動は続いていたと言えます。そのため、普段は他の地域で活動していたスカウトや客引きのグループが新宿歌舞伎町に入り込んできたようです。

コロナ禍はヤクザの動きにも大きな影響を与えており、特に高齢の組幹部を要する組織においては、組員にもかなりの行動制限を敷いていたようです。街から人が減ったうえ、自分たちも行動が制限されていることもあり、他の地域でスカウトや客引きをやっている付き合いのある人間たちからの「一時的に新宿歌舞伎町に入りたい」という声に対して、「NO」としなかった組織もあったようです。その数がどの程度かは不明ですが、少なくともいくつかのグループがコロナ禍の空白地帯を利用した活動を行っていたことは間違いなさそうです。

こういった「よそもの」の動きが今回の騒動の直接的な要因かどうかはまだ分からないものの、少なくともコロナ禍が生み出した新宿歌舞伎町の空白地帯を巡る様々なグループや組織の思惑が、今回のようなトラブルの遠因であることは間違いなさそうです。

最後に付け加えますと、この騒動に関するSNSなどの情報の中には事実とかけ離れたものも多く、過去の噂話などを絡めたフェイクニュースも出ているようなので、受け止め方については注意を願います。

また新しい情報が入った際にはお知らせしたいと思います。

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