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「北区木造密集地に建てる火に強い木造住宅」

こちらは、20/3/15にASJ東京北スタジオにて予定されておりましたイベントにてお話しようと思っていたことです。

文章にすると、なかなか解りにくい所もあるかと思います。気になった方、より深く聞きたい方はこちらよりご連絡ください(リンク先のページ最下部に連絡先を記載しております)。


1,火に強いとは

火災において、木は燃えます。
鉄は燃えませんが、長い間、高温の状態が続くと変形し崩壊します。
以上の2つの素材に比べてコンクリートは燃えず、長時間に渡って構造強度を維持します。

最も火に弱い木造でも、火に強くするために、2つの方法があります。

①木が燃えないように、表面を耐火素材で被覆し、火炎の熱が木部へ伝わらないようにする。この性能を高め、法律の基準を満たしたものが木造耐火構造。
②建物はそのままですが、隣家からの延焼(燃え移り)を有効に防止できるように、延焼防止帯を設ける設計。


2,木造密集地域において、建物のどの部分を火に強くするか

まず外壁を火に強くするべきと考えています。隣家に面している部分だからです。
もちろん全ての部分を耐火構造にした方が、耐火性能は高い水準を満たせます。ですが、方法①の様に、燃えるものを燃えないようにするには、通常よりもコストが掛かります。また、住空間をつくるにあたり、木部の全てが耐火被覆されていては、オフィスのような無機質な空間になってしまうというジレンマがあります。

次に、外壁のみを木造耐火構造とした事例をご紹介します。


3,ロ準耐火構造1での設計事例

木造3階建ての設計事例です(十条の住宅1)。
外壁を1時間耐火構造とし、建築基準法「ロ準耐火構造1」という仕様にしています。

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反対側から見ています。

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外壁の耐火性能を確保したことにより、木造密集地域における外部からの延焼を有効に防いでいます。
ロ準耐火構造1では、外壁の耐火性能を満たすことで、室内では木構造部の表し仕上げや、木階段による設計が可能になります。

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外壁はビル等と同じ1時間耐火構造の性能を持っています。

コストバランスの視点からは、外壁の耐火被覆材料が増となり、室内側の耐火被覆材料を減としてバランスを取ります。
さらに、一歩進んだ方法として、外壁面積が少ない計画(=窓が多い計画)であれば、耐火性能を確保しつつ、より少ないコスト増にて実現できる可能性もあります。


4,木造密集地域での延焼防止帯

古くから続く延焼防止帯として、道路があります。
もう一つの延焼防止帯として、小庭があります。
私が設計活動を行なっている十条では、古い民家の殆どが小庭を設け、その多くに道路にはみ出さんばかりの植栽が植えられています。

上空から見るとこのようになっています。

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点在する小庭は、火に強い町にするだけでなく、この町らしさを形作っている要因の一つでもあります。


5,積極的に小庭を設ける設計事例

木造2階建ての設計事例です(十条の住宅2)。
木造密集地域、旗竿敷地、最低限高さ7m以上という敷地条件ですので、普通に考えると①の方法で作りたくなる条件です。
ですが、②の延焼防止帯を設けることは、小庭を設けることでもあります。
小庭を設けることは、囲まれた敷地環境において、良好な住空間を成立させるための重要な要素でもあるため、設計検討の結果、②の方法でつくることとなりました。

上空から見下ろしています。

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3つの小庭を設け、かつ一部平屋にすることで、隣家からの距離を確保しています。

室内からはこの様に見えます。
1階の様子です。

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小庭によって隣家からの距離を確保し、大きな窓を設けています。
窓については、都内の木造密集地域では「防火設備」と呼ばれる性能を満たす必要があり、こちらも全て防火設備の窓となっています。

2階から外を見ています。

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隣家との距離が確保でき、家の窓は全て庭に面しています。
②の延焼防止帯をつくる方法は、建物を小さくすればするほど火に強くなり、かつ、住環境が向上する敷地条件において有効に機能します。
余談ですが、建物が小さくなるということは建築コストも小さくなります。


6,その他の設計中の事例

割愛します。お問い合わせください。


7,省令準耐火と火災保険料

割愛します。お問い合わせください。


8,木造耐火構造(一時間耐火)の設計事例

割愛します。お問い合わせください。


9,火に強くする方法も毎回考える

ここでは、主に2つの事例をご紹介しました。
全編を通じてお伝えしたいのは、建主からの要望、敷地条件や周辺環境に応じて、適切な形を毎回考えなければいけないということです。

昔ながらの家の構成である、庭があり、縁側があり、大きな窓がある形でも火に強くでき、木造耐火という最新の技術での耐火性能の向上も図れます。しかし、設計条件によっては両者を組み合わせる方法や、まったく別の方法が最適かもしれません。
また、耐火性能だけでなく、耐震性能や省エネ性能、コストに納まることなども非常に重要なポイントになり、複雑に絡み合っています。

そして、それらの検討のいずれにおいても、常に念頭に置かなければならないのは、建主のための家をつくっているということです。
性能を満たし、ローコストにするだけならばとても簡単ですが、建主にとっての家である必要があります。

どの設計計画においても、全ての条件を満たす最適な案を考え、提案しながら業務を行なっております。



PHOTO(ご紹介順)
十条の住宅1:益永研司
十条の住宅2:中野幸英

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