豊中智樹はしたり顔 第9話『フェイクニュースにご用心!偽新聞部敗れたり!』前編

街外れの山の上、そこにぽつりと建つ学校!

      『由北高校』
 
 部室棟二階の一番奥、彼はいつもそこに居る!
    
   彼こそがこの物語の主人公!
  その名を 「豊中 智樹」(とよなか ともき)

新聞部部長!豊中智樹の体当たり取材が今始まる!

第9話 

『フェイクニュースにご用心!偽新聞部敗れたり!』

<仕込み三味線部 部室>

由北高校第三部室棟。
第三部室棟は音楽系の部室がまとめられている。            そしてここはその三階「仕込み三味線部」の部室である。
仕込み三味線部に踏み込むはご存じ豊中智樹。
今回は生徒会の依頼で生徒会長及び生徒指導部機動隊隊員若干名と共に行動していた。

「あんたが仕込み三味線部の部長さん。琵琶明宏だな?」
「そういうあなたは?まず名乗るのが礼儀でなくて?」
「俺は新聞部豊中智樹。俺たちがここに来たってことは、だ、おまえさんもわかってるよな」
「新聞部?そう、あなたのとこの女の子にあたしの舎弟が世話になったらしいじゃない。たぁっぷりとお礼してあげるわ!」
「女?なんのこと・・うわぁ!」

会長の首を掴み後ろに放り投げる。

「下がってな」

勝負は一瞬。
琵琶明宏が仕込み三味線を抜くが速いか豊中のベルトが速いか。

当然!

速いのは豊中智樹!

「ファーーーーーーーー!!!」

豊中自慢の神速で引き抜かれるベルトは琵琶明宏が今まさに抜こうとしたその刀ごと体を吹き飛ばした。
猛烈な勢いで琵琶明宏は壁にたたきつけられる。

ビターーーーーーーン!!!!!!

「ぐええええええええええええ!!!」

<<<<<由北高校 仕込み三味線部 部長 琵琶明宏 >>>>>

          <<<完全撃破>>>

<廊下>

一仕事終えた二人は後のことを生徒指導部機動隊に任せ一旦記事を書くべく新聞部の部室へ向かう。

「しかし気になることを言っていたな、新聞部は今豊中しか部員はいないだろう」
「ああそうだ、今はな。ふふんファンでもできたかな」
「またおまえは・・・」

突如、豊中たちの前に一人の男が飛び出してきた。

「待ちやがれ!貴様が新聞部の部長だな!?俺は尺八ボウガン部副部長 二階堂ユウゴ!豊中智樹!貴様の命貰い受ける!」

二階堂は手にした尺八をボウガンに変形させ、名乗り終えるや否や豊中に矢を放った。
しかし相手はあの豊中智樹!不意打ち気味の矢など取るに足らず。


ピシィィィィィ!!!!!ヒャッ!!!!


豊中は放たれた矢を人差し指と中指、二本の指で止め。そのまま投げ返す!
返された矢は二階堂の頬を掠め遥か後方に飛んでいく。

「正々堂々は結構だが、相手を選ばねぇと命を落とすぜ。出直してきな」

その圧倒的な実力の差に二階堂ユウゴは膝をつき泣くことしかできなかった。

「畜生・・・貴様・・・なんで・・・」

怒涛の展開に呆気にとられていた生徒会長。
ようやく話に入ってきた。

「待てお前ら!少しは落ち着いて話し合え!いったい何が何だかわからんぞ」
「黙れ!!部長の!五代の仇だぁ!!」
「仇?本当になんの話だ?」

二階堂が何を言っているのかわからない二人、そもそも彼らはこの男との面識もない。
そこに慌てて生徒指導部の隊員が駆け寄ってきた。

「会長!!大変です!校庭に!校庭に!!」


<校庭>

いつも豊中が悪党を磔にする学園創立者「由北 八十郎」の銅像が建つ。
例によって生徒たちが騒がしい。
しかし!今回注目されるのは像ではない!
国旗が掲げられるポール!そしてその先端!

男子生徒が逆さ吊りにされていたのだ!!

「五代ぃいい!!!!!ごだぁぁあああああい!!!!」

男子生徒は生徒指導部により救助され担架に乗せられる。

「いったい何があった!?報告を!」
「はっ!つい先ほどこのポールの上に男子生徒が吊るされているとの通報を受け参上した次第であります!我々も事態を完全に把握はできていません!しかし・・・」

ちらりと機動隊員は生徒たちを見た。


オイオイオイオイ      シンブンブノシワザカ?

   シンデルンジャァナイノカ? 


 ザワザワザワ・・・    シンブンブガコロシダナンテ

「何を馬鹿な、新聞部は、豊中はずっと俺と一緒にいたんだぞ!?」
「誰かが俺をハメようとしてるみたいだな」

会長と機動隊員は当然豊中の仕業でないことはわかっていたが、一般生徒がそのことを知る由もない。
以前から一部生徒の中に豊中は突然生徒を磔にし、珍妙なビラをばら撒く危険人物と思っている者がいた。
彼らによって広められていた不信感とこの一件により、一般生徒の豊中への目は強く厳しいものとなっていたのだ。

「ぐ、ええい!とにかく一般生徒を教室へ!解散させろ!」

会長の指示から怒りが滲む。
それは友人への疑惑にどうすることもできない自分への怒りと濡れ衣を着せようとする何者かに対する怒り、様々な怒りが入り混じったものだった。

「うう・・・」

吊られた男、尺八ボウガン部の部長「五代 進ノ介」は少しだけ目を覚ました。
副部長二階堂ユウゴが涙ながらに顔を覗く。

「五代!?無事か!?」
「ぐ・・・ユウゴ・・・あの女に気を付けろ・・・奴のベルトは・・・」

意識を失う五代。
ちょうど到着した救急車に乗せられ、そのまま病院へと搬送された。

「女・・・また女か、いったい何者だ」

話を聞いていた会長と豊中は先刻、琵琶が言っていたことを思い出す。

「女性に恨まれるようなことした覚えはないんだがな。まあいい、俺に恨みがあるやつの仕業ってことはわかってるんだ、だったらおびき出すだけさ」

豊中はニヤリと笑う。

つづく


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