豊中智樹はしたり顔 第2話『鋼の戦士か彷徨う骸か!ゾンビラグビー部特製ヒロポンプロテイン』前編

街外れの山の上、そこにぽつりと建つ学校!

      『由北高校』
 
 部室棟二階の一番奥、彼はいつもそこに居る!
    
   彼こそがこの物語の主人公!
  その名を 「豊中 智樹」(とよなか ともき)

新聞部部長!豊中智樹の体当たり取材が今始まる!

第2話

鋼の戦士か彷徨う骸か!ゾンビラグビー部特製ヒロポンプロテイン

<中庭>

由北高校中庭、千両池と呼ばれる大きな池を中心に公園が広がる。
昼休みにや放課後には学生カップルであふれる定番のデートスポットである。
その中庭の片隅に農園部の畑があった。

「姉さん、肥料持ってきたよ」
「あらありがとう。そうねそこおいといてくださる?」

この畑を切り盛りする姉弟、部長の農園花子とその弟太郎。
今回の取材は農園部だ。
カメラを構え豊中は鋏を片手にトマトを収穫する花子を写す。

「まあ豊中さんったら、こんなところ撮っても何もおもしろくないでしょうに」
「そうだよ俺たちみたいな日陰者撮ったってさ飯のタネにもなんないよ」
「ははは、まさか」

豊中はファインダー越しに答えた。
日々闘いに生きる豊中にとって彼らのような慎ましく生きる生徒の存在がただ救いであった。

「僕なら貴方を日向に連れ出せるかもしれませんよ?」
「あらやだもうっ!」
「なんでぇ姉さん照れてやんの」

暖かな農園に三人の笑い声が響く。だがその平和を容赦なく一発の凶弾が打ち砕く。

GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANN!!!!!!

「きゃぁ!」

突如!畑にラグビーボールが撃ち込まれた!

PONG!!PONG!!!

POOOOOOONG!!!!!

着弾したボールは辺り一面を跳ね散らかし、鷹の爪を!トマトを!西瓜を!見るも無残な姿に変える!
畑は瞬く間に天然のスムージーと化した。

「ひっひどい誰がこんな・・・」

台風が通った後のような惨状にただ唖然とする姉弟、ボールが飛んできた方向から一人、大男がやってきた。

「おいおいおいおい誰に断ってこんなところに畑なんか作ってやがるんだ、見ろボールがぐちゃぐちゃだ」

心無い大男に声を荒げたのは意外にも弟ではなく大人しそうな花子の方であった。

「なんですかあなたは!これはちゃんと先生や生徒会の許可を取った正式な部活です!それにあなたまず謝るのが先でしょう!?」

涙を目に蓄えながらもキッと大男を睨む。豊中は何も言わない、しかしその猛禽類のような目で事の顛末を見守る。

「御上だ生徒会なんざしらねぇな、俺たちラグビー部様の許可を取ったのかと聞いたんだ。生意気な奴め、ちょっと辱めてやる!物陰に来い!」
「きゃあ!」

暴漢ラグビー部員が伸ばした手を豊中は素早く掴んだ。

「だったら俺の許可も取ってもらおうか、そのお嬢さんは先約があるんだ」
「なぁんだ貴様は」
「新聞部豊中智樹、ちょっと話がある、おまえらの部長のとこに連れてけ」

<グラウンド>
 
大部分を占領し練習をしていた野球部がいなくなった由北高校大グラウンド。
今まで隅っこでの練習を余儀なくされていた数多の運動部たちが伸び伸びと練習していた。

そこに一閃!弾道ミサイルのような何かが撃ち込まれる!!


GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAN!!!!!

ナンダナンダ  ブチョウ!ソラカラブインガ!

   ヒィイイイイイイイイ

ワーーーー    ワーーーーー

「何事だぁ!?」

騒ぎを聞き駆けつけたのは由北高校ラグビー部主将『不死身の大日』

彼が目にしたのは地面に頭から突き刺さる可愛い部員の姿。

「いったいこれは?おい野郎ども!とにかく引っこ抜くぞ!!」
「「「「へい!」」」」

大きなカブを引き抜くように部員の足を引っ張るラグビー部員達、彼らに声をかけるのはみなさんご存じあの男。

「悪ぃな、ラグビーボールってのは投げにくいもんでちょいと手元が狂っちまったよ」
「てめぇよくもうちの可愛い部員にぃ!貴様どこの誰だ!名乗りやがれぇぃ!!」
「俺の名は新聞部豊中智樹、農園部の代わりにボールを返しに参上した次第さ」
「なぁにぃ?新聞部だとぉ?」


ザワザワザワ・・・    シンブンブッテ・・・

  オイオイアイツマサカ

ハヤクヒキヌクンダヨ!    チョット!アシフムナヨ!

「てめぇ野球部の次は俺たちってかい」
「おたくの部員が粗相をしでかしたんでな、いったいどんな教育してんのか取材に来たのさ」
「ふざけやがってぶっ殺してやる」
「いや、俺に任せてくださいよ部長」

豊中に立ちはだかるは先ほど畑を襲撃した部員。

「死なねぇように手加減したつもりだったが・・・手を抜きすぎたかな?」
「その減らず口が何時まで持つか見ものだなぁ!!!いくぞ一年坊主どもこいつを囲めぇ!!」

ヤッチマエェ!!    ブチコロセ!

   シニタクネェナァ・・・

ワーーー    ワーーーー

「ファーーーーーーーーーー!!!!!」

「「「「「ぐええええええええええ!!!」」」」」

豊中は軽々と部員たちを蹴散らす。

「もう終わりかい?」
「さすが野球部をつぶすだけのことはあるじゃないか」

部員たちが倒れ部長一人のこの状況。
しかし部長の顔には笑みが浮かぶ。

「さあ野郎ども!プロテインの時間だよぉ!」

大日が手にしたホースから謎の液体をぶちまけた。
その液を浴びると部員たちはみるみる元気になっていくではありませんか。

「この匂い、ただのプロテインじゃぁねぇな?」
「ふふふ、さすが新聞部。お察しの通りヒロポン入り特製プロテインさぁ」
「貴様どこでそれを!?」

動揺する豊中に復活した部員たちが襲い掛かる。

「ガハハハハ!!これが俺たち不死身のラグビー部よぉ!!」

不死身のラグビー部員を一人一人捌く豊中。
しかし不死身の名は伊達ではない。特製ヒロポンプロテインで痛みを感じないラグビー部員は何度倒されても次々立ち上がる!

カポッ

「!?これは」

長引く闘いの最中油断した豊中は後ろからヘッドギアを被せられる。

「今だ!野郎ども畳みかけろ!!」

みるみるうちに豊中の全身はアメフトの防具で固められた。

「おいおいおまえらこれ何か勘違いしていないか?」
「由北高校ラグビー部特製防具だ、その重量およそ200kg!!如何に新聞部といえども動けまい」

ショルダー、ヘッドギアに加えて剣道の小手や太もも・二の腕につけられた謎のプロテクター!
大日の言う通り豊中は腕を上げることすらできない。

「貴様の軽口もここまでよ!極悪タックルを喰らえぇぃ!!」

大日のタックルに吹き飛ばされる豊中!
飛ばされたその先は!

BASHAAAAAAAAAAAAAAN!!!!!!

由北高校の敷地内を流れる川!

「ガハハハ貴様は仮入部して練習中に溺れて死んだと先生に報告してやるよ」
「姉さん!あれ見て!」
「そんな・・・豊中さぁぁあぁぁぁぁん!!!!」

追いついた農園姉弟が見たのは濁流にのまれる豊中の姿だった。

つづく!!!

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