豊中智樹はしたり顔 第8話『怪電波受信中!北の国からゴルフボール!』後編

<ゴルフ場>

由北高校がある山の隣の山。車で20分ほどの所にある『由北カントリ-クラブ』

「銀(ウン)様アナタノ番デース」

ホールを回る男たち。
銀と呼ばれた外国人の男には、いかにもな黒服のボディーガードが付いている。

「ふん!」

銀の球はフェアウェイ上に無難な軌道で落ちた。

「OH~♪NICE SHOT!!」

接待の下手な外国語交じりの大男。彼こそが由北高校ゴルフ部部長『ライオン・ウッズ』
由北高校を北朝鮮に売ろうとたくらむ大悪党である。

「世辞はいらん、それで、本当に由北の理事長は土地を売るのか?あの頑固爺がそう簡単に首を縦に振るとは思えないが」
「イエ~ス♪私ダケガ持ツ学園ノ暗部・・・コノDISCニ入ッタ情報ガアレバEASY GAMEネ」
「なるほど、まあ私は土地さえ手に入ればそれでいい。わが主もお喜びになる」
「素晴ラシイ!貴方達ガ由北高校ヲゴルフ場ニシテクレレバ、モウコンナ遠クマデ練習ニ来ナクテ済ミマース♪」


風向きは南西に2メートル。銀は二打目の準備にかかる。

「リゾート経営ノ手腕デ貴方ノ右ニ出ル者ハイマセーン♪綺麗ナゴルフ場ヲ作ッテクダサイNE♪」
「日本のゴルフ場の質はあまりよくないからな。芝は不揃い、池は濁り、バンカーは凸凹・・・見ろ人が隠れられるほどの砂山ができている。わが国では銃殺ものだ」

銀は自慢の観察眼でゴルフ場の不備を見抜いていた。

「覚えておけ、接待とは最高の人と場所でするもの・・・だっ!」

銀の二打目は小気味よい音を立てバンカーの向こうグリーンを目指す。

「oops!肝ニ銘ジマ~ス」

放物線の頂点バンカーの真上を通過するその時!
バンカーの砂が間欠泉が如く吹き上がる!!

BOOOOOOOOOOOOOOOOON!!!!!!!!!

吹き上がる砂の中飛び上がるのは我らがヒーロー豊中智樹!
そのままゴルフボールをオーバーヘッドキック!
蹴り返されたボールは銀の眉間にホールインワン!!

「銀様!!!!」

倒れる銀に駆け寄るボディーガードたち。

「ライオン・ウッズ!!これは一体どういうことか!?」
「アッアリエナイ・・・」

ベルトを頭上で振り回し落ちてくる砂を振り払いながら豊中はゆっくりと歩き出す。

「やはり貴様が犯人か、由北高校ゴルフ部部長『ライオン・ウッズ』学園を外国に売り飛ばすその身勝手な企み、あまつさえ罪もない放送部を襲った貴様を許すわけにはいかん!覚悟!!」

腰が抜けて動けないライオン・ウッズの下にゴルフ部の部員が集まってきた。

「部長!ここは我々にお任せを!!

部員たちはそれぞれの射線上に立たないようジグザグの状態で三列に並ぶ。

「「「「「「「「「これぞ我らゴルフ部名物」」」」」」」」」

   「「「ウッド!」」」

  「「「アイアン!!」」」

  「「「パター!!!」」」

「「「「「「「「「信長式三段撃ちショット!!!」」」」」」」」」

1分間に300発のゴルフボールが発射される由北高校ゴルフ部名物信長式三段撃ちショットが豊中を襲う!

「マ!待チナサイ!!!ソレハイケナイ!!!」

ライオン・ウッズは声を上げる、しかし時すでに遅し。

豊中はベルトを構え・・・

1球!
1球!
また1球!
迫りくるゴルフボールの雨を部員たちに打ち返す!

「「「「「「「「「ぐええええええええええええええ」」」」」」」」」

「アッアア・・・baseball部ガメラ梅井ガヤラレタ時ニ気ガ付クベキデシタ・・・奴ニ・・・『豊中智樹に弾は効かない』!!!!!」

いつの間にか逃げ出した銀とその部下、そして倒れる部員。
この絶望的な状況に思考を巡らせるライオン・ウッズ。

「奴ニ遠距離攻撃ハ効カナイ・・・シカシ、ゴルフハ『紳士のスポーツ』コースノ上デ殴リ合イナンテ野蛮ナコトデキマセーン・・・ッ!!」

ライオン・ウッズは逃げ出した!
一心不乱にホールを逆走する!

「ニ・・・逃ゲルンダ・・・銀ト合流出来レバ One chance!」

一方ティーイングエリアに到着した豊中。
ライオン・ウッズのドライバーを拾い上げ、逃げるライオン・ウッズの背中を見つめる。

「風向き南西に2メートル・・・距離は300ヤードってとこか。ゴルフはいつ以来だったかな」

精神を研ぎ澄ませ風がやむ瞬間を待つ。

風がやんだ。


「ファーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

目を見開き渾身のショット!


ゴルフボールはかまいたちの様に鋭く風を切り一直線に逃げるライオン・ウッズの頭を打ち抜く!

ZBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAN!

「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ライオン・ウッズはその場に倒れ込む。

「コース上をむやみに走り回るのはマナー違反ですよ部長さん」


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    <<<<  完  全   撃  破 >>>>


<放送部 電波塔 最上階>

翌日、一命をとりとめた江仁熊 安吾は襲撃されボロボロになった部室の掃除をしていた。

「ふう、まったくひどい目にあった。だがおまえのおかげで学園の平和は守られたようだな」

割れた窓から風に乗り、飛び込んできた号外を見て江仁熊は微笑む。


『怪電波受信中!北の国からゴルフボール!』

ライオン・ウッズとゴルフ部の部員たちは外患誘致罪で3か月の停学処分。
豊中智樹は学校外での暴力事件ということもあり警察に補導された。

次回

『フェイクニュースにご用心!偽新聞部敗れたり!』

豊中智樹の真似は危険なので絶対にしないでね。


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