豊中智樹はしたり顔 第7話『わいらはなにわのバンクシー!偽装通貨流出事件!』前編

街外れの山の上、そこにぽつりと建つ学校!

      『由北高校』
 
 部室棟二階の一番奥、彼はいつもそこに居る!
    
   彼こそがこの物語の主人公!
  その名を 「豊中 智樹」(とよなか ともき)

新聞部部長!豊中智樹の体当たり取材が今始まる!

第7話 

『わいらはなにわのバンクシー!偽装通貨流出事件!』

<闇市 西の住処>

由北高校闇市の一番奥。西の住処を目指し狭い道を自転車で駆けるのは寿司屋の跡取り梅ちゃん。
おかもち片手に自転車をこぐその後ろ姿は戦後から時が止まったままのようである。
無事たどり着いた梅ちゃんは威勢よく戸を開ける。

「ごめんよぅ!助六三人前お待ちぃ・・・ってなんでぇお前らも一緒かい」

西の隣には豊中と生徒会長の姿があった。
この三人が揃うとろくなことがない、梅ちゃんの感がそう告げる。

「ちょうどいいや、支払いはこいつでいいかい?」

豊中はニヤリと笑いながら一万円札を取り出した。

「へいへい大きいのね・・・ええとおつりっと」
「おい、豊中あまりいじめてやるな」
「ああ?」

怪訝な顔をする梅ちゃんを横目にカラカラと笑う西と豊中。
西は笑いながら梅ちゃんを叱る。

「おまえなぁ商売人のせがれならこんぐらいわかれってんだ」
「?・・・いやちょっと待ておらぁ料理人だよ!?」

何が何だかわからない梅ちゃんを西はまた笑う。
見かねた生徒会長は梅ちゃんから万札をひったくりこう続けた。

「偽札だよ、これは。よく見てくれ」

由北高校では防犯と経済の勉強のため学校内でのみ使える独自通貨が流通している。
その一万円札にはなにわのロッキー赤井英和が描かれているのだが・・・

「なんでぇ!こいつトミーズ雅じゃねぇか!?」
「そうだ、わが校の一万円札には本来赤井英和が描かれているのだが、このようにトミーズの雅が描かれた偽札が出回っているんだ」
「ふふふ、いっとくが一万円札だけじゃぁねぇぜ」

豊中はさらに五千円札を取り出す。

「ん?・・・ああ!こっこいつは葉加瀬太郎じゃないか!?五千円札はパパイヤ鈴木のはずなのに!」
「まだまだほれほれ」

最後に西は千円札を見せた。

「本物は船越英一郎だったな、こいつぁ・・・グッチ雄三・・・」

静寂が周囲を包む。

     ・・・・

・・・・      ・・・・

「これは無理がないか!?」
「ああ、そのおかげで今回の事件が発覚したんだ」

冷静に答える生徒会長と対照的にどんどんヒートアップする梅ちゃん。
ここだけ見れば年相応の馬鹿話に花を咲かせる学生そのものである。
笑いをこらえながら豊中は梅ちゃんが持ってきた助六をつまみながら話を戻す。

「さて、この偽札だが。西さん出回った時期と犯人に心当たりは?」
「さあねぇ、電子マネーを導入してからはてんで現物なんざみねぇからなぁ」
「こんな精巧な物を作るにはそれなりの印刷機がいるだろう、そんなもの隠せる場所なんかこの学園には・・・いや・・・講堂の連中か?」
「はっあいつらにそんなもん用意する資金も技術もありゃしないさ」

会長の推理を否定し西は偽札を照明に透かす。

「こいつらよくできた・・・それこそ機械で刷ったみたいだが・・・見ろ、こいつぁ手書きだ。一枚一枚微妙に違う。こんだけのもん描ける人間なんざ限られてくるんじゃぁねえか?」

バァン!

聞いた瞬間、豊中は勢いよく立ち上がり助六をかき込んだ。

「会長!支払いは任せた!!」
「なっ!貴様またか!?」
「君の依頼だ!!経費だろう!!!ごちそうさん!!!!」

豊中はそのまま飛び出す。

「・・・まあそう言われればそうなんだが。はあ、これで頼むよ」

取り出した一万円札はちゃんと本物の赤井英和。

「ダメだ日本円で払え」
「なんでだ?おまえさっきお釣り出そうとしてただろ、まあ小さいのもあるが」
「とぼけんな!馬鹿が!あんなの見せられてからこの金受け取るわけねぇだろ!!
「いいからうけとれ!日本円じゃ経費にならん!」
「知ったこっちゃないね!」

二人のやり取りを肴に西は新しい缶ビールを開ける。

「カカ、そうだそうだ、ガキはガキ同士バカやるもんさね」

つづく

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