豊中智樹はしたり顔 第2話『鋼の戦士か彷徨う骸か!ゾンビラグビー部特製ヒロポンプロテイン』後編


<グラウンド中央>

由北高校が誇る大グラウンドの中央。
豊中を追ってきた農園部の農園姉弟が捕らえられ甚振られていた。

「ぎゃぁ!」
「太郎ちゃん!もうやめてください!こんなこと!」
「やめるだぁ?おいおい太郎君は自分から仮入部してくれたんだぜ?」
「そうだよ、姉さん黙ってみていてよ。それよりも本当におまえらのタックル100発耐えたら僕たちを解放してくれるんだろうな?」
「ああもちろんだとも、そらしっかり耐えろよ」

ギャハハハハハハ   ヤレヤレェ

     ホレホレシンジマウゾォ

サッサトコロセヨォ    オレニモヤラセロヨ

少し離れたところから専用の部長椅子に座りラグビー部部長『不死身の大日』は処刑ショーを眺める。

「そろそろか、例の物を準備しておけ」

ワアアアーーーーーーーーーー

       ワーーーー

「ぐえぇ!!」
「ほれほれどーしたぁ!竿と玉食い千切って女の子にしてやろうかぁ?ぐへへへへ」
「太郎ちゃん!太郎ちゃん!もうやめて太郎ちゃん!」

77発、よく頑張ったが運動部ではない太郎にはここらが限界。
視界の端で泣く姉の姿が霞む。

パチパチパチパチ

倒れた太郎の頑張りを拍手でたたえながら大日がやってきた。

「頑張ったじゃねぇか坊主。約束は100発だったが姉弟愛に心打たれたよ。チャンスをやろう」
「え?」
「あれを持ってこい」

ガラガラガラ

台車で木箱が運ばれてくる、その木箱の中身はガソリンタンク!

「こいつで畑を燃やせ、そうすればおまえらは解放してやる。さあ選べよ大事な畑か弟の命か!」

大日はオイルライターを投げ渡す。

「そんな・・・」
「やめろ、姉さん大丈夫だから・・・こんな奴らの言いなりにならないで!」

花子は俯き覚悟を決め立ち上がった。

「決断が速い人間は好きだぜ、さあどうする?」
「私の答えはこれよ!」

そう叫ぶと花子はガソリンタンクを担ぎ上げガソリンを大日に向けてぶっかける!

「あなたたちの好きなようにはさせません!殺人の業を背負ってでも私は弟と畑を守ります!」
「てめぇいかれてやがんのか!?この人殺しぃ!」

花子がライターを掲げたその瞬間!

「そんな物騒なもの貴女には似合いませんよ」

カァン!

「きゃぁ!」

彼方から飛んできたマンホールの蓋が花子のライターを弾き飛ばす。

「なんだぁこれはぁ・・・」
「この声は」

少し離れた場所にある部長の椅子に立つ、彼こそ我らの豊中智樹!

「やはりあなたはガソリンよりも花の香りがよく似合う」
「豊中さん!」
「新聞部貴様さては逃げたな!川と繋がる下水道に!」
「生憎水泳は得意でね、息継ぎなしで太平洋横断だってして見せるさ」

シャっと飛び立ち大日の前に豊中は立ちはだかる。

「人が水浴びしている間にずいぶん楽しそうなことしているじゃないか」
「キザ野郎め・・・だが貴様が何度やって来ようと同じこと!野郎どもかかれぇ!!」

「「「「「うおおおおおおお」」」」」

部長の号令と共に飛び掛かる部員達!

しかしこちらも何度やろうと同じ事!一般部員が束になろうと豊中には届かない!

「ファーーーーーー!!!」

「「「「「ぐええええええ」」」」」

「俺に同じ手は通じないぜ」


グエエエエエ   イタイヨォ・・

   ハヤククスリヲクレェ・・・

ヒロポン・・・ヒロポン   シヌゥ・・・


「ぐふふ忘れたか?おまえがいくら部員を倒そうとこちらには特製プロテインがある!」

いつのまにかホースを手にした大日は再びプロテインを散布する!だが!!

「!?ぬぁぁんだ?この匂いは!?ま・・・まさか!?」

天から降り注ぐのは重く暗い液体、そう!その正体は『ガソリン』!!

「ふふん、すり替えておいたのさ」
「貴様いつのまにぃ」

豊中は先ほど弾き飛ばしたライターを拾い上げ、部長に向かいゆっくりと歩き出す。

「ひぃいいいいいいい!!!ゆっゆるしてくれぇ!!俺たちが痛みを感じないからって燃やされたら死んじまう!!!」
「さてどうしたもんかな?」

腰が抜けて動けない大日を豊中は見下ろす。その目は死刑執行人のそれである。

「ひっひっひっひいいいいいいいい!もうしませんからぁ!!!!ごかんべ!!!っ!!」
「・・・おいおいこいつ白目向いてら」

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<中庭>

翌日

農園部の畑はいつのまにか綺麗になっている。

「姉さん、何か手伝おうか?」

松葉杖をつきやってきたのは農園太郎。

「こら太郎ちゃん、怪我をしているんだから無理しないの。畑のことは大丈夫ですからね」

農園花子は朝早くから登校し畑の片づけをしていた。
ラグビー部の襲撃により作物は破棄することとなってしまったが、畑そのものが無事なら実はまた実る。
そう思い再び畑を耕す花子の心は逞しく強い。

「少し疲れたわね。太郎ちゃん休憩にしましょうか」
「うん、お茶を持ってくるよ」

農園姉弟を労うかのように涼しい風が吹く。

「あら、良い風ね、うふふ。」
「姉さん!これ!」

太郎が叫びながらピョコピョコ急いで帰ってくる。その手には号外が握られていた。

『鋼の戦士か彷徨う骸か!ゾンビラグビー部特製ヒロポンプロテイン』


ラグビー部の部長と部員は薬物所持の罪で一か月の停学、豊中は下水道侵入の罪で三日の謹慎処分となった。

次回

 『両国のミシュラン!猛毒相撲部の絶品毒ちゃんこ!』

豊中の真似は危険なので絶対にしないでね。


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