豊中智樹はしたり顔 第3話『両国のミシュラン!猛毒相撲部の絶品毒ちゃんこ!』後編

<相撲部 調理場>

早朝5時。
豊中は特技のピッキングで相撲部に侵入。家捜しを始める。
窯を次から次に投げ散らかし、引き出しをすべてひっくり返した末、ごみ箱の中から大量の蝮の腸を発見。

「やはりか」

証拠の品を丁寧にハンカチで包みながら豊中は話しかける。

「おまえらは普段からこの毒ちゃんこを食って耐性を付けていた、だから俺や他校の生徒にだけ毒が効いたってことかい」
「気が付いていたか・・・まさかあれだけ毒を喰らってまだ動けるとは・・・」

入口に立ちはだかるのはちょうど裏山で蝮を捕ってきた帰りの相撲部部長。

「なぜおまえらはそこまで勝利にこだわる」
「ふん、わしには責任があるんだ。人の上に立たない貴様に、何の責任も背負わない貴様にはわからんよ」
「好きに言え、どのみちお前さんはこれから裁きを受けることになる」
「おまえこそ好きに吠えるがいい、貴様はこれからちゃんこの具になるのだぁ!!」

互いに睨み合いけん制しながら二人は土俵に移動する。

<相撲部 土俵>

いつの間にか服を脱ぎ正装となった黄昏玄武と向き合う豊中智樹。

「ぬうううううぅうううん!!黄昏・千手張り手ぇえ!!」

豊中は腕を交差させ正面から防御する。だが!これが悪手!
力士の張り手は相手の分厚い脂肪の奥に衝撃を伝えダメージを与えることを目的とした技である!
そのため豊中の腕による防御など無意味!

「どぉすこぉい!!どすこいどすこいどすこいどっぉぉすこぉぉぃ!!!」

次々と繰り出される千の張り手に押し込まれる豊中、柱に背を預け耐え忍ぶ。

「これでぇ!しまいじゃぁ!!」

最後の張り手が撃ち込まれる。ドムッ!鈍く乾いた音の後、豊中が背を預けていた柱が粉々に崩れ去る。

「ほぉう・・・まだ倒れぬとはタフな男よ」

ふらつく豊中にとどめを繰り出す!
だが!豊中はベルトを引き抜き昼と同様に隣の柱に括り付け自分の身体を引き寄せ難を逃れる。

「馬鹿の一つ覚えか。ふふふいつまで逃げられるかの根競べ、受けてやろうじゃないか」
「いいや、もうおしまいだぜ」

豊中は着地した柱からもう一本隣の柱に向かう。
先ほど壊れた柱の対角線上、豊中はニヤリと笑うと・・・

ピシィ!!

両隣の柱をベルトで攻撃する豊中、すると柱はミシミシと音を立て綻び崩れ落ちた。

「なぁなにぃ!?」

昼間、そしてつい先ほど、豊中は柱にベルトを括り付けたとき余計に力を籠め柱にひびを入れていたのだ。
3本の柱を失った屋根は当然崩壊する!

ガララララララララララ!!!!!

屋根が土俵に崩れ落ちた。豊中は無傷の柱の下、安全地帯から下敷きになった黄昏玄武を見つめる。

「ヒュ~(口笛)ずいぶんと慕われたもんだ、部長さん」

瓦礫が動き中から現れたのは三人の副部長。
屋根が崩れる直前土俵に飛び入り黄昏玄武を庇ったのだ!

「おまえたち・・・なぜ・・・」

「物言いってやつですぜ部長」
「・・・ゲフッ」
「あんな卑怯な手に負けていい男じゃないんですよあんたは」

「こんな俺のために・・・ぐすっ」

副部長三人の思いが黄昏玄武の心に響く。
部員のため、勝利のため、言い訳をしながら卑怯な行為に手を染めていた未熟なその心に。

「すまないおまえたち、俺はもうお前たちを裏切りはしない正々堂々ガチンコだ!」

黄昏玄武は瓦礫の中から木片を拾い上げ、自身の背、玄武の目玉に突き刺した!
木片を引き抜くと玄武は血の涙を流す。
赤黒く輝く瞳に涙を蓄えるその姿は!

「俺は逢魔玄武(おうまげんぶ)!ここからが大一番だぞ!豊中智樹!」

仕切り直し!!!
覚悟を決めた逢魔玄武と豊中智樹の大一番。
先に仕掛けたのは逢魔玄武。

「逢魔・曼荼羅張り手ぇぇえ!!」

豊中を目掛け那由多の張り手が繰り出された。
視界を覆いつくす無数の張り手を前に豊中は一歩も引かない。
見つめるのはただ一点、逢魔玄武のみ。

「ファーーーーーーーーーー!!!!!」

押し出し。
いたってシンプル、何一つ無駄のない基本的な張り手。
だがそれこそが究極の一撃となる!

ビターーーーーーーーーン!!!

張り手の衝撃は逢魔玄武の意識を体の外に、その体を土俵外に押し出した!

「ぐえええええええええ!!!!!」

「「「逢魔玄武が負けた!?」」」

壁にたたきつけられ崩れ落ちる逢魔玄武。

「俺は昔本物の横綱に稽古を付けてもらったことがあってな、張り手は得意技なのさ。へへっ悪いがこれが千秋楽だな」


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「さあ、毒の一件、勝利への執着、洗いざらい吐いてもらおうか」
「ひいいいいいいいいいい!!!」


<校庭>

朝7時、いつもより騒がしい生徒たち。
その視線の先はもちろん、縛り上げられた副部長三人と髷を切り落とされ磔にされた逢魔玄武。
豊中の常識外れの執筆速度により書き上げられた号外がその周囲を舞う。

『両国のミシュラン!猛毒相撲部の絶品毒ちゃんこ!』

大黒星を付けられた相撲部一同を見上げる生徒会長。

「新聞部、やはり・・・」

事情を知らない副部長三人はお咎めなし。
逢魔玄武は情状酌量の余地ありとみなされ二週間の停学、豊中智樹は一週間の停学となった。

次回

『姿なき電撃カツアゲ犯!コンビニ袋にスタンガン! 』

豊中の真似は危険なので絶対にしないでくださいね。


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