豊中智樹はしたり顔 第7話『わいらはなにわのバンクシー!偽装通貨流出事件!』中編
<美術部 部室>
由北高校美術部部室!
美術部の部室とは言うものの普段は美術教室として一般生徒も授業で利用する大教室である!
横長の机がまるでそれが美術品であるかのように綺麗に並び、教室の脇には様々な工具から乾燥用の棚、そしてデッサン用の石膏像がおなじみマルスやブルータスの胸像、果てはダビデに仁王像まで無数に設置されている。
「さぁ~みなさぁ~ん、いっぱいいっぱぁ~い書いてくださいねぇ~」
机に向かう部員たちの周囲を巡回するベレー帽の男!
そう彼こそが!
美術部部長!!
『足塚 不二雄(あしつか ふじお)』!!!!
美術の神と謳われ多数の部員を抱える名物部長なのだ!!
モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!
モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!
モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!モシャ!
部員たちは一心不乱に偽札を描き続ける。
そのうちピタリと足塚は足を止めた。
「おやおやおやおやおや~あなた上手ですねぇ~う~んほんとお上手~」
一際上手な部員、彼が偽札に描くのは!トミーズ雅はおろか赤井英和を通り越し!中村雅俊!!
足塚の顔は笑顔だった。その言葉も上手い部員を褒める、どこにでもある、ありふれた指導の一幕に見える。
だが!生徒たちに走るのは緊張!
その笑顔を張り付けたまま足塚は隠し持っていたデザインナイフをその部員の右手目掛けて振り下ろす!
「なんで僕より上手なんですかぁ~?俺にも教えてくださいよぉ~どうすればこんないい腕になるんですかぁ~?わしにも教えてくれや!なぁ!?」
憎しみと共に繰り返し振り下ろされるデザインナイフ、穴だらけの手から流れ出る赤黒い絵の具は長机を染め上げる。
「喜べよぉ~おまえはわいより上手いんやからなぁ!!誇らしいよなぁ!!」
倒れた部員に馬乗りになり仕上げにかかる。
カシャ!
「!?誰じゃぁ!?今写真撮ったんはぁ!?」
辺りを見回すが誰もカメラなどもってはいない、そもそもこの状況を撮ろうなど肝の据わった生徒はここにはいない。
「私にはねぇ~肖像権があるんですよ~?無断で撮っていいわけないんですよね~」
・・・ ・・・・
・・・・
・・・ ほーう、それは失礼したな
どこからともなく声がする、次の瞬間!
ガシャアアアアアアアアアアアアン!!!!
轟音と共にガラスをぶち破り香港スターの様に登場するのは皆様ご存じ我らがヒーロー豊中智樹!
豊中は外の木に潜み写真を撮っていたのだ。
「偽札の件で張っていたんだが、おいおいこいつぁ別件で話を聞かなきゃならなくなっちまったなぁ」
「あなたは確か新聞部豊中君」
「パワハラなんて今時はやらねぇぜ、もっともこのデジタルの時代に偽札手書きしてる奴に言うことじゃねぇか」
豊中はカメラを片手に足塚を挑発する。
「はぁこれは困りましたねぇ~」
パンパン
足塚が手を鳴らすと突如後ろに飾ってあった石膏のダビデと仁王(吽形)が動き出し豊中を押さえつける!!
「なんだと!?」
「お馬鹿さぁ~ん!彼らは人間ですよぉ~僕が特殊メイクを施したんですぅ~?上手でしょ~さあさお客さんを処刑台に」
豊中は中央に溝が彫られた大きなテーブルに磔にされた。
動けない豊中が天所を見上げるとなんとそこには巨大な回転のこぎりが!!
これは本来大きな木材などを裁断するときに使う巨大電動のこぎりなのだが美術部では部員の粛清に使われている。
ウィィィィィイイイイイイイイイイイイイイン
電動のこぎりがうなり声をあげ豊中に向けてゆっくりと動き出した。
「さぁ~スケッチブックを用意しますよぉ~人が死ぬ間際の本物の表情をスケッチしましょうね~」
部員たちは豊中を囲みスケッチの準備に取り掛かる。
つづく
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