豊中智樹はしたり顔 第6話 『新幹線ハイジャック!青函トンネル危機一髪!』前編

街外れの山の上、そこにぽつりと建つ学校!

      『由北高校』

 部室棟二階の一番奥、彼はいつもそこに居る!

   彼こそがこの物語の主人公!
  その名を 「豊中 智樹」(とよなか ともき)

新聞部部長!豊中智樹の体当たり取材が今始まる!

第6話

『新幹線ハイジャック!青函トンネル危機一髪!』

<新幹線>

修学旅行!それは学生にとっての一大イベント!
修学旅行!それは人生最大の思い出作り!
修学旅行!それは窮屈な学校を離れ見知らぬ土地で仲間と過ごす最高の四日間!

これは由北高校も例外ではない。

そんな彼らの行先は定番北海道!

昨年開通した青森と北海道を結ぶ『新・青函トンネル』(なんと窓がある!)を
新型新幹線『A-470 からし』に乗って通過し最新技術を体験するという名目で行われるのが由北高校修学旅行だ。

そして豊中たちを乗せたその新幹線が今まさに!

PAAAAAAAAAAAAAN!!!!

「貴様ら大人しく両手を見える位置にあげろぉ!!」


ハイジャックされていた!!!


キャァアアアアア   オイオイオイオイ

    ナンダヨアイツラ!

 ヒジョウシキナ!   コレッテハンザイデスヨネ?

GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAN!!!!!

生徒たちの声をかき消すかのように手にしたライフルで威嚇射撃を行うテロリスト。
その音に怯えまた叫び声を次々と上げる生徒達、車内はまさに地獄絵図。
車内に轟く音の中からよく通る一人の声が聞こえた。

「みんな!犯人を刺激するな!大人しく従うんだ!」

大声で生徒たちに指示を出すのは由北高校生徒会長。
修学旅行下で気が大きくなった生徒達を守らなければならない。
この状況で目立つことがどれだけ危険でも会長にはその責任がある。

「流石は生徒会長さん、よ~く状況わかってんじゃないの」

会長の前に立つ覆面に迷彩服の男、そして背後から二人の部下。
彼らが持つ計三丁のアサルトライフルに囲まれ会長は冷や汗を流しながらも対話を試みた。

「貴様らは確かミリタリー同好会だな?目的はなんだ」
「よく知ってるねぇ。そうさ俺はミリタリー同好会会長・・・そうだな『サイレンス』とでも呼んでくれ」
「テロリストごっこも大概にしろ、なにが『サイレンス』だ。二年C組 武英 剣次郎だろ」
「本名を出すな本名をこちとら覆面までしてるってぇのに、しかしいい度胸だ。修学旅行を任されるだけのことはある」
「おまえたちみたいな不良がいなければ楽なんだがな」
「はっ災難だったな。選択制の修学旅行で教師全員が沖縄に行っちまって生徒であるあんたがここの責任者だ。同情するよ、コーヒーでもおごりたいぐらいさ」 
「銃を突き付けながらよく言う、それで貴様らの要求は?」
「さあな、クライアントに聞くこった。もっともここは通さねぇがな」

サイレンスは親指で自分の後ろにある運転席のドアを指さした。
会長たちが乗っているのは先頭車両。
ほかの車両がどうなっているのかはわからないが、この車両のテロリスト三人と運転席にいる何者かをなんとかしなければ。
思考を巡らせる最中!

グンッ!!!!

突如会長たちを過剰なGが襲う!

「これは!?加速したのか!?運転席の奴は何がしたいんだ!!」
「知らないっていってるだろ!」


ワアアアアアアアアアア    イッタイナンダ!!  

    キャアアアアアアア

オチャガコボレタ!   マダノンデルデショウガ!!!


再び生徒が騒ぎ出す。

「ちっうるせぇな、見せしめに一人ぶっ殺せば静かになるかぁ!?」
「おいやめろ!!」

揺れる身体を整えサイレンスは泣く女生徒に拳銃を向け・・・

BAAAAAAAAAAN!!!!!

静まり返る車両、しかしこの轟音はサイレンスの拳銃が放ったものではなかった。

「お弁当~お弁当はいかがですか~美味しい美味しいお弁当、お茶にジュースにコーヒー、ほどよく食べやすいアイスクリームもご用意してます~」

それは勢いよく開いた車両後方ドアの音だった。
そのドアから一台車両販売のワゴンがやってくる。

「へい兄ちゃん、今見ての通り取り込み中なんだ。後にしてくんねぇかな」

テロリストの一人が車内販売員の肩に手をかける。

ゴギャ!

これはテロリストの腕の骨が砕けた音。
販売員は眼にも止まらぬ速さで腕の骨を折りながら背後に回り込み、盾にしながらもう一人を奪い取った銃で撃つ。

「特殊ゴム弾だから安心しな・・・って言うまでもないよな」

盾にしたテロリストを絞め落とし、販売員は帽子と服を脱ぎ捨てる。

その正体は毎度ご存じ!!!!

「「豊中智樹!!!」」

「人がトイレに行っている間に好き放題してくれたじゃないか、ほかの車両にいたおまえの仲間は全員ぶちのめさせて貰ったぜ」

豊中はいつものようにキザに決め込んだ。

「貴様ぁ!」

豊中にライフルを向けるサイレンス、しかし豊中智樹は常に一枚上手。

「ファーーーーーーーー!!!」

勢いよく突っ込んでくるワゴンはライフルの弾を物ともせずサイレンスを撥ね飛ばす!

「ぐええええええええ!!!!!」
「そのワゴンは俺のおごりだ、まあゆっくりコーヒーでも飲めよ」

<<<<<<由北高校 ミリタリー同好会会長 サイレンス>>>>>>

      <<<<完 全 撃 破>>>>

「豊中!まだ終わりじゃない、こいつらの依頼主が運転席にいるはずだ。そいつを止めるぞ」

黙って頷き運転席へ向かう。

「ちょちょちょちょっと待ってくれよ!俺もつれてってくれ」

座席からひょっこり現れたのは寿司屋の梅ちゃん。

「なんだおまえもこの車両だったのか」
「こいつは心強いな。いいぜ、来てくれ」 

三人は運転席に踏み込む、だがそこは空っぽ!無人!

「なん・・・だと・・・」
「どうなってんだいこいつぁ」

困惑する豊中たちの頭上、スピーカーから車内放送が流れる。

『ポオォォォォォン この電車は ただいま  新・青函トンネル に 入りました ブホホホホホホホホ』

「いったい何いってんだ」
「とにかく声の主を探すぞ、協力してくれ梅ちゃん」
「合点!」

三人は新幹線を虱潰しに探す。


つづく!!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?