豊中智樹はしたり顔 第8話『怪電波受信中!北の国からゴルフボール!』前編

街外れの山の上、そこにぽつりと建つ学校!

      『由北高校』
 
 部室棟二階の一番奥、彼はいつもそこに居る!
    
   彼こそがこの物語の主人公!
  その名を 「豊中 智樹」(とよなか ともき)

新聞部部長!豊中智樹の体当たり取材が今始まる!

第8話

怪電波受信中!北の国からゴルフボール!

<新聞部部室>

いつもは写真等捜査資料が並ぶ長机。
今日はよくわからない怪しげな機械類が接続された巨大な無線機が置いてある。

ピーガリガリガリガリガリガリ

ヘッドホンを耳に当てる豊中、かれこれ2時間はそのまま動かない。
時折ヘッドホンから声が聞こえる。
日本語と朝鮮語が混ざった声だが混線しているのだろうか?

『ザッザザザザザザザ・・・・ええ・・・ではそのようにザザザザザこの地を差し上げザザザザザザ』

いや、違う。
「間違いない、こいつらは会話している。誰だか知らねぇがこいつらこの学校を北朝鮮に売ろうとしてやがる!!」
豊中の母校愛は誰よりも強い。このような輩を当然許せるはずもなかった。
ヘッドホンを投げ捨て豊中は部屋を飛び出した

<放送部 電波塔>

由北高校の敷地のはずれに建つ電波塔。
7階建ての建物で最上階一面ガラス張りの部長室や1階~3階までぶち抜いた巨大なスタジオ等世界的に見ても充実した設備となっている。
その1階に放送部の部室があった。
毎日昼休みはこの部室の1階、ガラス張りになっている放送ブースで公開生放送が行われている。
ガラス窓いっぱいに張り付く男子学生達、大半の生徒は聞き流す昼の放送だが一部の生徒から熱狂的な支持を受けているのだ。

ワアアアアアアアアアアアアア

『はーいありがとうございまーす、わああどうもどうもー』
『いっつもいっつも友達おるんかこいつら?そこのおまえもおまえも毎日居るやんけ・・・てゆうかおまえサンドイッチ食うな、なに食うとんねんガラスにマヨネーズ付けんなボケェ!!』

ドドドドドドドドドド

『今日は観覧のみなさんいつもより元気ですねー』
『真昼間っからギンギンやな一発抜いてこいおまえら(おいスタッフなんやねんこの音さっきから)』

ガラス前が騒がしい。
かと思えばみるみる人混みが割れる。

『ちょっとやめてくださいよ下ネタばっかり言うから男性リスナーしかいないんですよ』
『ええねん!昼の放送なんかモテへん奴しか聞いてへんねんから文句あんねんやったら直接言いに来いアホが』

ガシャアアァアアアアアアアアアアアン

放送ブースのガラスを突き破りアクションスターが如き登場をするのはご存じ豊中友樹。

『キャアアアアアアアアアアアアアアア』
『なぁぁぁぁんやおまえはぁ!?』
『俺かい?俺は新聞部豊中智樹この公開処刑のメインパーソナリティだ!』

奪い取ったマイクを投げ捨て豊中友樹は放送ブースのドアを蹴破り放送部電波塔を駆け上がる!

ナンダテメェハ!!!  ケイサツヲヨブゾォ!!

  デアエデアエ!!

フシンシャダァフシンシャガイルゾォ!  オイ!サスマタモッテコイ!!

「ファーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

「「「「「ぐえええええええええええ」」」」」

豊中友樹はベルトを振り回し襲い来る放送部メンバーを次々なぎ倒す!豊中は止まらない!!!


<放送部 電波塔 最上階>

バアアアアアアアアアアアアン!!!
最上階にある部長室のドアが勢いよく蹴破られる!

「貴様が放送部部長 江仁熊 安吾(えにぐま あんご)だな!!?」
「げぇっ!新聞部部長豊中智樹!」

豊中は驚く放送部部長の首にベルトを巻き付け締め上げる。

「貴様がこの学校を北朝鮮に売り渡そうとしているのはわかっている!!さあはけぇ!!!」
「ぐえええええなんのことだぁ!知らない!知らないぃぃ!!」
「嘘をつくなぁあああああああ!!!!」


部員が一人駆け寄ってくる。

「違います!本当なんです聞いてください!ほら部長きっとあの怪通信のことですよ!」
「あっあれかぁ、あれのことなら当局も把握しているぅ!」
「ほう・・・」

豊中は拘束を解いた。

「げほっげほぇっ・・・まさかあの通信を傍受している者が我々以外にいたとはね」
「おまえたちが通信していたのではないのか」
「そんなことをするわけがないだろう、いや、そうか、個人用通信機の精度では完全な傍受もできないだろうからな・・・」
「なにがいいたい」
「奴らの会話は全て文字に起こしてある。おい!あれを持ってきてくれ」

部員に支持を出し資料を持ってこさせる。

「証拠を揃えてから生徒指導部に通報しようと考えていたが、君に託したほうが良さそうだ」

受け取った資料を開きテーブルに置こうとした瞬間。

ボッ!

鈍い音がした。
その直後江仁熊が倒れる音が続く。

「部長?いったいどうし・・・ひぃっ!」

部員が倒れた部長の顔を覗く。
その顔はいつもの見慣れた部長の顔だった、ただ一点額にめり込んだゴルフボールを除いて。

「狙撃だ!!!!!伏せろ次が来るぞ!!!」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!

豊中が叫ぶのと同時に窓ガラスが粉々に砕け、雨の様にガラス片と無数のゴルフボールが降り注ぐ。

<裏山>

「ハーーーーイ、UTIKATAヤメーー」

双眼鏡を覗く色黒で大柄な一人の男。
電波塔の部長室に300発のゴルフボールが撃ち込まれ爆発するのを確認し部員たちに掃射の停止を命じた。

「ンンンンンンンーーー♪ヤハリ我ガ部ハ、コントロールガ自慢♪」

一列に並んだ部員たちによる完璧なコントロールのショットにご満悦の様子。

「イカニMONSTER豊中智樹トイエドモ、コレジャHI☆KI☆NIKUネ♪」

双眼鏡を投げ捨て煙が上がる部室を背に両手を広げ歩き出す。

「ココカラハBUSINESSノ時間ネ♪FUFUFU☆」

男は運転手付きのベンツに乗り込んだ。

続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?