豊中智樹はしたり顔 4話『姿なき電撃カツアゲ犯!コンビニ袋にスタンガン! 』 後編
<部室棟>
運動部の部室棟二階『ムエタイスタンガン部』の部室からバカ騒ぎする声と爆音の音楽が聞こえる。
部室内に響き渡るデスメタルを上回る声量でムエタイスタンガン部部長『アルセーヌ・立山』が叫ぶ。
「おい!ビールが足りねぇぞ!!ビールがよぉ!!!」
投げつけられたビール瓶が壁に当たり砕け散る。
「ひぃっ!すすすすみません!先ほど発注したのでもうすぐ到着するかと!」
「使えねぇ一年だなぁおい!俺様のスタンガンとムエタイどっちで気合入れてほしいんだぁ?あぁん!?」
ドンドンドンドン
ドアをたたく音が聞こえる。
「ほほほほら!ちょうど来たみたいですぁ!だから気合は勘弁してね」
そそくさとドアに向かう一年。
バァン!!!!
勢いよく開くドアに吹き飛ばされる。
哀れな一年生はそのままアルセーヌ・立山の方に!
しかしアルセーヌ・立山も達人であります、飛んできた一年を見事なハイキックで積み上げたビールケースに蹴り飛ばす。
ガシャン!ビールケースと共に崩れる哀れな一年。
「ひ・・・ひどい・・うう」
「お待ちかねのビールじゃなくて悪かったな」
ドアを蹴破り入ってきたのは我らが豊中智樹、さながら西部劇のヒーローのようでありました。
「てめぇが噂の新聞部かぁ!うちの可愛い一年にずいぶんなご挨拶じゃねぇかえぇ!?」
「えらく自分勝手な部長さんだな、アルセーヌ・立山」
ビールを飲み干し気合十分のアルセーヌ。
「豊中ぁ、ここに来たってことはよぉ!つまりはそういうことってことだよなぁ!?」
構えるアルセーヌ・立山。基本的にはムエタイの構えそのものだが通常のムエタイと一点決定的な違いがある。
彼の右手には黒く光るスタンガンが握られていた!
目にもとまらぬ速さで間合いを詰めるアルセーヌ、そして右手から繰り出されるフェンシングのような猛烈な連続突き!
しかし豊中智樹、そんな猛攻もなんのその!
右に左に華麗に避けるばかりか、いつのまにかタバコまで咥えているではありませんか。
チッ!スタンガンで器用に火を着ける豊中。
「ふぅ~ちょうどマッチを切らしててな助かったよ」
「ぐぬぬ貴様ぁ」
「しかしそのスタンガン、いい威力だがムエタイスタンガンの本質はそっちじゃなぇ。ムエタイの方にあるな」
豊中智樹はしたり顔で語る。
「その通り、大した観察眼だ褒めてやるよ」
チリッチリッ、アルセーヌはスタンガンで威嚇しながら話す。
「スタンガンは確かに強力だが一撃で敵を倒すなんかできやしねぇよ。首筋に2~3秒当て続けるなら話は別だが、実戦じゃそうはいかねぇ」
「スタンガンはあくまで相手を怯ませるだけってことかい」
「その通り。一瞬でも怯んでくれりゃあ俺様無敵のムエタイが炸裂するってわけよぉ!」
「へぇそりゃ面白い、俺もやってみようかなっと!」
豊中は煙草を天井の火災報知機に向かって蹴り上げる。
「なんだと!?」
火災報知器が鳴り響きスプリンクラーから水が降り注ぐ。
バリバリバリバリバリバリバリ!!!!
スタンガンを付けっぱなしにしていたアルセーヌは当然感電!
すかさず豊中膝蹴り炸裂!!
「ぐえぇええええええ!!!!」
倒れたアルセーヌは電撃と膝蹴りのダメージで起き上がれない。
ドタドタドタドタ!!!
火災報知機の通報を受けた生徒会長と会長率いる生徒指導部の機動隊が乗り込んできた。
「なんだこれは!おい豊中!貴様はなぜここにいる!?一人で行くなといっただろう!!」
西からの情報をもとに踏み込む準備をしていたが、豊中に先を越されたのだ。
「俺は欲張りでね、お楽しみは独り占めしたいのさ」
「貴様・・・まあいい!おまえら全員ここを動くなよ!まとめて拘束しろ!」
機動隊が部長を起こす。
「ちっここらが潮時か、盗んだ50万はロッカーに入ってる。さっさと持っていきやがれ」
「カツアゲした金はどうした?そっちも出してもらおうか」
「あぁん?なんだそりゃ知らねぇざぁっ!!!」
言い終える前に豊中の蹴りが命中!
「豊中!貴様何をしている!」
「ええい!嘘をつくなぁ!!!貴様が連続電撃カツアゲ事件の犯人だろう!そうに違いない!そうだと言えぇ!!」
「やめろ豊中!こいつを取り押さえろ!」
機動隊が盾で抑え込もうとするが所詮は人間、豊中を止めることはできない。
「ひいいいい!やめてくれぇ知らない!俺はカツアゲなんかしてねぇよぉ!生徒会室の鍵だって倒れてた生徒会の奴からくすねただけさぁ!助けた駄賃によぉ!」
「ファーーーーーー!!!!」
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「豊中・・・」
「こいつじゃ・・・なかった・・・」
スプリンクラーの水が豊中の頬を伝う。
<校庭>
翌日校内に新聞がばらまかれる。
『姿なき電撃カツアゲ犯!コンビニ袋にスタンガン!』
しかし、磔にされているはずのアルセーヌの姿はない。
<闇市>
由北高校闇市名物「蒲焼串」高級食材の鰻を手軽に食べられることから生徒たちに人気の逸品。その屋台に豊中の姿はあった。
「3本くれ」
「2本で十分だよ」
蒲焼を受け取り立ち去ろうとする豊中に生徒会長が語り掛ける。
「アルセーヌ・立山の身柄はこちらで拘束している、磔にできなくて残念だったな」
「まさか」
「電撃カツアゲ犯は奴じゃなかった、この見出しはなんだ」
「餌さ、真犯人を吊り上げるためのな」
豊中智樹は不敵に笑う。
電撃カツアゲ犯はアルセーヌ・立山ではなかった!!
学園の危機はまだ去ってはいない!
真犯人はいったい誰なのか!?
次回解決編!刮目して待つべし!
次回
電気ウナギは虎の夢を見るか!?
豊中智樹の真似は危険なので絶対にしないでね。
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