豊中智樹はしたり顔 第3話『両国のミシュラン!猛毒相撲部の絶品毒ちゃんこ!』前編

街外れの山の上、そこにぽつりと建つ学校!

      『由北高校』
 
 部室棟二階の一番奥、彼はいつもそこに居る!
    
   彼こそがこの物語の主人公!
  その名を 「豊中 智樹」(とよなか ともき)

新聞部部長!豊中智樹の体当たり取材が今始まる!

3話 

『両国のミシュラン!猛毒相撲部の絶品毒ちゃんこ!』

<新聞部 部室>


新聞部部室の長机に捜査資料がずらりと並ぶ。
今回の調査対象は由北高校相撲部。
相撲部は昨年代替わりしてから怒涛の勢いで大会を勝ち抜き強豪校の仲間入りを果たした。
だが豊中が気になったは相撲部の強さの秘密より対戦相手達の不可解な病欠だった。

「おかしい・・・他校の相撲部たちが全員我々由北高校相撲部と練習試合をした翌日に体調不良で入院している・・・奴らが大会で勝ち上がったのもこのためだ」

事実トーナメント表を見ると由北高校は不自然なほどに強豪校と戦っていない、全ての高校が棄権していたのだ。

「それにこの症状・・・どうやら話を聞く必要があるな・・・!!」

勢いよく豊中は立ち上がり部室を飛び出した。

<相撲部 稽古場>

由北高校体育館の裏手にある相撲部の稽古場。
一高校の稽古場ではあるが、他校との試合用に造られた立派な屋根付きの土俵と稽古用の土俵2つ、さらには専用の調理設備と本物の相撲部屋と変わらない設備を備えている。
放課後若き力士の汗と怒号の飛び交う部室に豊中は足を踏み入れる。

「邪魔するよ」
「なぁんでごわすか」

練習中の部員が手を止め近寄ってきた。

「俺は新聞部部長豊中ってもんだ、ここの部長さんに用がある。隠すとためにならないぜ」
「貴様ぁ・・・新聞部だとぉ・・・?」


オッオイ・・・    トヨナカッテアノ・・・

  モウオシマイダァ・・・

イテテ      アシグネッタデゴワスカ?


「「「待てい!」」」

部屋の奥から現れた三人の力士。

「わしは相撲部副部長三人衆がひとり昼朱雀」
「同じく夜白虎」
「・・・」

背中にそれぞれ四聖獣の入れ墨を入れた副部長たち。
副部長三人衆は豊中を取り囲む。

「貴様の噂は聞いているぞ新聞部。妙な言いがかりをつけて学校中の部活を襲って回っているとか」
「言いがかりとは言ってくれるじゃねぇか全員裁かれるべくして裁かれた悪党だってのにな」
「俺たちが悪党だとでも言いたいのか!?」
「火のないところに煙は立たないって言葉聞いたことねぇか?」
「黙れ!我ら相撲部への侮辱をゆるすわけにはいかん!稽古をつけてやる!土俵に上がれ豊中智樹!!」

ヒョイっと土俵に飛び乗る。
三人の副部長は豊中の後を追い土俵に上がった。

「なんだい全員で相手してくれるのかい、手厚いね」
「どこまで軽口を叩けるかな、いくぞ!!!」

掛け声とともに夜白虎が猛突進!
だがその程度豊中にはなんてことはない、垂直ジャンプで軽々と飛び越す。
余裕の笑みをこぼす豊中だが油断大敵!
なんとその目の前には同じく飛び上がった二人目の副部長昼朱雀がいるではありませんか。

「馬鹿め!かかったな!」

空中で逃げ場のない豊中に張り手を繰り出す昼朱雀!

「・・・ぬぅ!」

しかし豊中も達人!
空中で上体を反らし張り手をギリギリで避ける。

「やる!だがもう一人!」

豊中を見上げる夜白虎。
その視線の先、豊中の上!
3人目の副部長がさらに高く飛び上がり豊中に全身全霊の張り手を見舞う!!


「ルォオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!」

200キロの巨体+重力+渾身の張り手!!

BAKOOOOOOOOOOOOONNN!!!!!!!!

部室全体が震えるほどの衝撃!
土俵から爆撃を受けたかのような土煙が上がり周囲を見守る部員たちの視界を奪う。

ヤベェヨヤベェヨ・・・     ミシィッ

    トンデモネェヤ

キュウキュウシャヨブデゴワスカ?    ヤメヨウカナコノブカツ

土煙が落ち着く。土俵には巨大なクレーターがぽっかりと開いていた。
そこに豊中の姿はない。

「・・・!!!!!????」

豊中は三発目の張り手が当たる瞬間引き抜いたベルトを天井を支える柱に巻き付けた。
そしてベルトを手繰り、体を柱の方へ引っ張って回避不能の張り手を避けていたのだ。


「わしらの三連張り手を無傷で切り抜けるとは・・・」
「なあ副部長さん」

豊中は足に着いた砂を払いながら三人を見る。

「相撲ってのは土俵に手を着いたら負けなんじゃないのか?」
「なっ・・・!!」


パチパチパチパチパチ
突如土俵に響く拍手。

「ははははまさか副部長三人衆相手にここまでやるとはな」
「あんたは?」
「わたしは相撲部部長 黄昏玄武(たそがれ げんぶ)だ。以後お見知りおきを」

玄武の入れ墨を背負った由北高校相撲部部長、彼の玄武は未完成故色と眼がない。
部長の座に就きながらもいまだ未熟と自戒の意味が込められている。

「だがな聞屋さん土俵での武器もルール違反だぞ」
「へっこれは一本取られたな」

豊中はわざとらしく肩をすくめる。

「さて部長さん、あんたに聞きたいことが・・・」
「まあ待て、おい1年準備はできているな?」
「はい!ただいま!」

1年生がワゴンを押す。ワゴンにはアツアツのちゃんこ鍋が乗せられていた。
黄昏玄武はちゃんこを掬い山盛りのお椀を豊中に差し出した。

「こうやって戦った相手に飯をふるまうのが我々の流儀だ。受け取ってくれるな?」
「礼には礼を尽くすのが俺の流儀だ、いただこう」

山盛りの野菜と肉団子は薄く湯気を上げる。

「ほう・・・これは生姜のよく効いた、それにこの肉団子軟骨かい?」
「ふふふ・・・食通だねぇ」
「しかしこの出汁・・・わからん、なあもう一杯くれよ」

豊中は気に入ったのかちゃんこのお代わりを要求した。

「いい食べっぷりだ、おいおまえら!聞屋さんに負けるなよ!」

「「「「「「「「ごっあん!!!!」」」」」」」」

豊中と部員たちがちゃんこを平らげる頃には日は落ちすっかり夜になってしまっていた。
下校時間はきっちり守るのが彼ら由北高校生徒のいいところ。
取材は明日だと、豊中は相撲部を後にした。

その日の晩・・・

<豊中邸>

深夜3時、豊中は突然の腹痛に目を覚ます。

「ぐおおおおおおおおお!!!!」
「!!!いかがなさいましたか!?坊ちゃま!?」

豊中の部屋に駆け込んできたのは、古くから豊中家に仕える執事の宮内。

「こっこれは!毒!」
「宮内・・・血清を持ってきてくれ、予想していた通りだ・・・」
「蝮の血清でございますね。しばしお待ちください」

宮内が持ってきた血清で一命をとりとめた豊中。

「ありがとう宮内。やはり俺の推理は当たっていたようだ」
「相撲部が毒を盛っていた・・・と、よく毒の種類までわかりましたね」
「入院した他校の相撲部たちの症状が蝮の毒によるものだったからな」

豊中は制服に着替える。

「さてこれではっきりした、黄昏玄武貴様は黒だ」
「いってらっしゃいませ坊ちゃま」

豊中は夜の闇に消える・・・目指すは由北高校相撲部だ!
  

つづく


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