豊中智樹はしたり顔 4話『姿なき電撃カツアゲ犯!コンビニ袋にスタンガン! 』 前編

街外れの山の上、そこにぽつりと建つ学校!

      『由北高校』
 
 部室棟二階の一番奥、彼はいつもそこに居る!
    
   彼こそがこの物語の主人公!
  その名を 「豊中 智樹」(とよなか ともき)

新聞部部長!豊中智樹の体当たり取材が今始まる!

第四話

姿なき電撃カツアゲ犯!コンビニ袋にスタンガン!


<新聞部部室>

「・・・電撃カツアゲ犯?」

新聞部部室、今日は珍しく客人が一人。

「最近この学園の生徒が帰宅中何者かに襲われ現金を奪われる事件でな。我々生徒会のメンバーも被害にあっている」

眼鏡のいかにも切れ者といった風貌の男、彼は由北高校の生徒1000人を束ねる生徒の頂点!生徒会長である!

「何者かってことは何だい覆面でも被ってるってかい」
「いや一人でいるところを後ろからバチッっと強力な電撃で気絶させられているようだ。だから誰にもその姿を目撃されていないんだ」
「ほぉう・・・だがそいつは警察の案件じゃぁないか?犯人がうちの生徒である確証もあるまい」

会長はバツの悪そうな顔。

「それがな、まだ公表していないんだが生徒会メンバーが襲われたといっただろ?そいつが持っている鍵が奪われてな。生徒会の金庫から活動費用50万円が盗まれたんだ」
「なるほど、そいつは生徒会長様直々に持ち込んでくる案件だな。いいだろう少し調べるよ」

椅子から立ち上がる豊中。

「おい、待て私も行く」
「好きにしな」
二人の奇妙な共同捜査がはじまった!!

<食堂の裏>

由北高校の校舎から南東に位置する食堂の裏。
食堂のわき道を進むと机や椅子、ほかにはジャンクのパソコンや粗大ごみが放置された資材置き場がある。
積み上げられた資材の山の裏に由北高校名物『闇市』が広がる。

「なっ・・・なんだここは。おい豊中!説明しろ!」

生徒会長とは正義の体現、真面目・真・誠実、これが服を着て生きているような人間であり。彼の歩んだ人生もまたそれと同じである。
彼と彼の人生にとってこの闇市はありえない物の集まりであった。
路上に敷かれた茣蓙の上には片一方だけの運動靴や海賊版教科書、中国製のゲーム改造キットのような犯罪ギリギリの物から。
盗品の財布や電動工具、医師の処方がなければ販売されない薬の数々が並んでいる。

「戦前から続くこの高校の伝統だよ。こっちだ」

人が2人すれ違えるかどうかの幅の道に火のついたドラム缶や酔っぱらってひっくり返っている生徒が多数見受けられる。
豊中はまるで庭のようにその狭い道を歩く。

「おい、まて!なんだあのドラム缶は!火を焚いているのか!?いや!犬か!あいつら犬を焼いて食ってるのか!?」
「狩猟部の連中だって裏山で捕った兎やイタチを食ってるじゃないか、それと何が違う」
「いや倫理的にだな」
「命を頂くのに倫理も糞もないさ、さあ着いたぞ」

闇市の最深部、茣蓙の上に座るジャージ姿の老人、煙草を片手にこちらを見つけると朗らかに微笑む。

「よぉ豊中の久しぶり、お連れさんも一緒なんか珍しいじゃんか」
「やあおやっさん、白内障の手術は終わったのかい?」
「あぁ?とんだ藪医者だよあいつぁ」

親しげに話す二人とこの異様な場所に生徒会長は驚きっぱなしだ。
そもそも生徒会長である自分が知らない教師でも用務員でもない老人が学校の敷地内にいるなどあってはならない。
警備員に通報するべきか、鋭い目つきで老人を見つめる。

「ん?ああ紹介が遅れたな、彼は西さん。この闇市を仕切る俺たちの大先輩だ」
「大先輩?OBの方なのか」
「いや、50年留年している現役の高校三年生だ」
「おいバカタレ!まだ49年だ」

二人の馬鹿笑いからきっと自分より長い付き合いと察する生徒会長。
こんなにも肩の力を抜いて話す豊中の顔を見るのは初めてだ。
二人の会話を邪魔するのは悪いがこの異様な場所から早く解放されたい、さっさと本題に入ってくれと会長は願う。

「悪い長話しちまった」

豊中コホンと咳払い。

「なあおやっさん、最近急に羽振りが良くなった奴に何か心当たりはないか?」
「ああ~そういや最近ビールの発注が妙に増えたとこがあったかな」
「それはどこですか!?」

食い気味に聞く会長に西はニヤリと笑う。

「おいおいおいおい、情報だけ持ってこうってか?なんか買っててくれよう。ここは市場だよ?」
「へっ商売上手め。そうだなじゃあタバコを・・・『レッドズ・バット』を1カートンくれ」
「まいど」
「会長支払いは任せたぜ」

突然の話に驚く会長、そんなに手持ちはないぞ!

「!?」
「・・・ペイペイつかえるよ?」
「お願いします」

つづく

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