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チームと共闘するファン 「オレンジアーミー」 を広める仕掛け人、チーム広報のビハインド・ザ・シーン(前編) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ様/クライアントインタビュー記事】

こんにちは。Stats Performの檜山です。
今回は、ジャパンラグビーリーグワン所属のクボタスピアーズ船橋・東京ベイのクラブハウスに伺い、広報担当の岩爪さん、副務の武智さんにインタビューさせていただきました。
当社が提供する、『PressBoxグラフィックス』 の活用法だけでなく、高いエンゲージメントを生み出すSNSでのハッシュタグ戦略、毎回60人以上を集めるオンラインでのファンミーティングなど、「オレンジアーミー」 と呼ばれるスピアーズファンを楽しませる施策を打ち続けるお二人に、活動の裏側についてたっぷりとお話していただきました。

インタビューをさせていただいた岩爪さん(右)と武智さん(左)。

檜山:岩爪さん、武智さん、本日はよろしくお願いいたします。まずは岩爪さんについて聞かせてください。岩爪さんは元々クボタスピアーズの選手としてプレーされていましたが、選手時代から現在のチーム広報になられた経緯を教えていただけますか。
 
岩爪さん:はい。僕は選手としては10年間クボタスピアーズでプレーをして、2018年3月に引退しました。当時はクボタの社員選手としてプレーしながら、会社では人事・総務の仕事に携わっていました。10年間選手を続けた後、そろそろ引退のことも考えていたなか、会社での仕事も好きだったので今後は会社での業務に集中したいという思いで営業職の希望を出していました。
ちょうどその時期にチームから退団の通知を受けたのですが、同時にチームのGMから来季からのチーム広報・普及担当のポジションのオファーをもらい驚きました。そのときは正直あまり自分に向かない仕事だなと感じていましたが、それでも会社の仕事かチームでの新しい役割で新たなスタートを切るか、真剣に悩んだ上で、トップリーグ2018/2019シーズンからチーム広報・普及担当としてまたチームに貢献していこうという決断をしたのが経緯です。その際、一つだけチームにお願いをしました。
 
檜山:どんなお願いをしたのですか?
 
岩爪さん:クラブハウスのジムを使わせてくださいというお願いをしました(笑)。
 
檜山:

現役時代はプロップだった岩爪さん。現在は違うジムで体を鍛えているそうです。

ホームとして選んだ「えどりく」

檜山:岩爪さんがフロントに入られた時期は、ちょうどトップリーグから現在のリーグワンに変わるというラグビー界の大きな変革期でした。特に新リーグでは興行権がチームに移り、チケット収入などをチームが管理することになったといった変化がありましたが、そのときに感じていたチーム運営の課題はどのようなことがあったのでしょうか。
 
岩爪さん:まず運営面での大きな課題のひとつはスタジアムでした。セントラルな試合会場である秩父宮での試合開催が多くなり、サッカーなどと違い、どこのチームも自分たちのスタジアムを持っていないというのが課題としてありました。
自分たちが運営していける試合会場を選定し、どのように地域の方に足を運んでいただけるかという仕組みづくりが当時の課題でした。この課題は私たちも前々から認識し、色々と候補会場を見て回り、当時リーグが最初に提示していた15,000人規模の会場は無理だとしても、チームが実際に運営していけるスタジアムとして、現在の江戸川区陸上競技場を選定しました。
 
檜山:そういう経緯で今の江戸川に決まったんですね。
 
岩爪さん:はい。実際に2022シーズンは5試合を江戸川で開催できましたし、その前シーズンも5試合開催することができました。来季は昨季以上の江戸川での試合を開催したいとチームは考えていますので、スタジアムという課題については、一つ上手くいっている点なのかな思っています。ただ、規模という点ではまだ満足できていないですし、リーグワンが求めている規模を満たしていないこともありますので、まだまだ取り組まなければいけないことがあると思っています。

「親近感」と「一体感」で、地元に愛されるクラブへ

檜山:トップリーグ時代に比べて、ファンづくりやファンとのコミュニケーションをどのように取っていくかという点はどのような方針で取り組んで来られたのでしょうか。
 
岩爪さん:クボタスピアーズは、トップリーグ時代からファンとのつながりはかなり意識していました。もちろん、リーグワンを見据えてという理由もありましたが、チームの存在意義として、強くなることの他に我々のビジョ
ンとして、「Proud Billboard (=強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの『誇りの広告塔』となる)」というものがありますので、このビジョンに沿った活動はトップリーグ時代から継続してきました。そのため、ファンに向けた活動に関して、リーグワンになったから何かを変えたということはありません。
 
檜山:素晴らしいチームビジョンですね。
 
岩爪さん:ただ、トップリーグ時代は全国で試合をしていたので、全国に対してのファンづくりをしてきましたが、リーグワンになってからは、よりエリアを集中したファンづくりという点が一つの課題となります。今までは、
フォロワーやファンクラブへの加入などで見ていたものを、リーグワンになってからは、自分たちのスタジアムに足を運んでもらうところまで出来てこそファンづくりと言えると思っているので、そこを重視した取り組みをしています。
 
檜山: 現在も引き続きコロナウィルスの影響があるかと思いますが、そのような中でファンとのコミュニケーションをどのように取られてきたのでしょうか。
 
岩爪さん:2019年はラグビーワールドカップの効果でファンが増え、トップリーグ2020シーズンではリーグ自体が途中で中止となってしまいましたが、ワールドカップでラグビーやチームの魅力に共感してくれたファンを絶対に手放したくないという思いから、オンラインイベントなどを開催して積極的にファンとのコミュニケーションを図ってきました。選手のトークイベントやルール解説イベント、チームのヒストリーを伝えるイベントなどを開催し、ラグビーに親近感を持ってもらうための取り組みでした。

檜山:ファンとのコミュニケーションはかなり重視されていたんですね。
 
岩爪さん:なぜコミュニケーションを重視したかというと、クボタスピアーズにはワールドクラスの選手もいますが、かと言って他のチームに比べてすごく華があるかというと、そうでもない。では、どういったところがスピアーズの特徴かと言うと、まず 「親近感」、そしてチームの 「一体感」 だったんです。そういったものは発信するだけではなかなかアピールすることが難しく、ファンとのコミュニケーションを通してチームの雰囲気をわかってもらう、チームの思想を理解してもらうということを行った上で、チームの「親近感」や「一体感」を訴求しました。

共闘する「オレンジアーミー」

 
檜山: ファンのことを「オレンジアーミー」と呼ぶようになったきっかけを教えてください。また、熱心なアーミーにチームのアンバサダーになってもらうようになったという話について教えてください。
 
岩爪さん:オレンジアーミーは一緒に戦う仲間という思いがあり名付けた愛称です。トップリーグ最後のシーズンとなった2021シーズン、私たちがターゲットにしたのが、ラグビーのコアファン層です。引き続きコロナの影響によって、スタジアムでの現地観戦ができないだろうという状況で、2019年のワールドカップでファンになった方は、コロナの感染リスクを負ってまで観戦に来られるのか(という課題)、また、チケットを取りずらいという状況でもありました。
逆に、そこまでしてラグビーを観たいファンの方であれば、きっと(継続して)観戦に来られるはずだという予測から、そのファンの方々に対して訴求することを考えました。私たちの分析では、ラグビーファンというのは、どこかの(特定の)チームのファンというよりも、ラグビー自体のファンが多く、これはサッカーや野球と違うところだと思います。
 
檜山:確かに、ラグビーファンはサッカー、野球とは、また違う特徴がありますよね。
 
岩爪さん:そしてラグビー自体の価値を考えたときに、一つは 「ノーサイド」。そして、試合の迫力や一体感、あとは品格であったり、トップレベルの外国人選手のプレーなどがあると思います。これらの価値をスピアーズに取り込んで、コアファン層に対しての施策を行いました。

ラグビーは試合が終わったら「ノーサイド」。敵味方はありません。

檜山:具体的にはどのような取り組みをされたのでしょうか。
 
岩爪さん:コアファン層に対する取組みとしては、まずはノーサイドを発信していきました。具体的には、トップリーグの最後の2021シーズンから 「#オレンジでいこう作戦」 というプロモーション施策を行いました。
試合に来場していただいた両チームのファンに対して、オレンジ色のベースボールシャツを配るという内容です。このプロモーション施策をレギュラーシーズン7試合で実施しました。
両チームのファンに配布したのは、ラグビーにはノーサイドの精神がありますので、両チームのファンがオレンジのシャツを着て、明るい気持ちになって帰ってほしかったからです。スピアーズのオレンジ色は、「明るい、楽し
い、元気」を意味するイメージカラーでもあるので、コロナだけど明るい気持ちになって、お互いノーサイドになりましょう、という施策でした。
この施策は、ラグビーのコアファン層をスピアーズに取り込むということにつながったのではないかと思います。
 
檜山:両チームのファンにオレンジのシャツを配るというのは、他のスポーツではあまり無いですよね。
 
岩爪さん:そうですよね、あまり無いですよね。この施策がなるべく拡散されるように、ハッシュタグで色々な取り組みをしました。例えば、ファンの方が 「#オレンジでいこう」 でSNSなどに投稿することで、抽選でプレゼントを配布するようなこともやりました。
ちょうどこの頃はアニメの鬼滅の刃が流行っていたこともあり、このオレンジのベースボールシャツを鬼滅の刃になぞらえて、隊服と呼ぶことにしました。オレンジアーミーの隊員(ファン)が隊服(オレンジのベースボールシャツ)を着て、ツイッター、インスタグラムに投稿すると、ベースボールシャツを着用した選手を撮影した写真集や選手サイン入りのベースボールシャツが当たる、プレゼントキャンペーンを展開しました。
ファンの皆さんにプレゼントをただ配布するだけではなく、チームの応援プロモーションを拡散してもらえるような仕組みづくりをしました。この取り組みをシーズンの長い期間ずっと行うことで、今までは見るだけのファンだった方が、自分からツイートをしてくれるようになり、ハッシュタグも付けて発信をしてくれるようになったという嬉しい変化がありました。


後編では、ファンとのコミュニケーションを図るために行ってきた、具体的な施策について掲載します。

後編はこちら▼


クボタスピアーズ公式サイト
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