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チームと共闘するファン 「オレンジアーミー」 を広める仕掛け人、チーム広報のビハインド・ザ・シーン(後編)【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ様/クライアントインタビュー記事】

こんにちは。Stats Performの檜山です。
今回は、ジャパンラグビーリーグワン所属のクボタスピアーズ船橋・東京ベイのクラブハウスに伺い、広報担当の岩爪さん、副務の武智さんにインタビューさせていただきました。
当社が提供する、『PressBoxグラフィックス』の活用法だけでなく、高いエンゲージメントを生み出すSNSでのハッシュタグ戦略、毎回60人以上を集めるオンラインでのファンミーティングなど、「オレンジアーミー」と呼ばれるファンを楽しませる施策を打ち続けるお二人に、活動の裏側についてたっぷりとお話していただきました。
 
前編はこちら▼ 

80人のファンが参加の定例会議が生んだ予想外な効果

 
檜山:ファンとの定期ミーティングを開催されているそうですが、そこではどのようなことを話すのでしょうか。
 
岩爪さん:まず、このミーティングはオレンジアーミー定例会議といって、選手、コーチなどのスタッフは誰一人参加せず、運営のスタッフだけが参加するものになります。チームからは、広報、グッズ、ファンクラブ、試合運営、それぞれの担当者が参加します。
各担当から、「こんなことをやってきました」とか「こんなことをやっていきます」といった内容をファンに共有し、ファンの皆さんに意見を求めます。
 
檜山:毎回何名ほどファンの方が参加されるのでしょうか。このミーティングで重視されていることは何ですか。
 
岩爪さん:現在はZoomでのオンライン開催ですが、毎回60~70人、多いときで80人ほどのファンにご参加いただいています。ファンの皆さんからいただく意見をすべて反映させることは難しいのですが、しっかりと今後の参考としていますし、ミーティングの内容は議事録としてメールマガジンで全ファンクラブ会員に共有しています。何より一番の目的は、ファンとしっかりコミュニケーションを取るということだと考えています。
 
ここで私から一つクイズを出していいですか?(笑)。このオレンジアーミー定例会議で予想していなかったポジティブな効果がありました。それは次のうち、どれでしょう?
①ファン同士のつながりができた、②クレームが減った、③伝道師が現れた。

岩爪さんから突然のクイズ。

檜山:いきなりクイズですか(笑)。 ええと・・3番ですか?
 
岩爪さん:答えは全部なんです(笑)。
 
檜山:ええ!オンライン開催だとファン同士がつながるは難しくないのでしょうか・・・。
 
岩爪さん:Zoom開催なので、ファン同士のつながりができないと思うじゃないですか。それがどういう形でできるかというと、まず会議中Zoomチャットでのやり取りの件数は700件ほどになります。その中でファンの方がお互い同じ議題で同じ空間を共有して話し合うので、そこで一体感が生まれるんですよ。試合をしていないのにです。
そして、会議の後にSNSを通じて「今日はこんな会議でしたね」みたいな会話が行われ、横のつながりが生まれて、今度は試合会場でリアルなつながりができるという流れです。これはチームとしても思いがけない効果でした。
 
檜山:なるほど。狙ってできることでもなさそうですし、確かに思いがけないことですね。
 
岩爪さん:2つ目のクレームが減ったというのは、実際に顔を見てコミュニケーションを取ることで、不満に感じていたことの誤解が解けたとか、理解することができたということです。これは、普通の人間関係でもよくあることだと思います。
 
檜山:最後の3つ目の伝道師というのは、どういうことでしょうか。
 
岩爪さん:これは難しいですよね(笑)。 例えば、今年は6月1日に、シーズン後の挨拶やファンの応援への感謝、退団選手の挨拶などを行うイベントを開催したのですが、開催日が平日だったんです。平日開催の理由については、事前にオレンジアーミー定例会議で理由を説明していました。日本代表選手の合宿スケジュールや外国人選手の帰国スケジュールなどある中で、ファンの皆さんがなるべく多くの選手に会うことができる、6月1日の平日開催になるという説明でした。
ところが、日程リリース後に、オレンジアーミー定例会議に参加していないファンの方から、なんで平日に開催するんだという不満の声が出ました。それに対して、会議に参加した方、または議事録を読んだ方が、SNS上で平日開催になった理由を説明してくれました。本来ならチームがそういう説明をしなければいけないところですが、こういったチームの意志に共感してくれたファンの方々が伝道師のように説明してくれたんです。
 
檜山:オレンジアーミーの皆さんが広報活動をしてくれている感じですね。
 
岩爪さん:そうです。まさにそのような感じです。

ファンと選手の絆を深めたSNSでの施策

 檜山:ファンとのコミュニケーションにおいて、SNSやウェブサイトなどデジタルの面で取り組まれたことを教えていただけないでしょうか。
 
岩爪さん:先ほどのハッシュタグを付けた拡散キャンペーン(前編を参照)など、SNSはかなり活用しています。現在チームのツイッター、インスタグラムのフォロワーはそれぞれ約1.9万人います。他のスポーツチーム、ラグビーチームと比べて決して多いわけではないですが、ファン、フォロワーの貢献度が高いのが特徴です。
具体的には、ハッシュタグを付けて投稿してくれるファンの数が他チームに比べてダントツに多いというデータがあります。特にシーズン中は投稿数が増えるのですが、ファンの皆さんが何かしらチームに貢献したいという思いの現れだと私たちは捉えています。我々チームとしても、ハッシュタグを付けて拡散してもらうようなキャンペーンを行ったり、チームに関する記事については、なるべく情緒的な内容でチームストーリーやインサイドストーリーを発信するなど、共感を生めるよう心がけています。こういった活動によりある面白いことが起きたんです。
 
檜山:どんなことが起きたんでしょうか。
 
岩爪さん:2021年5月16日のトップリーグ2021プレーオフトーナメントのサントリーサンゴリアス戦(現 東京サントリーサンゴリアス)は花園での試合で、この試合はコロナ感染の影響で、シーズンで初めての無観客試合でした。そこで、チームからSNSやSportsnaviでのコラムを投稿を通して、この試合にかける思いを発信しました。
そうしたら、ファンの一部の方が音頭を取ってくれて、オレンジの隊服(ベースボールシャツ、前編参照)を着て応援メッセージを送ろうといった発信をしてくれました。そこからツイッターの拡散が広がり、600件超のツイートでツイッターのトレンド入りまでしました。残念ながらその試合には負けてしまいましたが、試合後には、ファンの投稿に選手がツイートで感謝の気持ちを伝えるなど、ファン、選手が同じ思いを共有できたことは、チームの広報としては一つの成功だったと感じています。

データ連動グラフィックで、コンテンツが豊富に

 檜山:SNSでのファンエンゲージメントのために、Stats PerformのPressBox グラフィックスというグラフィック作成ツールを活用していただいていますが、導入いただいた理由を教えていただけないでしょうか。
 
岩爪さん:まず、グラフィックをもっと充実させたいということがありました。また、これはリーグワンになってからの変化と言えるかもしれませんが、パートナー企業様の露出をもっと増やしたいということもありました。あとは、チームのことも好きになってくれる人を増やしたいけど、ラグビーのことも好きになってくれる人も増やしたい。そうなったときに、チームや選手のスタッツというものが重要になってきます。
 
檜山:特にラグビーのコアファンに対してでしょうか。
 
岩爪さん:そうですね。さらに、グラフィックのデザイン、ビジュアルが非常に良いので、是非使用してみたいとなったのがきっかけです。
 
檜山:Pressboxグラフィックスを実際に導入いただいて、試合前、試合中、試合後それぞれのタイミングで、どのように活用していただいたのでしょうか。
 
武智さん:主に試合前はチケット販売の告知、試合当日のキックオフ時間の情報を、グラフィックで分かりやすく発信したりしています。試合前に一番使っていたのは、メンバー発表のグラフィックで、ラグビーの場合は試合2日前の決まった時間にメンバーが発表されるので、ファンの皆さんもSNSで拡散しやすいということがあると思います。ファーストジャージ、セカンドジャージの場合でメンバー発表のグラフィックも変えることで、「じゃあ、次はファーストジャージかな」とか「次はセカンドジャージかな」といった、ファンの間での話題作りにもなり、楽しんでいただけたかなと思います。

シーズン中、武智さんにはPressBoxグラフィックスをフル活用していただきました。

檜山:試合中のグラフィック活用はどのような感じだったでしょうか。
 
武智さん:試合中は、インスタグラムのストーリーで試合の速報、例えば、トライした選手のアニメーショングラフィックを流したりしていました。他には、ハーフタイムや試合結果の投稿も行っていました。
試合中は別の業務を兼務しながらグラフィックのこともやっているのですが、Stats PerformのOptaデータがグラフィックにリアルタイムで反映されるので、とても便利でした。
 
岩爪さん:Optaデータも細かい色々なデータがあるので、例えば、「ハーフタイムにペナルティが多いから後半は減らしたい」といった感じで、データから見る試合状況によって、グラフィック上のスタッツを並び替えたり、注目するデータに応じたコメント付けて発信するような活用もできたので、すごく便利でした。
 
武智さん:試合後に関しては、選手から試合直後にコメントをもらって発信したのですが、チームには外国人選手もいて、海外にもファンがいるので、日本語と英語バージョンでグラフィックデザインを使い分けて発信をすることもできたのは良かったです。

投稿によって、選手とファンの意識に変化が

 
檜山:こういったグラフィックを発信することで、選手からも何か反応などあったりしたのでしょうか。
 
武智さん:トライの時に選手がアニメーションで動くようなグラフィックは今までなかったので、選手から「何これ?どうやって作ってるの?」といった、驚きの反応はありました。
コメントや記者会見なども、ファンに向けてSNSで発信していることを選手に伝えると、選手自身もSNSで発信されていることをよく考えてコメントしたりとか、特別な想いなどをしっかりと考えて連絡してくれたりする選手が多かったです。
選手たちは、自分たちからも伝えたいという協力的な姿勢でしたし、それがグラフィックという形で発信されて、本人たちにとっても、どういう意図でやっているかが分かりやすかったと思います。中には、何のために発信するのかをよく考えながら、こだわりを持ってやっている選手もいるので、コメントの言葉や表現を選ぶためにもっとよく考えたいから、もう少し時間が欲しいと言われるようなケースもありました。

選手が協力的なのも、スピアーズの魅力です。

武智さん:あとは、その時々で取り上げられない選手を取り上げることができるのも、すごく良かったと思います。記者会見とかでは、活躍した選手や知名度のある選手は取り上げられやすいですけど、例えば初めて試合に出た選手からコメントをもらって発信することができるなど、こちらからも「この選手の、この頑張りを伝えたい」という場合に、PressBoxグラフィックスを使って伝えることができたので、新たな「推しメン」みたいなものを発信することができました。
 
岩爪さん:選手自身もファンからのコメント欄を見て嬉しいでしょうし、選手自身もモチベーションにもなるので、SNSの発信が持つ力は大きいですよね。
 
檜山:ファンの方々からのグラフィックに対する反応はあったりしたのでしょうか。
 
武智さん:はい、ありました。これまでもチームが投稿したものをファンの方がスクリーンショットを撮って、投稿し直してくれたりすることもあったんですけど、PressBoxグラフィックスを導入してからは、それがより多く見
受けられました。
試合中のインスタグラムのストーリーにアップしている画像は縦長なのですが、自分の推しの選手の画像をスクリーンショットして、携帯の壁紙や待ち受け画面にしてくれているファンの方のツイッターの投稿を見たこともあり、こういう使い方もあるんだと驚きました。試合中はファンの方からのインスタストーリーでのメンションが多いんですけど、そこでもスクリーンショットを撮って、そこに表示されているスタッツを見て「〇〇選手がトライした!」とか「負けてられない。頑張ろう」 といったコメントをしてくれるので、ファンと一緒に戦っているという要素の一つになったと思っています。
 
檜山:PressBoxグラフィックスの運用面で武智さんが感じたことは何かありますか?
 
武智さん:作業量が圧倒的に減りました。最初はメンバー表作成とかを手作業で行っていて、名前が合ってるか確認する時間もかかり大変でした。Photoshopやパワーポイントなどを使って、すべて手作業でグラフィックを作成していたので、工数もかかってました。
PressBoxグラフィックスが入ってから、の課題を解決してくれました。ボタン一つでデータ連動してくれて、例えば選手の名前をクリックすると、その選手の写真がパッとグラフィックに表示されるとか、写真のサイズ調整も画面上で編集できるので、圧倒的に作業効率が上がりました。グラフィックの最後の確認と微調整をするだけで投稿することができるので、本当にスピードが上がりました。その分、他の業務に時間を使えるようになったので、ありがとうございますという感じです(笑)。

檜山:運用面でもPressBoxグラフィックスの機能を大いに活用していただいて、私たちも大変ありがたいです。
 
武智さん:色々な種類の写真もPressBoxグラフィクスのプラットフォームに事前に登録しておけば、グラフィックデザインや用途によって簡単に取り出して選ぶことができるので、とても便利でしたし、私も楽しんで使っていました。
 
檜山:楽しかったという感想は、私たちも一番嬉しいお言葉の一つです(笑)。
 
岩爪さん: うちはオレンジというカラーを出していきたいので、PressBoxグラフィックスを使うと、シーズン中にデザイン統一感が出せるのは本当にいいですよね。

「ラグビーに触れる機会があれば、好きになる」

 
檜山:ポジティブなご感想、ありがとうございます。それでは最後の質問になるのですが、来シーズンに向けてファンサービスに関して進めていることや検討していることをお聞かせいただけいただけることがあれば、よろしくお願いします。
 
岩爪さん:課題としては、ラグビーの認知がまだまだ足りないというところですね。それによって来場者だったりチームのフォロワーがまだ少ない。スピアーズ認知0の人を1にしていきたいというのがあります。
逆に明るい部分でいうと、今のファンの皆さんですね。今のファンの皆さんがチームを認知してくれて、ファンになって応援してくれている、愛着を持ってくれている。そのきっかけとなるのは、ラグビーが好きというのもあるのですが、(スピアーズの)一体感や親近感というところに共感してくれている。これはラグビーファンじゃなくても誰もが持っている普遍的な価値だと思いますので、そういった価値をうまく発信していくことで、スピアーズのファンが増え、そしてラグビーファンにもなってくれるんじゃないかと考えています。
例えば、インスタライブでのオンラインイベントなんかもやっていきたいですし、他にもファンの方々に楽しんでいただけるようなことを準備していきます。来季もまた楽しみです。
 
武智さん:私はラグビーに関わるようになったのが去年が初めてだったんですけど、私自身も日々ラグビーにはまっています。ラグビーに触れる機会があれば、ラグビーを好きになる方も多いと思っています。そのきっかけを作るために、ラグビーと一見関係のないようなものとコラボしたりして、ラグビーを知る機会、触れる機会というのを作っていきたいなと思います。ラグビーそのものに親近感をもってくれる人が増えれば、スピアーズにも親近感を持ってもらい、チームのファンになってくれると考えています。
 
檜山:スピアーズさんの活動によりラグビーの認知が広がり、来季もオレンジアーミーの共闘する仲間が増えることを願っています。岩爪さん、武智さん、本日はお忙しい中ありがとうございました。

素晴らしい天然芝の練習場でした。

クボタスピアーズ公式サイト
PressBox グラフィックス