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日本の歴史的勝利をデータで分析 xGが3.0での敗戦は、ドイツがW杯史上初

この記事は、自社メディア『The Analyst』の記事を元に翻訳して編集したものです。
元記事はこちら:Germany 1-2 Japan: New World Cup, Same Opening Result for Four-Time Winners


日本対ドイツの試合は、「組織力」と「インテンシティ」という2つのキーワードに尽きる。この試合は、ドイツが素晴らしいプレッシャーを見せ、気持ちよく勝つと予想されていた。しかし、4度の世界チャンピオンにとっては、これ以上ないほど辛い試合になった。

前半で両チームの命運を分けたのは、ほんの一瞬の混乱だった。ドイツの猛攻撃を食らった日本は、ゴールキーパーの権田修一が孤立し、不要なタックルでダビド・ラウムを倒した。このワールドカップが始まって10試合で、早くも6つ目のPKとなった。

このPKをイルカイ・ギュンドアンが決めたことで、ロベルト・レバンドフスキが2022年カタール大会でPKを外した唯一の選手となり、ドイツは、ワールドカップにおける、スコアレスドローで終わらなかった試合の連続記録を51に伸ばした(スコアレスドローは、1986年の準々決勝のメキシコ戦が最後。この試合はドイツがPK戦の末に勝利した)。

カリファ国際スタジアムで行われたこの試合、前半のゴール期待値(xG)はフランス対オーストラリア(2.16 - 0.52)に次いで、今大会2番目に大きな差(ドイツ1.68 - 0.11 日本)で、ドイツは14本のシュートを放っていた(xGが0.79のPKも含む)。前半の日本のボール支配率は19%に留まり、イングランド戦でのイラン(18%)に次いで、今大会で2番目に低い数値となった。一方で、喫したビッグチャンスはPK以外では、1回だけだった。

縦軸は「相手に与えた驚異」を数値化したもの(上方向がドイツ、下方向が日本)
横軸は試合時間

ドイツは圧倒的にボールを支配していた(ボール支配率は76%)ので、究極のスイーパーキーパーで主将のマヌエル・ノイアーが、その多くに絡んでいたのも驚きではない。4度目、そしておそらく、これが最後のワールドカップとなる36歳のノイアーは、51本のパスを通した。これは1966年以降、ワールドカップでゴールキーパーが1試合に記録した最多パス数となった。今大会これまでの最多は、メキシコのギジェルモ・オチョアの29本だった。

ピッチの反対側では、権田が忙しくしていた。鋭い反射神経で合計8本のシュートを止め、日本の逆転への望みをつなぎ止めた。一方のノイアーも、伊東純也がゴール前からで放ったシュートを見事に阻止した。この試合のベストセーブだったと言えるだろう(そして、今大会最高にもなり得る)。しかし、ノイアーができるのはここまでだった。南野拓実の最初のシュートのこぼれ球を、堂安律(ドイツのクラブでプレーする日本代表選手8人中の1人)が押し込んで同点に追いついたからだ。

ノイアーは、日本の逆転弾を防ぐことはできただろうか?おそらく防ぐべきだったと言える。しかし、日本にワールドカップで9試合ぶり(2018年の初戦コロンビア戦、2-1での勝利以来)であり、間違いなく史上最も名誉ある勝利をもたらした、浅野拓磨のニアサイドを撃ち抜くシュートへの賛辞を忘れてはいけない。このゴールには、リベンジという意味も込められていたように感じる。3ヶ月前、浅野の所属するアウクスブルクは、ノイアーの所属するバイエルン・ミュンヘンに、7-0で敗戦する屈辱を味わっていたからだ。

日本は、たった26.1%のボール支配率でこの歴史的勝利を手にしたということも特筆すべきだろう(ボール支配率が31%だったサウジアラビアが、全く同じスコアで、1点ビハインドからアルゼンチンを下した約24時間後のことだった)。1966年以降のワールドカップで、これより低いボール支配率を記録したのは、4年前のロシア大会で、韓国がドイツ相手に記録した26.1%のみ。このとき前回大会覇者だったドイツは、この試合に0-2で敗れ、大会をグループステージで去った。

結果、今回の日本対ドイツは、1966年以降のワールドカップで初めて、3以上のxGを記録したチームが敗れた試合となった。

ワールドカップ2022 グループE第1戦
日本対ドイツのスタッツ

2.5以上のxGを記録したチームが試合に敗れるのは、これがワールドカップ史上4度目だった。なんと、そのうちの3回がドイツだ。

今大会の「死の組」は、おもしろくなりそうだ。


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