Евровидение 2020/ユーロビジョン・ソング・コンテスト 2020

今年もユーロビジョンの時期がやってきたらしい。ユーロビジョンといえばやはり、2020年を思い出してしまう。

Eurovision Song Contest 公式YouTubeチャンネルで公開されているビデオのうちには、今日までに2.3億回の再生回数を集めた歌がある。再生回数の比較では、他より群をぬくダントツの数字。Little Big というグループの『Uno』だ。

2020年と言えば、コロナウイルスの防疫対策としてあらゆる国際イベントが中止や延期となっていた頃。ユーロビジョンに出場予定だった各国代表のオフィシャルミュージックビデオはYouTubeチャンネルで公開されたまま、コンテスト自体は開催されなかった。
そんな年に、サンクトペテルブルグを拠点に活動するLittle Bigがロシア代表として選出されていた。


初めて聴いた後は、なんとも言えない妙な気持ちになると思う。『1、2、3・・・と数字を数えるだけで歌になるんだ?』という驚きの次に、『結局いったいなんだったんだ?』と気になり、思わずもう一度再生してしまう。いわゆるギャップ萌えが満載だ。
・水色のスーツを着たダンサーの意外性と愛らしさ
・音がなんとなく懐かしいようで新しい
・ダンスの単純さとじわじわくる面白さ
・衣装やメイクの70年代風要素とタトューを透けさせる現代らしさ
・訴えかけるような鋭い目つきと遊び心たっぷりのパフォーマンス
・ロシア(冷たい怖い)とイタリア(陽気で明るい)→偏見を見事に昇華


YouTubeで『Uno、Little Big』と検索すると、さまざまな国の人々が公開したリアクションビデオやパロディービデオも見つけることができる。感染者の重症化のニュースやロックダウンなどで社会全体に閉塞感や不安感があったなかで、『Uno』のリズムにのり歌って踊っておうち時間を明るく過ごしていた人が多くいたようだ。

Little Big という集団は、単に一つのバンドチームではないようだ。おそらく『音楽プロデューサーИлья Прусикин、映像プロデューサーАлина Пязокとその仲間たち』みたいな感じなのだと思う。作曲者、ボーカル、映像製作者、エンターテイナーが、一つの家族のようにチームをつくって仕事をしていて、ロシア政府による対コロナ政策の一環で厳しい外出制限が行われていた頃にはイリヤのダーチャにメンバーが集結した上で隔離生活を送っていたようだ。

すごく立派なダーチャのインテリアにも注目がいってしまうが、『Карантиновидение 2020』は、карантин(隔離・検疫)とевровидениеから作った造語で、彼らが企画した一般の人の自由参加型による在宅音楽コンテスト。ほぼ勝者なのに大会が不開催という残念な思いからの気持ちの切り替えが大人らしい。視聴者から集まった音楽と映像をゆるく楽しく審査するビデオのなかには、映像プロ・アリーナも登場する。彼女がLittle Big Productionとして携わった『Розовое вино』(Элджей & Feduk) という曲のMVも、億超えの再生回数を記録しており、彼女は今のロシアの旬な映像クリエーターの一人なのだと思う。さて、カランチーナビーデニエ・コンテストのファイナルはこちら。https://youtu.be/HDgchLu3x2w

ちなみに『Uno』で踊っているダンサー Дмитрий Красилов は甘いマスクと驚くほど柔軟なダンスで、間違いなく作品の魅力を引き立てる重要なキャラクターとなった。彼は本来のグループメンバーではないが、後に公開された『TACOS』のMVでも再出演している。

奇抜で、過激で、大胆な表現方法で作品を世に出すLittle Big。全力でエンターテインメントをつくりあげる姿、チームが家族のように互いを共有しながら突き進んでいく様。彼らの作品に衝撃を受け自然と惹きつけられた2020年はとても明るかったな、と思い出すのだった。

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