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2016 CWC 決勝で


#サッカーの忘れられないシーン

2016年12月18日 クラブワールドカップ決勝
われらがアントラーズの11人が日産スタジアムのピッチに立っていた。
相手は白い巨人。レアルマドリー。
試合が始まる前から、そわそわしたような、心配なような、でも、誇らしいなんとも言えない気持ちで私はその会場にいた。
チケットは完売。
鹿島が勝ち進むにつれて、チケットの価格は吊り上げられ、決勝戦はとんでもない金額になっていた。
元々CWCのチケットは高い。
普通に買っても、二階のメイン側で1枚48000円くらいしたような記憶。
そのチケットで3位決定戦と決勝と2試合見られるのだが、そう考えても高いと思う。
ただ、私はレアルのルカ・モドリッチのファンなのだ。
スペインに行かなくてもモドリッチを生で見られるなら安いもんだと思ってそのチケットを購入していた。
CWCが日本で開催されるのはその年が最後。次に日本でモドリッチを見られる機会なんてないと思った。
レアルが決勝に進むのは想定済みだったが、まさか、モドリッチと戦うのがうちのチームだとは思っていなかった。

試合開始9分に鹿島は失点する。
立ち上がり、鹿島は全然戦えていないという印象ではなかった。
でも、9分で失点。
2004年のバルサ戦が頭をよぎった。
この親善試合、0-5で敗れている。
何も出来なかった。0-5以上の点差が開いてもおかしくないような。
温情で0-5で済ませてもらったような試合だった。
試合開始前に心配になったのはこの試合を思い出したからだ。

失点した直後、一瞬選手たちは弱気になったような気がした。
(あるいは、弱気になったのは私なのかもしれない。)
まあ、そうですよねえ~っていう空気が漂った、その時。
小笠原満男はミドルシュートを打った。
ベンゼマのゴールを告げるアナウンスがスタジアムに響く中、センターサークルあたりから走りこんできた小笠原が放ったそのシュートはまっすぐにゴールに向かい、バーのほんの少し上を通り過ぎた。
ゴールにならなかったが、はっとするシュートだった。
スタジアム中にどよめきと歓声が沸き起こった。

小笠原は、ピッチ内の監督と言われていた。
そのシュートには「下を向くな。攻めるぞ」というチームへのメッセージが込められていたように思う。
なんというか・・・プレーを通して小笠原から語り掛けられたという感じで、私も攻めるんだな、と唐突に理解した。応援しなければ。
はらはらした気持ちは一瞬で霞が晴れたようになくなっていた。
心配なことなんて何もない。堂々と戦えばいい。

その後チームは前半で追いつき、後半では一時リードする場面を作り出し、日本のサッカーファンのみならず世界のサッカーファンを仰天させた。
私はあの小笠原のシュートが、その後のチームの奮闘につながったんじゃないかなと思っている。
ピッチに小笠原がいるのといないのとでは全然違うと選手たちは言う。
口数は少ないが、彼はプレーで語り、背中で語る。
それを私が体感したシーンだった。

今でも思い出すとなんとなく切なく、泣きそうになる試合。
準優勝という、苦い結果だったからかもしれない。
ただ結果どうこうではなく、何か・・・言葉に出来ない特別な感情がわいてくる。
鹿島の優勝を幾度となく見てきた。
もちろん優勝は素晴らしい。
でも、不思議なことに、何度も繰り返し見たくなる試合は優勝する試合ではなかったりする。
この試合も何度も見たいと思う。
そして何度見ても、おなじ場面でハッとして、じーんとするのだ。
勝ち試合でもなく、ゴールシーンでもないのに。
練習を見に行っても話しかけるなオーラ全開。笑
勇気を出して話しかけても無視される。
小笠原が通るとファンはシーンとする。
そんな彼からの突然の語り掛けに、胸がじーんとするのだ。


















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